犬とアイドルと友達と4
「なんだ御前ら一緒にいたのか」
「うん!蓮ちゃん、なんでDOTといるの?」
姫奈が蓮さんと話し出す。
「花ちゃん、オレに会いに来てくれたん??」
「いや、そういう訳じゃ……」
天さんが席を立ち私に向かって手を広げる。くっ、可愛い。
「えー?ほんまは会いにに来てくれたんやろ?ええねんで?素直に言っても!」
「天」
「……あーまあ、その辺座り?おごったるし、好きなもん食べ?」
まさに天さん専用銀さんの鶴の一声と言いましょうか。その言葉に天さんはスッと自席に座りなおす。
「花ちゃんも姫奈ちゃんも食べたら?これほんとにDOTの奢りらしいから」
コウキくんが指す机の上は本当にたくさんの料理がのっている。
「天くん、銀くん、これお金結構かかってない?」
「ん?僕はそんなに出してないよ。ほぼ天。この間の3日間の撮影で天がなんだかんだかき乱したって、聞いてね。今回はその罪滅ぼし。な、天」
くいと親指で隣の天さんを指す。
「ほんまにRAINBOW容赦なさすぎ!食べすすぎ!」
「2人ともどこかに座りなよ。天の奢りだし本当に食べてくれていいから」
「はい、お言葉に甘えて」
姫奈と2人で席を見回す。どこに座ろうかな……
「花ちゃん、こっちおいで!オレの隣!!」
天さんが椅子を叩く。まあ、天さんの隣空いてるし。と一歩住踏み出したその時。
「天くんの隣だめ。花、ここ」
「凜太郎くん?」
腕を掴まれ引き留められた。
「あ、卑怯!凜!!」
「いーの!!卑怯じゃねーもん!」
天さんと話ながら自分の席の横にイスを持ってきてくれて座れとばかりにそれを叩く。
怒ってるんじゃなかったのかな?でも座れってことだろうし……私はそこに座る。
私と姫奈が座ったことを確認すると皆思い思いに話し出す。
気まずい。非常に気まずい。
「ん。」
「え?」
私の口元にはポテト。それを持つのは凜太郎くん。
「食べて、いいの?」
「……むしろオレのポテトが食べらんないって言うの?」
「まさか!食べる!!」
食いつけば塩加減絶妙!!
「うまい?」
「うん!……あのさ、凜太郎くん私に怒ってたんじゃないの?」
「怒ってたって言うか、なんていうか……」
私から目をそらし考え込む素振りを一瞬見せた後再び私を見る。
「何?」
「いや。意外と花と遊べないの面白くなかったから許してあげることにしたの!オレ優しい!!」
「自分で言う?」
「言う!オレだから!」
凜太郎くんが私をみて笑ってくれた、よかった!
「花ちゃんって蓮と仲良いって思ってたけど、凜とも仲良しやな」
天さんの言葉に皆が一気にそちらを向く。
「何言ってんの天。RAINBOWみんな仲いいじゃん」
「そうやけど。花ちゃんは特に蓮と仲ええってオレ思ってた。まあ撮影中ずっといたからかもしれんけど」
私をまっすぐ見つめ口元だけ微笑む。ん?なんだろ。なんか嫌な予感?なんで今そんな事言い出したんだろ。
「……確かに花、蓮ちゃんと仲いいよね」
「せやろ?」
姫奈が横にいた蓮さんを見上げる。
「は?バーカ。俺と花はメンバーだし、仲悪かったら収録とかダンスとかうまくいかねえだろが」
蓮さんはそう言ってあたりをチラと見回した後姫奈を安心させるように頭を撫でたる。姫奈は小さく何度も頷いていた。
……天さんめ。黙ってるって言ったじゃん!
じとっと目を細めて天さんを見るとひらひらと手を振ってくる。
「花ちゃんは、かなたくんとも蓮くんとも凜とも、もちろんおれとも仲良いよね!」
ねーとコウキくんが首を傾げる。思いきり「そうです!!」と答え天さんを見る。
いまだ、にやりとした口元は直っていない。……まさか、ここでばらそうとしてる?!
「花ちゃん!オレとデートせえへん?」
な、なんかここで嫌って言えない。
「……します!もちろん、しましょう!」
「は?」
隣の席から低い声が聞こえる。仕方ないのよ、凜太郎くん!!さっきのコウキくんの言葉でさえ揺らがなかったのよ!
「何?御前、マジで言ってる?」
蓮さんの眉間に皺が寄ってる。怖。
「天さん。花ちゃんに何かしました?弱み握ってる、とか」
コウキくんの可愛い顔が。笑顔が引きつってる!!
「花ちゃん、天の言うこと聞き流してもいいんだよ?」
銀さんが天さんの肩を掴んでる。
天さんが、痛い痛いと言ってるから、あの手には相当力が込められているんだろう。
「俺はまあこの前もいったけど逐一連絡くれるならいいよ?必ず。連絡。」
「は、はい」
かなたさんも今日の笑顔は怖い。
なんかメンバーが怖い。
「花ちゃんが良いっていっとるんやしええやん!どこ行く?」
「どこにしましょう」
もう一度真面目に口止めしなきゃ、この人。でも、実は推しとデートって意外と嬉しかったり。
「……天くん」
……隣から地を這うような声が聞こえる。
「なんや凜」
「花からかうのやめてよ。こいつアホなんだから天くんの言葉本気にしたらどうすんの!!」
「アホって、ひどい!」
「別にからかってへんよ。オレ、花ちゃんの事狙ってんのほんまやで?」
子犬VS成犬みたい。 淡々と話す天さんと食って掛かる凜太郎くん。温度が違う。
「天くん、本気か冗談かわかんねーんだもん!」
「ほなキスでもしよか?本気やったらええやろ。凜……蓮。」
「は?」
「天さん……なんで俺に聞くんすか」
「別に。かなたもコウキもオレが本気やったらええんやろ?なあ」
「天。とりあえずストップ。顔怖い」
銀さんが天さんの肩を抱く。何この状況。
「と、いう訳で、デート。マジでしよ!いつ暇?」
先ほどの威圧感のある表情とは違い今度はいつものかわいらしい笑顔で私を見る。
演技?本気?まったくわかんない。と、とにかく真意を聞く意味でも一回ちゃんと時間を造らなきゃ。
「あ、暇な日は」
「……天くん。」
言葉を遮り凜太郎くんが私の肩に手を置く。
「なんや、凜。オレの目の前でオレが今一番ほしい子の肩掴むんはいただけへんなあ」
「オレも花ほしいから天くんにはあげない!」
……は?!
「花!」
「な、何?」
「オレ、花、好きみたい!」
へへっと照れたように笑う凜太郎くん。この人は、今なんと言った??思考が追いつかない。
「凜。ここ、カフェ。楽屋じゃないんだけど?」
「あ。」
はあとかなたさんが頭を抱える。
「凜のバカ」
「ったく、コウキ、このバカ黙らせろ」
「花ちゃん、凜、帰るよ!」
かなたさんとコウキくんは立ち上がる。
「え?帰るの??」
「……ごめんなさい、みんな」
私一人よくわかっていないけど、立ち上がるみんなにつられて立つ
「ほ、ほんとに帰るの?仕事は?」
「大丈夫、終わってる。ほら行くよ、花ちゃん」
コウキくんが足しの横に来て荷物を持ってくれる。
蓮さんは「時と場合を考えろ!」と凜太郎くんを叩いている。
なにがなんだか。
「人が少ないっていっても誰がいるかわからないし、これ以上ここにいて凜が暴走して週刊誌にでものったら困るからね。今のうちに帰るんだよ。」
あ、なるほど。私の表情をよみとってコウキくんが教えてくれる。
ここはテレビ局のカフェ。そうだよね、誰がいてもおかしくはない。
「……ほしいな、やっぱり」
「今だれか何か言った?っ?!!」
後ろから声が聞こえて聞き取れなくて……
振り返った瞬間見えたのは天さんの顔。あれ?いつの間に……なんておもってたら、何かが私の口に触れた。
「花ちゃん、欲しいって言ったやろ。とりあえずキスもらっとく」
は、い???私の頭は思考停止。
「天くん!!」
「凜!おちついて!こっちおいで!!」
コウキくんが凜太郎くんを引っ張る。
「行くぞ、花!」
「蓮さん?!ちょ、こけ、る」
私の肩を抱き足早に歩き出す。はやい、こける!
「天さん、やってくれましたね。本当に!」
「じゃーね、RAINBOW。花ちゃん、連絡するなー!」
歩きながらも振り返ると天さんは笑顔でひらひらと手を振ってて、そのあと銀さんに思いきり叩かれていた。