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金平糖とプレゼント6


「はあ、なんか忙しい1日だった。」


 部屋に帰りお風呂に入ると一気にすっきりした。

 天さんにお礼の連絡を入れて、長い髪を1本に結ぶ。久しぶりの買い物の戦利品を机に広げた。


 机いっぱいに広がる戦利品。でもみんなのクリスマスプレゼントは買えなかった。みんながあそこで来なかったら天さんに意見もらって選ぼうと思ってたのに。

 クリスマスは仕事だけど初めてみんなと過ごすクリスマスだから。

 

「あ。」


 凜太郎くんがよく食べているチュッパチャプスの束を見る。花束みたいにしてあって可愛いからお土産と思って買ったんだった。


「……別にほかの人の土産買い忘れただけだもん。みんなが来たから買えなかっただけだもん。深い意味はない、別に。うん。」


 ……凜太郎くんにあげるもの、と思ったら渡したくなる。一緒の家にいるから別に今日じゃなくてもいいし、明日の仕事前でもいいんだけど。

 

 私は束を持ち出し部屋をでる。

 ……起きてんの?凜太郎くん。なんだかんだで時間は23時過ぎている。明日は仕事だしもう寝ててもおかしくない。

 

「あのー……凜太郎くん?」


 小さくノックして声をかける。寝てる?寝てるなら帰ろ、う?!

 

「花?!」

「い、たい」


 帰ろうとしたら、額に衝撃が走った。こいつ、思いっきりドア開けたな……


「……何してんの?花」

「凜太郎くんが!!急に!ドアを!開けたから!!打ったのよ!!!」


 額を抑え見上げる。非常に痛い。


「あー、ごめん。大丈夫?」

「痛い。んで寒い」

「あ、どーぞどーぞ」


 口を手で覆ってばれないようにしてるんだろうけど笑いをこらえてんのばれてんだから。

 私は凜太郎くんの部屋に入り座る。凜太郎くんはベットの上に座って私を見る。


「大丈夫?」

「一応」

「どしたの?夜に花がオレのとこに来るとか珍しい」


 額を一通り撫でた後、私は、ん。とだけいって持っていたものを差し出す。


「なに?」


 ベットから降りて私の前にしゃがみこむ。大きいトレーナーをきてる凜太郎くんの手が伸びてくる。


「それで受け取れるの?」

「一応手だから」


 手、というか、ソデ?凜太郎くんファンが見ると発狂するだろうな、この萌袖にコウキくんみたいに前髪を上げてる姿。一緒に住んでないと見れないだろうな、この姿。


「どこまでが袖でどこからが手なのよ」

「どこだと思うー?」


 ここでした、と飴を持っている私の手ごと両手でつかむ。


「りんたろ……」

「ん?」

 ふと、呼ぶのを止める。

 なんか、なんかさあ。ファンの子が凜って呼んでて、私が凜太郎くんなのちょっと、なんか。


「花?」

「凜……くん」

「は?」


 きょとんとした顔しちゃって。そんなに私が凜太郎くんから変えたらへんなのか。


「……なんか言ってよ」

「もう一回呼んで?」

「……凜くん」


 凜太郎くんの表情が緩むのがわかる。なんて可愛い犬なのか。


「花、オレの事そうやって呼ぶの?いーよ!」


 ぶんぶんと飴事掴んだ私の手を振る。


「嬉しいの?」

「もちろん!なんか凜太郎くんって呼ぶの花しかいなかったけど、凜くんって呼んでくれた方がなんか、あれ、えっと、親しみやすい?感じ!」

「親しみやすいって。じゃあ、蓮さんやかなたさんも、くん、付けのほうがいいのかな?」

「えー、ほかは変えなくていいんじゃない?」

「そういうもん?」

「うん!オレだけ特別でいいよ。それより、花」

「何」


 先ほどのにこやかな笑顔とはまるで違う真面目な顔をして私を見る。


「オレ、花の事好きなんだけどこんな時間にここ来ていいの?」


 飴事私の手を自分の顔へと近づけ、首を傾げる。長い袖の中で凜太郎くんの手が動き私の手を掴みなおすのがわかる。

 どうしよう、さすがアイドル……そんな顔して見つめられるとドキドキする。


「あ、の、」

「好き」


 思わず下を向く。だってそんな、優しい顔でいわないでよ、調子狂う……


「……そんな困らせた?ごめんね?」


 ばっと顔を上げると凜太郎くんは飼い主に怒られ耳を下げてる犬のような顔で私の顔色をうかがっている。

 

「困るというか、あの、ドキドキして、」

「ほんと?ドキドキした?やった!!」

「うわっ!ちょっ、え?!いっ、たあ」


 手が離れた瞬間凜太郎くんが勢いよく抱きついてきたせいで倒れこみ私は後頭部を強打。


「……花大丈夫?」

「額の次は後頭部……」

「ごめんね?」


 上からかぶさるように凜太郎くんがいる。腕を私の顔の横についてるから離れてるのは離れてるけど、下から見る凜太郎くんは、なんか、こう……


「ちょっと、なんかかっこいいからどいて!!恥ずかしい!」

「まじ?!かっこいいなら見ればいいじゃん!!見て惚れてくれてもいーよ?」

「ばか、心臓ドキドキする!!」

「いいじゃ、いったああ!!!」


 言葉が終わる前に、スパンと大きな音が響いて、凜太郎くんが飛び起きる。

 

「何してんだ、御前は」

「いやー、いいの入ったね、コウ!」

「暇つぶしにハリセン作ってたかいがあったね、ほんと!!」


 下から見えたのはかなたさん、蓮さん、そしてそれで凜太郎くんを殴ったであろう大きなハリセンをもったコウキくんの姿。


「コウちゃん、痛い!なに?それ鉄かなんかでできてんの?!」

「おれの凜への熱い気持ちでできています」

「それめちゃくちゃ痛いけど?!」


 わちゃわちゃと話し出すコウキくんと凜太郎くん。


「花ちゃん、大丈夫?」

「御前なあ、凜アホなの知ってんだろうが。あーあ、額も赤いし」


 かなたさんに起こしてもらって蓮さんが私の横にしゃがみこむ。

 

「なんでここにいるんですか?」

「凜のやった!!って声が聞こえたからおれがかなたくんと蓮くんよんで見に行こうって誘ったんだよ!」

「そ。アホが騒いでんな、と思ったら御前が凜の下にいたってわけ。」

「まだOKもらってない分際で花ちゃん組み敷くなんて10年早いよ、凜」


 いつのまにかハリセンはかなたさんの手に渡り、ずっと凜太郎くんの頭をそれで叩いている。


「御前口説き方がなってねえんだよ。ほんとに恋愛ドラマの主役してたのかよ、凜」

「そんながつがつ行くと花ちゃん逃げちゃうよ?」

「……うん」


 いまだ叩かれ続けながら凜太郎くんは頷き私を見つめる。


「ごめんね、花」

「もういいよ、びっくりしただけだから!」

「よかった」


 笑う凜太郎くんにつられて私も表情が緩む。


「ったく、ほら花、御前はこっちこい、額赤いの冷やさねえと明日仕事だぞ」

「あ、はい」


 蓮さんに言われ立ち上がる。


「オレがする!!額と後頭部ぶつけたのオレのせいだし!!」

「は?後頭部?!」


 かなたさんが私の後頭部を触る。あ、ちょっと痛い。


「蓮、ここも冷やしてあげて」

「かなたくん、オレが!」

「コウ」

「はーい」


 スパンとまたハリセンの音が響く。


「痛い、オレの頭が腫れる!!」

「今日凜はもう花ちゃんに近づくの禁止」

「ひどい!!」

「行くぞ、花。寝る時間なくなっちまう」

「はい。……凜、くん。」


 私は頭部を撫でている凜太郎くんに近づき今までずっと私の手にあった飴を差し出す。


「これ、凜くんにあげるためにここ来たから!」

「花、ありがと!大事にする!!」

「まったく。かなた、コウキ。あとよろしく。行くぞ、花」

「はい、じゃあ、おやすみ」


 私は蓮さんと一緒に部屋をでた。

 額と後頭部を治療中、何度かハリセンのいい音が聞こえて私と蓮さんはそのたびに部屋が響くほど笑っていた。









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