甘いチョコと新たな仕事2
「どうした?花」
「うわ」
急に視界に凜太郎くんの顔が現れ思わす顔を上げる。私がうつむいてたのが気になったのか覗き込んできたらしい。
「コウキくん、花いじめた?」
しゃがんだままコウキくんを見つめる凜太郎くん。
「まさか!凜じゃないし、おれはいじめません」
「オレ、花いじめてないし!」
しゃがんだままの凜太郎くんは拗ねる大型犬。
「私が食べたかったチョコ食べといて、いじめてない、じゃなくない?」
私の言葉にハッとしたのか立ち上がりチョコの山に向かったと思ったら
「花、あげる」
帰ってきたときには手に山盛り、いろいろなチョコ。
「ふふっ、ありがとう!」
「おう!」
凜太郎くんが照れくさそうに笑い私にチョコを差し出す。
「凜かーわいい」
「コウちゃん、オレはかっこいいの!!」
「かわいいじゃん、手に沢山のチョコ。子供か!」
「ちがう!かっこいいの!!」
かわいらしい言い争いに私の顔まで笑顔になっていたのだろう。さっきまで泣きそうだったのになんて性格してんだほんと。
「花は笑ってた方がかわいいよ」
「え?」
思わず固まる。
「だから笑ってろ。オレが笑わせてあげる」
そういって微笑む顔はさすがアイドル。男前。
「……凜太郎くんってやっぱりかっこいいね。いつもかわいいのに」
「凜ってバカなことしなくて、そんなことばかりいってたら本当にかっこいいのに残念だよね」
「ひどい!コウちゃんも花もひどい!!」
ひどい、もうしらねーと私の隣の椅子に腰かけ私の為といって持ってきたチョコは凜太郎くんの口の中へ。
……ていうか、ちょっとドキドキしてしまったじゃないか。あーびっくりした。
「凜、花ちゃん口説いてるみたいだった」
「え?そう?」
コウキくんと凜太郎くんが私を挟んで話し出す。
「凜って、あんな感じで女の子口説くの?」
「はあ?コウちゃん何言ってんの?オレ伊達に恋愛ドラマで主役はってないよ?口説くならもっとがっつり口説く!」
「んじゃ、あれは口説いてないの?」
「え?オレの通常運転」
私を挟んでなに言ってんだこいつら。
「なに?凜でも女口説くのか」
「あ!」
急に肩が重くなったと思ったら耳元近くで声が。だめ、この近さでこの声聞いちゃ……
「蓮くん!」
「おいしい?チョコ」
「かなたくんも!終わったの?」
「うん」
話しかけてきたのはかなたさんと蓮さん。蓮さんに至っては私の肩に手を置いている。
緊張するな、いつもの事だ。
蓮さんは、私を肘置きにつかってる??というほど、手や腕を頭や肩に置いてくる。一度「なんで置くんですか?」と聞いたところ「身長が丁度いい。」と言い切られ、最近では「姫奈より置きやすい」と私が喜ぶことを言ってくれた……って、そんなことで喜んじゃダメなんだけども。
平常心を装うため凜太郎くんが机に置いていたチョコを袋を破り掴む。
「あ。花、くれ」
「え?」
横を向けば、あ。と口を開ける蓮さん。……た、食べさせてもいいのでしょうか。
「早く!甘いもん食いてえの。」
「蓮くん、花からはなれてよー!」
「別に花、凜のものじゃねえだろ?俺はまだ手拭いてねえからチョコ掴みたくねえの。花早く。お前の手ごと食うぞ」
「はい!」
おとなしく蓮さんの口にチョコを入れると、私の肩から手を離し身体を起こす。
「あ、うまこれ!かなた、まず食ってから撮影しようぜ?」
かなたさんと蓮さんがチョコ物色に向かう。私はといえばドキドキする胸を抑え呼吸を整えようと必死。
ちらとコウキくんを見れば、お腹をかかえて笑ってるし、凜太郎くんはぶすっとしたままチョコをまた食べ始めてる。
ああ、なんか大変!早く撮影に入りましょう。




