夢と女優と最大の推し6
「はーい、姫奈ちゃん、花返して―??」
「ちょ、凜太郎くん!!毎回毎回なんで私の上に乗るの?!」
またも凜太郎くんが私の背中に乗り抱える。体重はあまりかけてないっぽいけど、やはり私の身体じゃ体の大きな凜太郎くんは重い。まあ、男に背中のられて重くないってのもおかしな話。
「え?だって乗りやすいから?そこに花の背中があるから?」
「なんで疑問形なのよ!」
「わかんない!」
横を向けば凜太郎くんの顔。……もう、そんな笑顔で、「なに?ダメ?」なんて言われたらことわりにくいじゃん。
「凜くんと仲いいんだね、花」
「え?」
「付き合ってんの?」
「は?」
姫奈の言葉に凜太郎くんと声がハモる。
いやいやいやいや、私が多分好きになった人はあなたの彼氏……って!、気づかないふりしてたのに!
姫奈の言葉で、蓮さんの事を自覚してしまいそうな自分に、そっと喝を入れる。だめ、気づいたら負けだしこれ以上目で追うようになったら困る。
「花?どうしたの?」
「え?」
「なんかすごい顔」
姫奈が不思議そうに私を見ていて、蓮さんとかなたさん、コウキくんにも見つめられてる。
「……そんな変な顔してました??」
「うん。」
コウキくんがきっぱりとうなづく。「なんかもう、不細工だった」と、一言余計な言葉までいただいた。
「不細工で悪かったな」
「いや、いつもはかわいいよ?花ちゃん。たまにすごいかわいくない」
「コウキくん、けなしたいの?フォローしたいの?なんなの?」
凜太郎くんはいまだに背中にいるけど、コウキくんのおかげで話がそれた。
「なあ、いい加減俺帰りてえんだけど?」
「え?!蓮ちゃん、帰るの?」
姫奈が蓮さんの前に移動し座り込む。「せっかく久しぶりに会えたのに」とわかりやすいほど落ち込む姫奈さんはホントに可愛いと思う。
「蓮、おれら先に帰るから、姫奈ちゃん送って帰ったら?」
「え?あーうん。姫奈送ってやろうか」
「うん!!」
見つめあう二人。うっ……胸が苦し。
「はーなちゃん!」
「うっ!何?」
コウキくんに両頬を挟まれ押しつぶされる。
RAINBOWは人の頬に恨みでもあるんですかね??
「かえろっか、4人で!」
「へ?」
「かえろ、花」
コウキくんがそういうと、後ろの凜太郎くんも言う。
自分から帰りたい、なんて言えない私は2人のこの言葉がうれしい。
「ほら、凜。花ちゃんから降りて!帰れないでしょ!!帰る準備!!」
「へーい」
私の上からはなれた凜太郎くんが自分のカバンを持つ。
「かなたくんも帰る?」
「うん」
かなたくんも私もコウキくんも鞄を持ちドア付近に。
「じゃあ、蓮さん、先帰ってますね。じゃあ、姫奈もまた」
「あ、まって!連絡先!!」
あ。と携帯をとりだそうとした時。コウキくんに腕を掴まれた。
「コウキくん?」
「おれお腹すいた!早く帰りたい」
「わがままか!!」
「オレもー」
凜太郎くんが「かなたくん、かえろー?」とせかす。
コウキくんに至っては、「行くよ」と、私の腕を引っ張る。
「あ、じゃあ蓮さん、姫奈に連絡先教えといてください!!」
「じゃあな、蓮くん、姫奈ちゃん」
「ばいばーい」
「じゃあ先帰るよ、蓮。姫奈ちゃんもばいばい」
「あ、ちょっと!!」
姫奈ちゃんの声に反応する暇もなく。コウキくんに引っ張られ楽屋をでる。
そのまま4人で駐車場に向かうと、家へと帰路につく。
車の中で、楽しそうなみんなの話をきく。騒がしい車内は今の私には好都合。
蓮さんと姫奈の事を考えずに済むから。
……いまならまだ間に合う。
大丈夫、好きかも、なんて自己暗示みたいなものでしょ。好きだと言ってしまえば好きと思うだけ。
大丈夫。私が蓮さんを好きかも、なんて思うのは今日この瞬間で終わりだから。
◇◇◇