甘いチョコと新たな仕事5
「花ちゃん」
「え?あ、コウキく」
「大丈夫?」
私の言葉を遮りくいぎみで小さい声で話しかけてくる。
「これ、結構つらくない?」
内容を指差される。思わずコウキくんの服の裾を掴み、何度も頷く。
「あ、やっぱきついんだ」
うんうんと、頷く。姫奈と蓮さんがラブラブなのをプライベートでもみてドラマでも見るとかなんの拷問だろう。
蓮さんの言葉に「出る」って言ったけど、なぜ考えなかった、私!!
「あれ?花、どうした。コウキの服なんてつかんで」
蓮さんが不思議そうに私の顔を見る。御前のせいだ、とも言えず、スッと目をそらす。
「ドラマが不安なのか?俺がいるって言ったんだろ。それに御前、姫奈と仲良いんだろ?姫奈もいるし、この前天さんともあってる。緊張することはねえよ」
ああ、わらった顔がかわいい。って!だめだ、これ以上惚れるな、私!!
姫奈と蓮さんの本気なのか冗談なのかわかんないような、いちゃいちゃしてる姿を見るんだぞ!!いや、まあ今までも見てるけど。
「……花」
「ん?」
私の服を後ろから引っ張ったのは凜太郎くん。
蓮さんを見つめてたらやばかったから、凜太郎くんに話しかけられてよかった、私はすぐにそちらを向いた。
「なんかあったらすぐオレに電話すんだぞ」
「なんかって、何?」
「だから、天くんになんかされたりとか!!」
「なんかって……ぶっちゃけ推しなのでちょっとなら何かあってもいい!」
ぐっと、拳を握る。これは本心。
推しだよ?最推しだよ?推しにもし「手つなぐ?」とか笑顔で言われたらファンは発狂するほど喜ぶものだ。私は喜ぶ!!
「は、はあ?!何かあってもいいとか、だめに決まってんじゃん!!」
「え?いや、そんな、なんか変なこととかではなく……」
「オレが嫌」
「はあ?」
ぶすっと頬を膨らまして私から目をそらす。駄々っ子か!!
「なんでそんな拗ねてんのよ!ほら、チョコ食べなよ」
「いらない。花がさっきの言葉訂正するまで花からのチョコは食べない!」
「このっ……だいたい天さんだよ?私を相手にする前に、姫奈にいくかもしんないじゃん!!」
そうだよ、姫奈の方が女優さんで、綺麗で可愛くて、蓮さんの彼女で……あ。心折れそう。
「姫奈ちゃんは蓮くん、いんだから大丈夫にきまってんじゃん!!」
「私だって、蓮さんに姫奈のついでに守ってもらえばいいじゃない!!天さん推しだから守ってもらわなくてもいいけど!!手ぐらい繋いでみたいわ!!」
「だから、それがだめって言ってんの!!」
私と凜太郎くんの会話に終わりが見えない。
「凜、花ちゃん、ちょっと落ち着こうか?ね」
かなたさんが私と凜太郎くんの肩に手を置き、あの優しい笑顔を向けてくる。
「だって、花が!!」
「凜太郎くんが悪い!!」
「子供みたいだね、2人とも」
コウキくんが可愛い顔してチョコをくわえている。
むしろ、コウキくん可愛い。
「つうか、凜。なんでそんなにいやなんだ?天さん」
「え?みんなだって知ってんじゃん、天くん女の子大好きなんだよ??花が食われる!!」
「え?推しに食べられるの?ちょ、想像させないで」
「すんなよ!!」
眉間に皺を寄せてる凜太郎くんに両頬を引っ張られる。危ない、この痛みがなかったら変な妄想するとこだった。
「蓮くん!花も姫奈ちゃん同様に天くんからまもってよ?!」
「えーどーすっかな」
「蓮くん!!」
いまだに和あたしの頬を掴んだまま凜太郎くんは蓮さんと話し、コウキくんは笑いながらいまだにチョコを食べている。
かなたさんは、軽く頭を抱えているようにも見える。年上は大変だ。
……そろそろ、ほっぺた痛い気がする。と、おもった瞬間、いつもの手のひらの重みが頭に振ってきた。
「わかった、わかった!わかったから!」
蓮さんは私の頭に手をのせ撫でてくれ、凜太郎くんに、頬の手を離すようにもうながしてくれた。
「凜が怒るなら天さんから花も守ればいいんだろ?つうか、言われなくても守るよ。」
「蓮さん」
きゅんとしてしまったじゃないか、この天然色男!!あ、ぴったり、このネーミング。センス抜群、私!
「そうそう、だいたい天さんと共演なんだから、俺からも蓮には花ちゃん守ってって言おうとしてたし!大丈夫だよ、凜」
「うん」
子供のように凜太郎くんが頷く。ほんとこういうとこは可愛いのに。




