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甘いチョコと新たな仕事


 私は姫奈ちゃんに遊びに誘われたり、一人で雑誌の取材などをこなしたりしてた。

 蓮さんへの気持ちは錯覚だったってこともなく毎日必死に抑えることにも気を張ってた。

 次第に季節は秋から冬へと変わり11月に入った、という頃。

 私と凜太郎くん、コウキくんは夢のような場所にいた。


「し、幸せって、これなんだね!!」

「これ食っていいの?終わったら食うよ??」

「あの、これ持って帰ってもいい?いや、マジで!!!」


 そこにはチョコレートの山。

 板チョコのCMなんだけど、周りには甘い匂いが漂ってて、そのメーカーのチョコで作ったチョコレートケーキとか、ホワイトチョコ、ミルクチョコで作ったトリュフとか、もうなんだろう、チョコ好きにはたまらない空間。


「ああ、幸せ!!」

「これ、かなたくんと蓮くんもここにいたらテンションあがってるよね、絶対」

「蓮くんとかなたくん、しかたねーじゃん?どうしても収録もCM撮影もこの日だったんだから。先に撮って全部食べてやる」

「凜、蓮くんに怒られるよ?あの人甘党なんだから」


 ホントは蓮さん、かなたさんも一緒の時間に入る予定だった。収録が重なり後から合流になるらしい。


 当初蓮さんとかなたさんがゲストで出る番組はCM撮影日とは日にちが違ったんだけど、神永さん曰く「大人の事情により日にち変更」といわれ、蓮さん、かなたさんは今日のCM撮影に来られるのは他の収録後。


 私と凜太郎くん、コウキくんは今日はこの撮影だけなので今からテンションはマックス。ちなみに、蓮さん、かなたさんは、「収録よりもCM撮影がいい、チョコ!!」と、私たちを羨ましそうに見て肩を落として収録に向かった。


 RAINBOWはみんな甘いものが大好きだから。


「花ちゃん、おいで」

「うん」


 コウキくんに呼ばれて3人でカメラの前へ。

 今回の撮影は

 

 凜太郎くん、コウキくん、私の元気組で1本。

 かなたさん、蓮さん、私の大人のお兄さん組で1本。

 あとはRAINBOWで和気あいあいと1本。計3本の撮影です。


「おお、楽しい!」

「凜!もっと綺麗にしなさいよ!」

「でもはじめてにしてはうまいよね??」


 3人でチョコを溶かして型に流し込む。

 チョコのCMなもんだから自分たちでも作ってるんだけど、コウキくんは丁寧、凜太郎くんは大雑把……いや、豪快、といおう。


 楽しく年下組のCM撮影を取り終え、3人でかなたさん、蓮さんの到着を待ちながらチョコを食す。


「うま、これ、うま!!」

「花ちゃん、これもおいしい」

「どれ?」


 コウキくんが「はい」と渡してくれたので私は自分が持っていたトリュフを後回しにして渡されたものを先に食べる。


「あ、おいし」

「でしょ?おれこれ好……あ。」

「え?っ!?」

「うま。」

「り、凜太郎くん、今」

「は?花がそれ持ったままだったから食べた」


 悪気もなく「うまい」ともぐもぐしている、凜太郎くん。

 この男、人の指ごとチョコ食べた!!


「凜、一応花ちゃん女の子だからね?指ごと食っちゃだめでしょ」


 指に軽く歯が当たった感覚が残ってる。

 

「チョコも花の手もおいしそうに見えた」

「な、に言ってんのバカ!!」


 それだけ言うと再び凜太郎君はチョコの物色に。


 はっ!!きょろきょろとあたりを見前わす。蓮さん、いないか、よかった……って。諦めるつもりなのに……別に蓮さんも今のを見ても何も言わないだろうし、笑うだけだと思う。でも……


「よかったね、蓮くんいなくて」

「え?」


 ふいにコウキくんがチョコを食べている凜太郎くんを見たまま言う。


「花ちゃん、蓮くん好きでしょ」

「コウキくん?」


 スタジオはスタッフさんたちの声や音で結構騒がしい。それにコウキくんが小さめな声で話してくれるからここの会話は2人しか聞いていない。


 やばい、ばれてる。抑えようって思ってたのに。ゆっくりとこちらを向いたコウキくんの顔は


「なんで笑いこらえてんの?」


 今にも笑いだしそうな顔だった。


「だって、ばればれなんだもん!」


 言葉と共に笑い始める。


「……怒らないの?同じグループだよ?」


 恐る恐る聞いてみる。アイドルとしてどうなんだ、自分!!なんて何回も言い聞かせてるのにやっぱり目で追ってる自分がいる。


「怒んないよ、おれは。人好きになるのって止められるものじゃないし。」

「……コウキくんも好きな人いるの?」

「ん?まあ、ね。おれも男の子だから」


 私から目をそらして凜太郎くんを見つめるコウくんはさみしそうに笑う。


「コウキく……」

「ま、蓮くんには姫奈ちゃんいるから花ちゃんの恋が実るかわかんないけど、一人で悩むよりは人に話した方がいいから話ぐらいは聞いてあげるよ?」


 私の言葉を遮って話し。次にこちらを向いた顔は、いつもの人をからかって遊ぶ時の顔になっていた。


「うん、いちおう諦める気なんで、諦めるためにお力おかしください」


 深々と頭を下げれば、ぽんと手の感触。


「一人でよく頑張ったね」

「うん」


 いい子と頭を撫でるその手はとても優しくて不覚にも泣きそうになってしまった。


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