お正月と2人でお出かけ3
「はーな!花!起きて!」
「ん……」
うるさい、夜結局寝られなかったのに、うるさいなあ。
「花!……起きなきゃ、キスするよ」
ばちっと目を開ける。目の前にはドアップの凜太郎くんの顔。
「起きちゃった」
「起きるわ!!近い!」
布団に凜太郎くんが座りなおす。
「寝起き、不細工なんでやめて!!」
「ま、口開いてたもんね」
「マジで朝この部屋出入り禁止にするよ?」
「ごめんなさい」
大袈裟に布団に頭をつける。
ほんと、女の子の寝起きとかあんまりまじまじみるもんじゃない!!そりゃ女優とかなら可愛い……女優……姫奈!!
「凜くん、蓮さんは?!」
「え?蓮くんならたぶんまだ寝てる。リビングにいたのはオレとかなたくんだけだもん」
「そう……」
昨日のは夢かな、なんて思ったけどそんなわけないもんね。まだ寝てるのか……時計を見れば9時。そりゃ起きない人は起きないだろう。
「……蓮くんの事考えてる?」
頭を上げた凜太郎くんが首を傾げる。
「え?あ、うん。」
「……そう。」
ベットから降りるとそのままドアへと向かう。
え、なにかあってきたんじゃないの?!ちょっと!!……急にどこかに行かないで!!
思わず背中を追い服を掴む。
「何?どったの?花」
振り返った顔はいつもの凜太郎くんの笑顔。
「……なんだかわかんないけど、いつの間にか凛太郎くん追ってた。」
「何かわいい事言ってんの?それに、凜くん、でしょ。もう」
ぎゅっと抱きしめられる。凜太郎く……凜くん大きいから私すっぽりと収まる。
「おはよ、花」
「おはよう、凜くん……って、いつまでこのままいる気?」
「え、いつまでにしようか!!」
ぎゅっと腕に力がこもってるから身動き取れなくて顔上げられないけど頭の上で凜くんの声はなんだか楽しそう。
まあ……なんだかんだ、私も嫌じゃないんだな、これが!!
「今日、デートしようか!」
「今日?」
腕の力が緩みやっと顔を相手の方に上げられた。今日って元旦ですが?
「多分どこもお店休みじゃない??」
「いーの!オレね、花と海行きたいから!!」
「海?!このめちゃくちゃ寒い中?!」
アホ???あ、アホだった。
「なんで海?」
「ん?この寒さなら人いないじゃん??」
「……遊園地とかがいいな……」
「あ、それもいいね!!あ、でももしバレたらみんなに絶対オレが怒られる……んー……」
いまだ近い私たち。これは恋人距離ではないのでしょうか。でも……凜くんがめちゃくちゃ笑顔で仕方ないなあって思ってしまう。同じ歳なのに。子供みたい。
「どこに連れてってくれるのかな?凜太郎さん。」
「わかった、初詣いって、海行こう!!」
「あ、海は行くんだ……わかった、着替える。と、言うことで離してください」
「えー……」
「寝起きなんで、私」
しぶしぶと離される。おお、寒い。ひと肌は暖かいのだな。
「んじゃ、着替えたら来てな!」
「ん!」
凜くんを部屋からだし、着替え始める。海でしょ?……厚着しなきゃ!!!
とにかくそれ相応な格好を。
スカートはだめ。可愛いコート??いや、暖かさ重視!!
出来る限りの厚着をして1階に降りる。
「おはよ、花ちゃ……ん?なに?パンダ??え?ふとっ……パンダだよね?」
「花、御前1日で太った??」
「うわ、なに?その恰好。一応アイドルだよ!?」
「どしたの、花。あ、まさか、風邪ひいてた?!今日出るのやめる?!」
……こいつらどうしてくれようか。
「凜くんが海に行くって言うから厚着したんです!!!」
「うん、そっか。でも着ぶくれしてる。おいで、お兄さんが服選んであげよう。」
「かなたさん?!」
私はかなたさんコーディネートに着替え今はみんなで朝ご飯……昼ごはん???を食べている。
「びびった、まじで太ったのかと思った」
「蓮さん、そんな1日で太りません!」
夜いたじゃん、あなた。コウキくんが作ったお雑煮を食べる。……おいしいし。
「花ちゃん、おいし?」
「うん!とっても!!」
「よかった!で、いまから凜とデート?」
「そうそう!!いまからね、花と初詣行って海行ってくる!!」
私とコウキくんの話を遮り凜くんが話す。
「初詣か。ファンにばれないようにね?」
「かなたくん、オレがついてんだよ!大丈夫!!」
「凜だから、かなたが念を押してんだろ」
「蓮くんにはお土産買ってこない」
「なんでだよ!!」
凜くんと蓮さんがいつものように騒がしくなる。
蓮さん……『御前の事気になってる。多分』……多分って、なんだ、多分って!!!
「花ちゃん、そんなに蓮見てると蓮、穴開いちゃうよ?」
「え?何?花、俺見てんの?」
「蓮くん、そのかっこいい顔で微笑むの禁止!!」
「うるせえ、凜!!俺の顔がかっこいいのは今に始まったもんじゃねえだろうが!」
「もう、正月からうるさい!!花ちゃん、ぜんざいもあるよ?」
「あ、食べるー!!」
うん、今年もうるさい、RAINBOW。まったく。
蓮さんと姫奈の事は、今は忘れておこう。今日は凜くんと出かけて楽しむことにしたい。
凜くん、他の人の事考えるとなんかすぐわかっちゃうから。
「ほら凜もちゃんと食べて花ちゃんが風邪ひかないようにしてよ?」
「わかった!!」
コウキくんが凜くんの前にもぜんざいを置く。私たち末っ子はお兄様たちの心配を浴びまくってるなあ。
「んじゃ、行こうか花!」
ぐいっとぜんざいを食べ切立ち上がる。ほんとよく食べるの早いな。さっきお餅2つ入ってたでしょ、そのぜんざい。私も立ち上がりコートをきて凜くんのそばに。
「凜きて、カイロあげるから」
「あ、いる!!」
凜くんはかなたさんに呼ばれそちらに。もう、忙しない人!
「花。風邪ひくなよ?」
「はい、蓮さん!ちゃんと凜くんにその辺はおまかせし……あ、の」
「ん?」
蓮さんに手を掴まれている。手と蓮さんの顔を交互に見る。
「……夜言った事、わすれてねえな?」
「は、い」
「ならいい。気を付けて行けよ」
ぱっと手を離される。どうしよう、夢じゃないとわかっていたけど、今日もこんなこと言われるなんて。
と、その時私の背中に重みが。
「花!カイロもらった!!いこ!」
「凜くん」
横向けば凜くんの笑顔。なんか、ふっと心が軽くなった気がした。
「先にどこ?」
「先に海!!」
「うん!!」
私たちは一応変装用のメガネと帽子を着用して3人に見送られながら家を後にした。