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初めてのクリスマスと女性アイドルの恐怖5


「蓮くん、天くん、花いた!」

「凜、太郎くん?」

「遅いから迎えに来た!天くんがケーキ持ってきてくれたんだ、花帰ってくまで食べられなくて探してた!」


 いつもの笑顔で私の所に来る。

 しかもさっき、天さんと蓮さん、って言ったよね?まさか。


「御前、どこまで行ってんだ遅えよ!早く帰って来いって言ったろ?」

「やっと見つけた、花ちゃん!」

 

 まさかのこの3人。この3人が私さがすなんて火に“灯油”注いでると思うよ?!その証拠に、ほらアイドルの目が怖いじゃん!!


 蓮さんに頭に手を置かれ、凜太郎くんはいつものように、花、花て言ってる。


「花ちゃん?どないしたん?」

「え、いや……」


 天さんの言葉に口を濁す。アイドルの目が怖い、なんて言えない。


「あれ?なんや、あきのちゃんたちが花ちゃんとおったん?」


 私を見つめてから、笑顔で近藤さんたちの方を向くと天さんが明るく声をかけた。

 たしか、この人たちの中で1、2人は天さんかっこいって言ってた人がいたような。


「天さん!!」


近藤さんの横にいたお姉さんが反応する……天さんを見上げる顔は頬を赤く染めまさに恋する女。

あれ?先ほどとても低い声で私の事ぶつぶつ言ってませんでしたっけ?


「皆、出番終わって花ちゃんと遊んどったん?」

「はい!」


 うそつけ。こわいよ、この人達!!

 わかるよ、あこがれの人にはいい顔見せたいもんね!わかるけど、同じ女としてどうなの、この変わり身は。

 なんなんだろう。なんか悔しい、ほんとに言い返せばよかった。でも言い返せなかった。


 心では思ってもこんなきれいな人たちに囲まれて、圧倒されて、芸能界でも私はまだまだひよっこで。


 ……ほんとに怖かった!!凜太郎くんの声が聞こえたときほんとにほっとした。

 凜太郎くんの声聞こえてほんとに涙我慢限界だった。


 私は思わず凜太郎くんの衣装を握る。

 

「花ちゃん……。」

「花?」

「花がどうかした……」

 

 私は凜太郎くんの背中側の服の裾を引っ張ったまま顔を上げれない。泣きそうなんです!


「あ、せやせや!蓮、凜、この子たち、知ってる?紹介したるわ!この天さんが。おいで」

「え、いや、花……」

「ええから、来る。凜も」

「は、い」


蓮さんと凜太郎くんの声がハモる。凜太郎くんがしぶしぶ歩いてるのがわかる。私の手を振りほどくこともせず、私を隠すように前を歩いてくれてる。


こんなの見られたらもっと嫌われてしまう。けど、天さんで片腕を隠して服を握っている私の腕を掴んでくれている。


「この子らは……」


天さんが明るくはなしてくれてるのが聞こえる。

ふふ、蓮さんが外面よくして話してるのが聞こえる。凜太郎くんが蓮さんに合わせてるのがわかる。


 ……ずっと私の腕を掴んでくれてる


「凜くん、花ちゃんに電話番号渡してるから、電話してね!」

「あ、うん。時間があれば」

「蓮くんも!」

「また花にもらっとく」


 2人の言葉にきゃぴきゃぴしてる、アイドルたち。こんなの捨ててやりたい。私は持っている名刺をチラと見る。


「ほな、あとで銀連れて遊びに行くから!もうすぐみんな本番ちゃうの?」

「あ!そうだ!!じゃあ、お先に失礼します!!」

「花ちゃん。よろしくね」


 天さんの言葉にばたばたとアイドルた達は本番に向かった。

 あ、あんな声で「花ちゃん」なんて呼んでなかったじゃない!!


 あ、気ぬけた。


「花?!」

「大丈夫?」


 ぺたんと床に腰を付ける。わからなかったけど、めちゃくちゃ気を張っていたんだ、私。


「大丈夫か?」

「れ、んさん」


 座りこんだ私の前に蓮さんが視線を合わすようにしゃがむ。

 目に涙がたまってくるのがわかる。瞬きしたら流れそう。


「おお、花ちゃんの目から涙流れそうや」

「え、ちょ、花、服はなして!オレ花、慰めらんない!!」

「あ、ごめん」


 掴んでいた服を離すと凜太郎くんも私の目の前にしゃがむ。

 

「花、なにかされたのか!」

「いや、されてないんですけど……」

「どっか痛い!?病院行く!?」

「痛くないけど……めっちゃ怖かった!!!」

「あーあ、涙こぼれちゃった」


 瞬きしたが最後涙が零れ落ちる。怖かったんだ、ほんとは!!


「女の子にあんな感じで呼び出されたの初めて!!」

「花、泣くな。」


 蓮さんの手が伸びてきたのがわかった、けど、私の視界は一気に赤と白の衣装の色になる。


「なんで泣いてんの!!」

「凜、くん」

「すぐオレに連絡してくれば良かったじゃん!!あんな人たちの番号なんていらねーし、オレ花だけでいいよ!」

「だって、連絡なんてできるわけないじゃん、あほ凜―……!!」


 ばかじゃん、と小さい声でいいながら凜太郎くんが抱きしめてくれてる。私は凜太郎くんの衣装を再び掴み、泣いている恥ずかしさからずっと凜太郎くんに悪態をついていた。


 そんな私たちを天さんと蓮さんはずっと見つめてくれていた。




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