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違う手のひらと演技と告白2


「花!支度できてるか?」

「あ、も、もうすぐ!!」

「飯食う時間なくなんぞ―!」

「花ちゃん、今日はサンドイッチだよ」

「かなたさんのサンドイッチ!!すぐ降ります!!」


 今日からドラマ撮影開始。私と蓮さんは優雅に食事をしているかなたさん、コウキくん、凜太郎くんを横目にバタバタと支度している。


「蓮さん、支度は?!」

「え?別に、泊まりこみのロケなんて慣れてるし、持ってくもんなんて最低限でいいだろ」


 連さんも椅子に座りサンドイッチを頬張る。……バタバタしてたのは私だけみたい。


 実は今日から撮影に入るのだが、大きい倉庫にいくつもセットを立てて外や中で撮影するため3日間そこに泊まり込むことになっていた。

 

 まあ、家から遠い場所ってこともあってだけど、主役の蓮さん、姫奈、そしてトップアイドルの天さんが毎回生き帰りで疲れてしまうとほかの仕事にも支障がでて困る、ということも一つの理由らしい。

 んで私もそれに便乗しお芝居の研究という名目でお泊りになったのだが。 


「最低限って、どれくらいをいうんですか?」

「花ちゃんはそれの量は持っていきすぎ」


 サンドイッチを私の前に差出してコウキくんが私のパンパンに物が入ったリュックと肩掛けかばんを叩く。

 

「とりあえず食べな?」

「うん」


 コウキくんの手からサンドイッチを受け取りひとまずお腹の中へ。


「花、そんなに荷物いる??」

「なに?2週間とかだっけ?泊まり」

「んにゃ3日」

「いらないでしょ、花ちゃん。こんなに」


 4人にあきれた声で言われる。だって泊まりの撮影なんてはじめてなんだもん。

 サンドイッチを口に含んでいるため反論はできないが目で訴える。


「別になに忘れたっていいだろ。姫奈もいんだから借りろよ」

「あーそうだね、そうしなよ。そしたら花ちゃんの荷物の負担かるくなるだろ?」


 姫奈はいい子だと思うけど、借りるとか複雑。口の中のサンドイッチを飲み込む。


「いいんです!備えあれば憂いなしですから!」

「ねえ花、オレと約束して。」


かなたさんと蓮さんと話していたらサンドイッチを持ったまま凜太郎くんが私の前に座る。あれ?むしろみんな集まってるし。


「何?天さんの事?」

「うん」

「私の推しだってことはもう覚えたよね?凜太郎くん。そこ踏まえての約束にしてよ?」

「……天さんの部屋で2人きりにならないこと。これ守ってくれたらいい」


 約束して、と怒られた犬のように私の顔を見る凜太郎くん。何をそんなに心配してるんだろうか。

 推しだからといっても、節度は保ちます。

 

「そんなこと言われなくてもしないし、そういうことにはならないよ。連さんもいるし。ですよね、蓮さん」

「凜がしょぼくれるから、俺がちゃんとするよ。」


 蓮さんがぐしゃぐしゃと凜太郎くんの頭を撫でる。・


「でも花ちゃん。ほんとに天さん、女ったらしだから気を付けるんだよ?」

「かなたさんまで!大丈夫ですよ!推しと2人きりなんて私の身体が持ちません!!多分鼻血でます」

「花ちゃん、一応トップアイドルの前で鼻血はやめといてね?」

「あ、はい。と、いうことで凜太郎くん」


 座り直し姿勢を正して、私は小指を差し出す。


「指切りしよ!部屋で2人きりにはならない、大丈夫。」

「おう、ならいい!」


 小指を絡める。おお、男性とこんなことしたのは初めてだ。


「さて、もうそろそろ蓮と花さんを連れてってもいいです?」

「あ。」


 神永さんが時計と私たち5人を交互に見つめる。


「蓮、花さん、時間をご覧ください」

「……やば。花!用意」

「あ、はい!!」


 時計を見れば出発時間ぎりぎり。私と蓮さんは先に車へともかった神永さんに続く。


 靴を履いて3日間会えないみんなの顔を見つめる。


「いってらっしゃい。蓮、花ちゃんよろしくな」

「おう、まかせろ」

「がんばってね、花ちゃん、蓮くん!お土産よろしく」

「へいへい。コウキに言われるまで土産なんて頭から抜けてた」

「蓮くん、蓮くん!花のこと守ってよ?」

「ん?おお、何回言うんだよ、凜。大丈夫だっつうの!」


 蓮さんが笑いながら私の肩掛け鞄を持ち上げる。


「あ、ありがとうございます。」

「重っ!持つんじゃなかった」

「ああ、ひどい蓮さん!!」

「花、いってらっしゃい。何かあったらオレに電話して!すぐ行くから!!!」

「うん、行ってくるね、凜太郎くん!かなたさん、コウキくん、行ってきます!」


 蓮さんが玄関も開けてくれる。朝日に当たる蓮さん、かっこいいんですけど。


「いくぞ、花!じゃあな、行ってくる!!」

「んじゃ、3日後に!!」


 私は楽しさと不安をかかえたまま、3日間の撮影へと向かった。


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