犬とアイドルと友達6
顔の火照りを覚ますように顔を手でパタパタと仰いでいると……
ん??ポケットの中で携帯が震える。取り出してみると着信。
「天さん」
「は?」
肩が重いと思えば蓮さんが私の肩に腕を置いて携帯を覗きこむ。
「あー!!蓮くん!花から離れて!!」
「うるせえ凜」
ぱっと両手を上げ眉間に皺を寄せる。
手の中の携帯はもたもたしている間に動きを止めていた。
「切れた?」
「うん。でも留守電入ってる」
画面には留守番電話ありの表示。
「聞いてみたら?くだらない事だと思うけど、一応先輩だし急用とかかもしれないからさ」
……にっこりと笑って結構いうよな、かなたさん。
みんなの視線が私に集まる。静まり返る部屋。留守電を聞こうと再生を押し耳に当てた、瞬間
『はーなちゃーん!!!』
耳をつんざく大声に耳から携帯を離す。
「う、うるさい」
「天さんって、頭切れるけどアホだよね」
「コウキ。今更」
うるさかったのははじめだけ。そのあとはいつもの天さんで。
内容は、デートしよう、日にちは明後日。時間は午後18時。迎えに行く。のみ入っていた。
迎えに行くって、私の意思は?そして、なぜ明後日夕方から時間が空いていることを知っているのか。
「花ちゃん、必ず連絡。」
「は、はい!」
「花ちゃん、おれ尾行しようか?」
「コウキくんならやり遂げられると思うけど、RAINBOWが尾行はいかんよ」
「俺はいけねえな。その日姫奈とデート……日にを変えるか?」
「変えなくていい、蓮さん!変えなくていい!!」
「オレ、仕事休む」
「だめよ、そんな事しちゃだめ!!」
えー……なんか、最近思う。この人たち、私に対して過保護!!
私の言葉なんてすぐ忘れ、4人でぶつぶつと話している。
とりあえず、行かないって選択肢は迎えに行く、と言われた時点でナシ。
夕方18時。丁度仕事終わって神永さんに送ってもらって一息ついたくらい。なんで私のスケジュールを知っているのか謎。
でもどうやっても行かないって選択肢はないかもしれない。
蓮さんの事をきちんとまた口止めしたいし、キスしたのも謝ってもらいたい……推しとデートって言うのをちょっと体験したい!
「花ちゃん。いくら推しだからって、もう一度キスしたら……唇今以上腫れた状態でテレビに出ることになるからね」
推しだからって考えてたこと、ばれて……それよりコウキくんのかわいい笑顔が非常に怖い!!
「しません!むしろ、キスなんてものは簡単にしてはいけないのです」
「御前天さんとしといてよく言うな」
「私からしたわけではありません!!」
まったく、何を言っているんだ、この人は!!
「えー?花、花!ならオレとする??」
「凜、直球すぎ。お前はまだ反省タイムだ」
「はい……」
私に向かって言った言葉は明るかったのに、かなたさんに制された瞬間速攻で沈む。
「御前ほんとわかりやすいな」
「え?マジ?!」
「ああ」
確かにわかりやすい。沈んでたと思ったらもう蓮さんとコウキくんにちょっかい出されて笑ってる。ほんと……
「犬みたい」
かなたさんと思いきり言葉がかぶり、2人で笑い始める。
「なに笑ってんの?!花、かなたくん!!って、やばい、まって足、感覚ない!!」
先ほどからずっと正座していた凜太郎くんの足。そりゃそれだけ正座してると足もしびれるだろう。
「何、御前、足やべえの?」
「まじ?凜、感覚ないの??」
蓮さんとコウキくんがにやにやと凜太郎くんに近づく。
「あ、まって!なんか、じわじわきた、やばい」
足を崩した体勢からいっこうに動かない、いや動けない凜太郎くん。それを触ろうとしている蓮さんとコウキくん。そして笑ってるかなたさん。
告白された後って、なんか気まずくなるのかなっておもってた。まだ答えてないし、私蓮さんの事まだあきらめられてないし。
けど、そうならないのは凜太郎くんのおかげなんだと思う。
「花、かなたくん、助けて!!やめて、蓮くん、コウちゃん!!」
「凜、反省タイムだから花ちゃん助けちゃだめだよ」
「はーい!」
「ひどい!!」
「凜、御前反省してんのか?」
「してるー!!」
「凜、アイドルの顔してないよ?」
「んなもん、無理!!」
この楽しい光景をいつまでも見ていたいのだが……やっぱり、推しとデートって言うのは……口止め目的だけど……うん。緊張するけど楽しみよね。




