お正月と2人でお出かけ4
RAINBOWになって久しぶりに電車に乗った。神永さんに送ってもらおうと思ったんだけど神永さんもせっかくの休み。遊びに行くのに付きあわせるなんて悪い。
電車は以外とすいていた。私たちは極力目立たない様ドアの近くに立ち、ずっと目的地まで最低限しか会話せず外を見ていた。
でもその間、ずっと隣にいる凜くんから携帯に連絡がきてて、横にいるのにって目を合わせては笑ってた。
「つーいたー!!」
「急にダッシュはやめて……!!!」
駅をおりた凜くんは急に「ほら海!いこ!!」と私の手を取り走りだした。
冬の海は……寒すぎる!!!なのに凜くんは誰もいないことをいいことに変装用メガネを取り波打ち際ではしゃいでる。
私は先ほど走ったせいで少し息切れしてしまいゆっくりとそこに近寄る。
「凜くん!寒くないの??」
「え?別に!!それに見てよ花!誰もいない、オレたちの海みたい!!」
すっごく楽しそうな凜くんをみて笑ってしまう。“オレ達の海”なんてまたアホなこと言って!
って、ほんと寒い。私はもらったカイロを開けて握りしめる。髪も下ろしたまま来ちゃったから風でつめたくなっている。早くあったまって、カイロ!!
「花!!」
「なーに?」
私の前にたって見下ろしてくる。あ。凜くん、鼻赤い。
「耳真っ赤!」
ほら。と私の両耳を手で覆ってくれる。あったかい。
「凜くんは鼻真っ赤だよ!!」
「え、まじ?!」
「まじ!って、耳隠されてると声聞こえにくいんだけど??」
「そう?オレは花の声聞こえてるからいーの!」
「なにそれ」
「つうか、聞こえてんじゃん、ちゃんと!!」
「あ、アホな凜くんでも気づいた。蓮さんたちもびっくりだね!」
「……花」
ぱっと耳から両手が離れまた冷たい風が耳を冷やす。
「なに?耳、寒……」
「好き」
え?急に……
「花、好き」
先ほどまで聞こえていた波の音が聞こえない。凜くんの言葉だけが耳に残る。
「蓮くんの事、好きなの?花は。」
口元は小さく笑っているようにもみえるけど、ぎこちない笑顔なのがわかる。
「わ、たし、この前蓮さんは好きだけどメンバーとしてって、言ったじゃん」
「うん。聞いた。うん……それは聞いたよ。オレね」
凜くんに抱きしめられ、頭には手が回されている。
オレね、の続きはまだ何も言わないけど、何度も頭にある手が私の長い髪を撫でる。
「凜太郎くん?」
「……蓮くんに花とられんの嫌だなあ!!」
上から降ってきたのは先ほどとちがって明るい声。けど、抱きしめられてるのは変わらない。髪を撫でる手も変わらない。
「……とられるって、蓮さん姫奈いるじゃん。」
「蓮くんなら、もし花の事好きになったらすぐにでも別れるくらいする。……蓮くんが花好きだったらいやだなあ!」
どうしよう、なんて私の上でぶつぶつと考え込む凜くん。
私は蓮さんの言葉を思い出す。
……私、もっと早く聞いてたら蓮さんのあの言葉で天にも昇るような気持ちになって姫奈の事傷つけても、気にしてるなら私をそのまま選んで、と言ってたと思う。
姫奈の泣きそうな声も聞いた。
凜くんのまっすぐな気持ちも嬉しい。ほんとに。
うん、嬉しい。本当にうれしいの。
蓮さん、私、蓮さんに気になるって言ってもらえて嬉しかった。でも、凜くんの気持ちの方が今は嬉しいんです。
「花?どうかした??」
「あ、うん。ねえ凜くん!!おなかすいた!!」
「え?!ごはん食ってきたじゃん?!」
凜くんは私を抱きしめる手を緩め軽く眉を寄せる。
「じつはですね。ちょっと、動くよ」
さらに緩まった凜くんの腕の隙間からごそごそとポケットを探ると天さんにもらった金平糖を取り出す。
「じゃーん!金平糖!天さんにもらったんだけど一緒に食べよ?」
「おお、初めて食べるこれ!!って、天さんがくれたの?」
「うん」
冬の海を見ながら砂浜に座る。凜くんは、“花寒いでしょ”と私の後ろに座り、肩に顎を乗せ抱きしめてくれている。
ドラマのような座り方。凜くんの背中はあったかい。
「花、口入れて。意外とうまい、こんぺーとー!」
肩の方を向けば口を開けてる凛くん。ていうか、顔近い。
「顔近いんですが?」
「嫌?」
……こういう事言うときの凜太郎くんはいつもの犬のような時とは違い、アイドルなんだなって改めて思うくらいかっこいい。
「嫌ではないです」
「じゃあ、近くてもいいよね!」
「調子に乗らないでください」
「だって調子にのるでしょ?オレ好きな子に嫌じゃないって言われてんだもん!いーじゃん!」
凜くんの口に金平糖を突っ込む。
もう、ほんと素直な人。
ああ、あったかい。寒いはずなのに。元旦からこんなに楽しくていいのかな?罰、当たらないかな。
「今年はオレらの夢、叶うかな?」
「武道館?」
「うん」
2人で海を見つめる。
「叶うといいな。武道館。みんなであそこでライブしたい」
「うん。私の夢にもなったからほんとにか叶えたいね」
「うん。花。」
「ん?」
お腹に回された腕に力がこもる。
「オレ、花の事好きだけど、今すぐ付き合いたいってわけじゃないんだ。」
「うん」
「武道館ライブがかなったら、ちゃんと付き合ってって言うから。それまでにオレの事好きになって」
肩に凜くんが顔を埋める。
凜くんって、こういうとこはなんかちゃんと考えてるんだな、と思う。
「うん」
「でも花の事はこれからも好きってちゃんと言葉にするから!!それは許してね!」
「はいはい!!では、初詣にでも行きますか??」
「あ、そーだ、行かなきゃ!!みんなにお土産も買お!!」
背中の温もりがなくなり、私の前に手を出す。私は戸惑うことなくその手を掴んで立ち上がる。
「じゃ、変装しなきゃ!」
「おう!!いこ、花」
「うん!」




