違う手のひらと演技と告白6
「姫奈の事、好きですよね」
よかった、ここに人がいなくて。私たち2人しかいなくて。
先ほどまで笑っていた蓮さんの顔が真面目な顔に変わる。
「…………なに?俺の事でも気になんの??」
じっと私を見つめた後、再び私をバカにしたような笑顔を浮かべて話す。
なんでそんな回答が返ってくんの?!この人!!
「んー、御前にちょっかい出すと凛たちがぶち切れそうなんだけどなあ」
「いや、蓮さん?!私の質問にお答えください!」
「御前も答えれば?俺の事、気になんの?」
こ、このやろう。そんなイケメンを絵にかいたような顔で見んなよー!!はいって言いそうになるじゃん!!この人、私をからかってるだけなんだから!!
その証拠に口元少し笑ってる。
「蓮さん!聞いてるんです!!私!」
「えー、だって御前それ姫奈に頼まれたんだろ?」
「……イエ、チガイマス」
「どんだけわかりやすいんだ、御前!!」
やっと頬から手が離れたと思ったら蓮さんお腹抱えて大爆笑。
そんなにわかりやすかったのか?
「花ちゃんって演技うまいと思ってたけど、演技以外はわかりやすいん?」
「え?」
振り返れば天さんと姫奈の姿。一気に血の気が引く。どこから居たの?どこから聞いてた?どこから見てたの?
「いつから居たんすか?」
「ん?花ちゃんの、違います、くらいからやで。ドア開けたら蓮爆笑してるしビビったわ。なあ、姫奈ちゃん」
「うん、どしたの?蓮ちゃん、花」
「こいつの演技が面白かっただけだよ」
はあはあと笑いすぎたのか肩で息をする蓮さん。そんな笑う?!
「蓮さん、ひどいです」
「うっせ、もう少し演技力身につけろ??」
「カメラまわればちゃんとします!!!」
「普段ももう少しがんばれな?」
蓮さんは腹減った、と置いてある料理を取りに行く。まったく!!
「花」
「あ、姫奈。ごめんね、聞いたんだけど答えもらってなくて」
「あ、聞いてくれたんだ?ありがとう!また答え待ってるね!」
「ヒーナちゃん。今やったら誰もおらへんから蓮にくっついてもええんちゃう??」
天さんが私の肩を抱き寄せるように組んだかと思うと姫奈に声をかける。天さんの言葉を聞いて姫奈の顔は先ほどとは比べ物にならない笑顔に変わる。
「あ、そっか!行ってきます!!蓮ちゃん!!」
走ったと思った机にご飯を置いた蓮さんに抱き着いた。そして「あぶねえだろ!!」と怒られてた。
「花ちゃん!」
「はい?って、天さん、近い、近いです!!」
2人を見ていたんだけど急に目の前に天さんの顔がドアップで現れる。推しのアップに心拍数急上昇。
「飯食べへん?一緒に!」
「あ、はい。って、4人で食べるものだと思ってました。」
「ん?あれ、邪魔できひんやろ?」
指差す方には蓮さんと姫奈。楽しそうに食べている。
姫奈が羨ましい。ぐっと拳を握る。
「そう、ですね」
にこと笑顔を貼りつける。ここだ、ここでさっき蓮さんが普段も演技がんばれって言った。
“演技”ならできる。さっきも監督に怒られながらも褒められたもん。
「天さん、ご飯食べましょ!」
「花ちゃん、蓮好きなんやろ?」
「は?!」
「あ、大正解なん?やっぱり。」
歩き出そうとしながらも思いきり振り返った私を見て天さんは目を丸くしている。天さんに、ばれて……まさか姫奈にも!!
「あー、安心し。姫奈ちゃんは知らへんよ。さ、ご飯取りに行って話しながら食べよか」
ど、どうしてばれたんだ。そんなにわかりやすいのか?私。だめだめ、姫奈を傷つけるわけにはいかない!!
どうしたらいい?天さんに黙っててくださいっていえばいいよね?天さんなら笑顔でわかったって言ってくれそうだし……姫奈と蓮さんにはばれちゃいけない。
帰ってコウキくんに言わなきゃ。私の不注意でって……
「花ちゃん!顔こわいよ?」
「え?あ。」
ご飯をいつ器に入れたのかも、いつ席に座ったのかもわからない。気が付いたら天さんが眉を下げて首を傾げて私を見ていた。
「すみません」
「ええって!まあ。女の子は笑ってた方がかわええよ?」
アイドルスマイル全開で私にから揚げを差し出す。
「はい、食べて?」
思わずそのままから揚げを食べる。いつもなら倒れそうなほど発狂してしまう場面だが、今はそんな事にはならない。
天さんに口止めしなきゃ。
「花ちゃんが蓮好きなんは黙っててあげるから安心し?」
「え、本当ですか」
「オレそんな事ベラベラ話したりせえへんよ。まあ……花ちゃん可愛いから特別やな!」
「天さん……大好きです!」
「このタイミングやなかったらもっと嬉しいんやけど、ファンがファンのまま気持ち伝えてくれるんもうれしいからええわ!許したる」
「天さんってホントにいい男ですね!」
知っとったやろ?オレのファンなんやし!と得意げに言う天さんはホントにかっこよくて可愛くてファンでよかった。