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犬とアイドルと友達と

 


「また連絡するね、花!」

「うん!」


 本日17時をもちまして3日間のお泊り撮影は終了となった。

 セットを組んでいただけはあり撮影はスムーズに終わりもうこのセットで撮影はない。まあスムーズにと言っても私以外は、だが。

あとは、何日か違う場所で撮影すれは完全に終了する。


「花ちゃん、演技よくなったよ!次あったらまた頼むよ」

「はい!」


 うれしい、自分にもRAINBOWとしてできることが増えている。うれしい!


「はーなちゃん!!」

「うわ、天さん?!」


 肩を組まれ覗き込まれる。

 あの日から天さんのスキンシップは確実に増えたんだけど蓮さんが言うには「本気か冗談かマジでわかんねえ」だ、そうなので私はあの天さんからの言葉は冗談だと思うことにした。


「もう、なんですか!」

「だって蓮と凛たちのとこ帰るんやろ?寂しいやん」

「もう、ほんとにどれがほんとか天さんまったくわかりません!」

「全部ほんまやで?人聞きわるい!」


 間近の推しは目の保養に最適。色々あったけどなんだかんだで楽しかった。


「また天さんは花にくっついてんすか!?まじで俺らの末っ子切れるんでやめてもらっていいすっか?」

「凜ここおらへんやん!」

「ついでに言うと長男もきれそうなんで離れてもらえます?」

「は?かなたもおらへ……」

「天さん、銀さんに連絡しといたので帰って怒られてくださいね?」

「かなた!?」

「かなたさん!!」


 蓮さんの後ろからひょこっと現れたのは、かなたさん。


「花ちゃん、元気してた?」


 天さんの腕を払いのけ私の両頬に手のひらを当て優しいいつもの笑顔で見つめてくる。


「ホームシックでした!!」

「ははっ!俺らも、蓮と花ちゃんいないの寂しかったよ」

「神ちゃんがかなた迎えに行った後俺らのとこ来てくれたらしいぞ」

「だからかなたさんがいるんだ!」

「凜とコウが鍋の用意してるよ。今日は5人で鍋にしような」

「はい!」


 頬からてを離すとくしゃりと頭を撫でてかなたさんは天さんの元へ。


「んで、天さん。蓮に聞いたんですけどうちの子にちょっかい出したんですって?ちゃんと銀さんには言ってますので」

「……オレかえって銀に怒られるってやつやな」

「はい」

「かなた、こわ」


 2人が話してるのを見ながら蓮さんが私の横に立つ。


「蓮さん、姫奈と帰らないんですか?」

「ん?御前な、さっきかなたの話聞いてたか?今日は5人で鍋っつったろ!鍋だし、みんなに久しぶりに会えるっつうのに、帰るに決まってんだろ!!」


 ったく。と私の頭に腕を置く。いつもの重みだ。姫奈もいるってのは忘れてないからにやける顔はどうにかなおして。


「もう、背縮みます!!」

「え?これ以上低くなると置きにくい。根性でその身長キープしろ!」

「無理です!!」

「蓮ちゃん、花つぶれる!!姫奈になら置いてもいいよ!」

「え?姫奈、ちゃんは背低すぎておけねえからやだ!」

「ひどい!!」


 この3日間でわかりました。

 初めてできたこの世界での友達を裏切ることはできない。姫奈はとてもいい子だから。私はこの子を大事にしたい。


 なので、蓮さんの事諦めようなんて急にできる事でもないけど、ゆっくりだけどスピーディーに諦めることにしました。


 もう、あんな胸の痛み、味わいたくない。

 

「花ちゃん、」

「はい?」

「デート誘っていい?」


 天さんがかなたさんから逃げてきて私の前に立つ


「え?あの、私でいいんですか?!推しからそんな事言われるなんて!!」

「花!!」

「花ちゃん」


 声の主たちを見るとにっこり笑顔でこちらに歩いてきたかなたさんと、私の頭に腕を乗せたまま眉間に皺を寄せている蓮さん。


「姫奈ちゃんとならいいんじゃない?花ちゃん」

「あ、はい。もちろん姫奈とは遊びたいですけど」

「わーい、花とデート!」

「いや、オレとは?!」

「とりあえず天さんは一度銀さんにしっかりと怒られてきてください」


 私をほったらかしのまま話す。

 頭の上の重みは変わらない、かなたさんも私の前に立って天さんと話してる。

 

 ああ。私って意外とRAINBOWに大事にされてるのかもしれない。

 何だろう、幸せです。


「花さん、蓮、かなた。そろそろかえりますよ?お2人共はしっかり監督さんたちに挨拶してきましたか??」


 時計に目をやった神永さんが私と蓮さんを見る。

 先ほど蓮さんに連れられ挨拶は済ませてきた。「大丈夫ですよ」と告げると、神永さんに車へと促されたので3人で神永さんの後を追う。


 3日間がほんとに終わるな、なんて思って歩いていたら、


「花ちゃん!」

「え?」


 手を引っ張られた?と思ったらたちまちよろけ、手を引いた張本人、天さんに寄りかかってしまった。


「ほんとにデート誘うから一回ちゃんとデートしよな?」


 顔を上げると、かっこいい顔で私を見て微笑んでる。


「ほ、本気ですか?」

「本気やで?あ。そうそう、蓮、かなた。凜に宣戦布告しといてや?」

「なんで凛太郎く、ん?!」


 今、頬に何か触れた。

 ……何かっていうか、私今、天さんにほっぺにチューされたよね?!思わず頬を抑える。


「ちょっと、天さん!!凜ブチ切れさせる気っすか!!」


 今度は蓮さんに手を引っ張られ、かなたさんと姫奈の元に戻る。


「姫奈、今、私」

「花!気をしっかり持って!!これ天くんのスキンシップだから!」

「姫奈ちゃんひどいなあ!オレ本気やのに」


 ああ、今の意地悪そうな顔可愛い。私この人に、推しに頬だけどキスされて……


「あ、鼻血」

「ちょっ、ティッシュ!!」


 姫奈が顔にティッシュを押し付ける。


「花、アイドル!!今一般の子はいないけど、アイドルが鼻血ダメ!」

「あっはっはっは!花ちゃん、かーわいい」

「……天さん、まじで銀さんに怒られてください。」

「まじで冗談か本気かわかんねえ」

「オレ演技うまいから!」


 微笑んだままの天さんに蓮さんとかなたさんが肩を落とす。

 ……やはり、今までのは演技で冗談、なんか?まあ冗談でもいい思い出に……


「花ちゃんの事は本気」

「え?」


 鼻にいまだティッシュを詰めているため隠しながら話す。


「どっちやと思う?冗談と本気、どっちがいい?」

「天さん!!」


 蓮さんとかなたさんの声がハモった。


「こーわーいー。ま、ええわ。ほらRAINBOWのマネージャー待ってんで」


 天さんが指指した方には車の窓を開け手招きしている神永さんの姿。


「はあ。迎えに来て疲れるとかなんなの。ホント。帰るよ、花ちゃん、蓮」

「じゃあね、花ちゃん。連絡するから」

「は、い」


 ティッシュで鼻を抑えている私をみて天さんは笑いながら手を振ってくれる。

 姫奈は、私にティッシュを渡してくれて、蓮さんとの別れを惜しむように手を振る。


「天さん、姫奈おつかれ様でした。蓮さん、かなたさん帰りましょ」

「御前なあ。」

「まったく。花ちゃん多分今日のほっぺにキス、凜とコウにばれたら説教されるから覚悟しておくように」

「え、そんなぁ!それなら黙っててくださいよ!!」

「さあて帰るか、かなた」

「鍋だし帰ろうか蓮」


 かなたさんが私の肩を抱いて歩き出す。

 え?!こわ!!黙っててくれない感じだよね、これ!!

 

 振り返れは爆笑している天さんの姿。

 ああ。この3日間、終わりまで大変だったな。


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