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金平糖とプレゼント4

「ご飯ありがとうございました!」

「いえいえ。せやけど…ほんまアレでよかったん?ご飯」

「もちろんです!」


 晩ごはんはラーメン。

 本当は天さんが予約してくれていたお店があったけど、家で結構時間を使ったらしくて予約を変更するしかなかった。

 変更してくれてる時「がまんできるか?おなか」と聞かれて、私の返事より先にお腹が盛大に鳴ってしまった。


「ほんまよかったわ、近くに俺お気に入りのラーメン屋あって!あんな大きい腹の虫なったら、はよせんとあかんって思うわ!」

「すみません、お恥ずかしい」


 笑いながら天さんは運転を続ける。


「さて。お腹も満たされたことやし、オレの買い物に付き合ってくれへん?」

「もちろん!!」


 車を走らせること数十分。


「……ここに、行くんですか?」

「せや。あと半月もすればクリスマスやろ?銀にクリスマスプレゼント買おうかなぁって。こんな所にくるなんて、12月入ったら忙しくて出来へんし。RAINBOWも12月忙しいやろ」

「ま、まぁ忙しいです」


 12月は正月に向けての特番や、年明け後のSP番組等の収録をまとめて行うらしく地獄だと聞いている。

 DOTも年末年始はひっぱりだこで、どの局番にも必ずいた。


 だから今プレゼント買いたいんだ……仲良いなあDOTって。

 って、ほっこりしてる場合じゃない!


「ここ大型ショッピングモールですよ!?!ただでさえ人が多いのに、DOTってバレたらどうするんですか!!」

「あー、せやな。RAINBOWの花やってバレたらまずいか……」

「いやあのそうじゃなくて……」

「んじゃ花ちゃん!!!」

「はい!?」

「変装するで!!!」

「……は?」


 車を停めて、天さんに促されるまま後部座席に移動する。


「花ちゃんには、これとこれや」


 ぽんぽん、と手渡されたのはニット帽とダテメガネ。


「花ちゃんそれつけてな、オレは…と。どや?花ちゃん見て」


 ふわふわのマフラーにメガネ、黒のハットを被ってキメ顔。天さんは悪ふざけしているつもりなんだろうけど。


「かっこよすぎてバレると思います!」

「おお、ええ事言う!よっしゃ、めっちゃ嬉しいコレで行こ!!!ほら行くで!」


 天さんが先行して車を降りる。

 私はかなたさんに居場所だけ連絡して後を追った。


 なんだかわくわくする。

 RAINBOWになってから、こんな場所で買い物をするなんでできなかった。

 新メンバーとして世間に公表、その後反対派の存在も出てきて自分一人ではなかなかショッピングもいけなかった。


 あー、久しぶりすぎて目移りする。しかも横に推しが!!


「ん?なんかええもんあった?なんか買いたいならいいや?花ちゃんの分も持ったるくらい力はあるから」


 天さんが私の視線に気づき、そっと頭に手を置いた。こちらをみつめて微笑んでくれる。

 口止め目的だったけど、推しとデート…幸せだ。ほしいものも一気に買えてるし!


「あ、凜と蓮」

「え!?」


 驚いてあたりを見渡す。


「と、みんな、やな」

「……あ」


 確かに、凜太郎くんと蓮さん、そしてかなたさん、コウキくん、私がいた。


「みてみて!この花ちゃんかーわいい!」



 某ファッションブランド店前に、おんなのこたちが立っていた。RAINBOWが広告塔に抜擢され、しばらく話題になった店だ。店のウィンドウ一面には、これでもかというほどメンバーの様々なシーンのポスターが貼られている。


 なんだ、天さんが見たのはあのポスターか。 

 って、


「こ、これは貼りすぎでは!?」

「しっ、バレるで」


 天さんにぐい、と肩を引き寄せられる。


「女の子たち、めっちゃ写真撮ってんな」

「たしかに……」


 肩を抱かれたまま、人ごみをみつめる。

 みんな思い思いに、好きなメンバーの写真を撮っていた。


「一番人気は?」

「そりゃあ蓮さんでしょう」


 蓮さんに対して、ほとんどのスマホのカメラが向けられている。


「蓮かっこいいよねぇ!!」

「えー、かなたじゃない?」


 2人で少しその光景を見つめ盗み聞く。

 

「コウキ可愛いじゃん!」

「わかる!!」


 うんうん、みんな人気あるなあ。ちょっと鼻が高い。


「私凜君好き」

「あたしも!凜ほんとかっこいい!!かっこいいのに可愛いよね!!ほんと最高!!」


 凜太郎くんも人気あるのね。……ファンにも凜って呼ばれてんのね、凜太郎くん……。

 

 天さんに肩を抱かれたまま、ポスターで決め顔の凜太郎くんを見る。

 なんか、むかつく顔ね。


「花ちゃん、顔怖いで?」


 組まれた手で私の頬をつまみながら天さんが覗き込む。

 うっ、推しの顔ドアップ。


「いえ、なんか、ちょっとむかついて……」

「むかつかんといて?可愛い顔台無しやで?」

「ほんと、女の子の扱い慣れてますね」


 思わず笑ってしまう。そんな私の顔をみてダテメガネを少し下げてウインクしてくる天さん。


「その顔ポスターよりかっこいいですね」

「んー?そう?」

「はい」


 このショッピングモールは円形になっている。真ん中は吹き抜けになっていて見通しがいい。そんな吹き抜けにはDOTの巨大タペストリーがつるされている。

 RAINBOWじゃ、この巨大タペストリーにはまだなれない。

 

「ほんと、銀さんも天さんもこれもかっこいいですね」

「そう?」


 手すりに腕かけ見上げる。あ、これ写真撮りたい。

 携帯携帯……ポケットから携帯を取り出しメールが来ているが先にカメラを起動させそれに向ける。

 ああ、カッコいい。ピントを合わせカメラを押した。が、そこに写っているのはダテメガネにハットを被った天さん。


「もう、あれを撮るんです!」

「本物おるやろ、ここに」


 な?と言われ微笑まれると何も言えなくなる。推しの笑顔の破壊力よ。


「まあ。で、いつまで私の肩に腕置いてるんですか?」

「ん?花ちゃんがオレと付き合うって言うまで!好きでもええで?」

「か、らかってます?」

「まさか」


 ダテメガネを外し私を見つめる。


「天さ……」

「オレの!!!」

「ん?!」


 口をふさがれたと思った瞬間聞こえてきた声。お腹に回された腕、服は見たことがある。そして背中越しに匂ういつもの飴の甘い匂い。


「でたな、凜」


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