違う手のひらと演技と告白5
「お疲れ様でした、本日の撮影はこれで終了です。明日は朝早くから撮影なので早めに今日は終わります。」
スタッフさんの声を聴いて張りつめていた糸をほどく。やっと一日終わった。
姫奈の頼まれごとも聞けてない。ああ、非常に疲れた。
「花、飯食いに行くぞ」
「蓮さん」
「疲れたろ。夜も遅いし一緒にいってやる。やさしい、俺!」
「自分で言うんですね」
歩き出す蓮さんの後ろを追う。
ご飯は仮設に立てられた小屋?部屋?にあるのは知ってる。お昼もそこだったから。
蓮さん、姫奈、天さんが食べているときは誰もそこにいないようになってるから居心地はとてもいい。
「蓮さん、蓮さん。」
「なんだよ」
「ひ、姫奈誘わなくていいんですか?」
「はあ?」
小声で聞いてみる。何言ってんだこいつって目で見られてるけど、蓮さんは私の小声は確実に聞き取ってくれるから嬉しくなる。
「あいつは天さんに飯連れてきてもらうように頼んだから」
「天さんに?」
「ああ。俺、御前守るようにかなたからもコウキからも言われてっから。凜にはうるせえほど言われてるんで!」
「え」
みんなに言われたから私守って一緒にいてくれるの?ほんとに、そんな……
「なんて、うそ。」
「はあ?!」
「声ひっく!!」
思わず地を這うような声が出てしまった。
「姫奈……ちゃんも天さんにも声かけたんだけど2人の撮影の事で監督に呼ばれててまだ行けそうになかったから天さんに後できてくださいってお願いしたんだよ。」
「あ、なるほど。」
聞く?いま。姫奈のお願い事……聞く?聞きたくない、ほんとは。でも姫奈に頼まれた。
姫奈の事も、好きだから。あんなにいい子だから。
「あの、蓮さん。」
「何?御前、今日めちゃくちゃ俺の名前呼ぶな。みんながいなくて寂しいのか?」
聞こうとしたんだけど振りかえってそんな優しいまなざしで見つめられたら……そんなことより!なんて話変えられないじゃん。
「そ、りゃ寂しいですよ??かなたさんの優しい笑顔見れないのも、コウキくんのいじわるを見られないのも、凜太郎くんのあのおいしそうにご飯食べる姿も見れないので!」
「へえ。でもまあ、残念ながら俺と天さんしかここにはいねえから俺らで我慢しろ」
にやっと笑って仮設の部屋へと入る。おいしそうな匂いがドアを開けた瞬間から漂ってくて、私も少し急ぎ足に中へと進む。
「て、天さんと蓮さんしかいないから我慢しろって、お2人我慢します、なんて言えません!むしろ恐れ多いです、そんな2人に構ってもらえるのは!!それに蓮さんはいつも構ってくれてますので!」
「へえ、意外とかわいい事言えんのな、御前」
「その言い方なんですか、それに意外は余計です。っう!!」
ぐいと両頬を引っ張られる。なんで蓮さんと凜太郎くん、私の頬引っ張んの?頬引きちぎりたいの?!痛くはないけど、いつかビロンって垂れそう。
「ああ?俺が可愛いっつってやったのに不満なのかよ?」
「いえ、不満ではありまへん」
頬を引っ張って遊んでる蓮さん。そんな可愛い顔で私の目の前で笑わないでください。
私、あなたを諦めなきゃいけないんです。
「蓮さん、姫奈の事好きですか?」
「は?」
私の頬を引っ張る手が止まった。