犬とアイドルと友達と3
「私が何をした!!」
「落ち着いて、花!」
今いるのは姫奈の楽屋。
今日私はオフなんだけど、姫奈が収録の合間にお昼を食べようと誘ってくれて今一緒にいる。
あの鍋から2日、いまだに凜太郎くんは私と話すとき不機嫌だ。今日も朝4人を送りに玄関に行ったんだけど、なぜか、べーっと舌を出された。
なんで怒ってんのか、理由は言ってくれない。自分で考えれば―というだけ。
「くっそう、まったく怒ってる理由がわかんない。なんか蓮さんから聞いてない?」
「えー?何にも聞いてないよ?」
2人で楽屋でカレーを食べながら話す。
「蓮さんに言ってないってことは、コウキくん、かなたさんも知らないか……」
「心当たりは?」
「ない」
うーんと悩む姫奈を見る。
……姫奈の貴重な休憩時間を私の愚痴でつぶしてるのがわかる。
「ごめんね、愚痴って」
「いいよ!気にしないで」
にっこりと笑う姫奈につられる。この笑顔がファンを虜にするのだろう。
「あ、そうだ!ここのテレビ局1階のカフェなら行ってもいいってお許しが出たよ!」
「ほんと?」
「うん!花も神永さんに聞いてみて」
私は姫奈の言葉に神永さんに電話する。
私と姫奈。姫奈は言わずもがな人気女優。私もアンチは多いけどRAINBOWの一員。
なにかあってからは遅いです、と姫奈のマネージャーさんに言われ楽屋ごはんとなったんだけど、カフェくらい行きたい!となり、姫奈の交渉でOKが出たらしい。
神永さんにも、まあいいでしょう、とOKをもらい晴れて2人でカフェに行けることに。
「でもさ、花。天くんが本気だったらどうするの?」
「どうするって……」
2人でエレベーターで1階へと居りながら話す。
本気だったらって……私、その時どうするんだろう。
「あ!姫奈、わかっちゃった!花、好きな人いるでしょ!」
「は?」
素っ頓狂な声でた。
「好きな人がいるから天くんの誘い冗談でもノりたくないんでしょ!違う??」
首を傾げ“どうだ”と言わんばかりに私を見つめてくる。
「好きな人って……」
あなたの恋人です、なんていえない。
「いないですー。天さんは最推しだからね。横並んで歩くて想像しただけで私の心臓壊れそうになっちゃうから、嫌なのー」
なんて。
「心臓……壊れそうって言うのわかる!姫奈も蓮ちゃんと並んで歩くと心臓ドキドキするの!いまだに手繋いでたら口から心臓出そうになるの!ドキドキしすぎっていつも怒られる」
自分の両手を組んではにかみながら思い出して話している姫奈はホントに可愛い。連さんと姫奈はやっぱりお似合いで、私の入るすきはない。
なんだかんだ話していると1階についた。降りるとすぐカフェの入り口が見える。
私はここに来るのは初めてだ。外に出ているメニューに目をやるとご飯も食べられるらしい。
ゆっくりカフェとして過ごすのもよし、しっかりご飯を食べるのもよし。
そして意外と人がいないという穴場。なんていい店なんだろう。
「ここね。蓮ちゃんとは来たことあるんだけど、女の子の友達といつか来たいなって思ってたんだ。私、花と仲良くなるまでこの世界で女友達いなくて……だから花とくることができてうれしい!
「姫奈……いいこ!!」
なんてふざけながらカフェに入ると……
「あ。」
「目立つ。」
私たちの目に飛び込んできたのは、DOTの2人と、メンズ雑誌の撮影だと言っていたRAINBOW4人の姿。
一緒に6人でご飯を食べてるみたいだけど、目立つ。
まぁ、ほっとんどこの店内には今人はいないけど、そのおかげかDOTは本当に目を引くし、RAINBOWは離れて見るとかっこいい。
「姫奈ね、DOTの2人より、RAINBOWの方がかっこいいって思ってるの!」
「そう?天さんと銀さんかっこいいじゃん」
「花は一番近くに入れるからそう思うんだよ」
「え?」
「姫奈ちゃん!花ちゃん!!」
ふいにこちらを向いた天さんと目があった?なんて思った瞬間、結構大きい声で名を呼ばれ、少ないお客様の目がこちらに向いた。
「天くん、声大きい」
「目立ってる、天さんってば。」
おーいと大きく手を振る天さんに手を振りかえすと姫奈と私は視線を浴びながらみんなの元へと向かった。