夢と女優と最大の推し5
「蓮ちゃん」
「姫奈」
蓮さんが扉まで迎えに行き、そそくさと中に入れる。
蓮さんの肩くらいの身長でとても細い。かわいい。蓮さんを見上げて話す山名さんの横顔は綺麗だった。
「お疲れ様です、みなさん!」
蓮さんの顔をみてお互い微笑んだ後、私たちの方に向き山名さんはそう言って頭を下げた。
「姫奈ちゃんもお疲れー」
「かわいかったよ、姫奈ちゃん」
「なんか久しぶりだね?」
「皆さんと会うの久葦ぶりだから会えてうれしかったですー!!」
屈託のない笑顔でかなたさんたちに近づいて話し始める。
蓮さんは山名さんの横に座って口元に笑みを浮かべて彼女を見ている。蓮さん、あんな顔で彼女の子と見つめるんだ……
うっ、胸が苦しい。
「姫奈、花になんか話あんだろ?御前のせいで俺らかえれねえ、はやくしろ」
「あ、そうだよ、花さん……って、蓮ちゃん、髪」
言い方はいつもの通りなんだけど、山名さんの髪を指で弄びながら蓮さんは話す。私の髪にはそんな風に触れてくれたことないのに。って、何思ってんだ、私は!
「あの、山名さん、なにかお話があるのでは……?」
「あ、そうなの!!ヒナね、花さんとお友達になりたいの!」
「え?」
思わず素で、え?って言っちゃた。
「花ちゃんと友達になりたくてここまできたの?姫奈ちゃん。」
「そうですよ!蓮ちゃんから花さんのお話聞いてずっとあってみたかったし仲良したかったの!!」
かなたさんの問いかけに屈託のない笑顔でいいきる山名さん。
そんな彼女を見つめているとコウキくんと凜太郎くんが私を見る視線に気づいた。
「なに?」
交互に2人の顔を見つめる。
「べーつに?花ちゃん、どうすんのかなって?」
「どうすんのって……断る理由はない……よ?」
「ふーん」
コウキくんが目を細めて私を見てくる。
なによ、何かあるなら言いなさいよ!
「花が友達になりたいなら、オレはいーと思うよ?」
凜太郎くんが机に突っ伏し、顔だけ私に向けて眠そうに話す。
「んでも、オレは花と遊びたいから姫奈ちゃんと友達になってもオレ優先ね?」
あまりにも自分勝手でかわいらしいお願いに肩の力が抜ける。あれ?抜けるほど力入ってたのか、私。
「……んじゃ、凜がそんなわがまま言うなら、おれもいっちゃおっと!おれも優先がいいな。んで、服買いに行くならおれと行くこと!これ守ってくれるなら、おれもいいよ、姫奈ちゃんと友達になっても!」
「……あははっ!ばかじゃん、凜太郎くんも、コウキくんも!何そのわがまま!可愛い!」
「オレかわいいよりかっこいいがいい!!」
「おれの方が、凜より可愛いよね?!」
2人が爆笑している私の肩を揺らす。
あーもう、なんか、うん。落ち着いて息を直す。
「私でよかったら、仲良くしてください」
断れるわけないし、蓮さんの彼女に向かって、「なんかもやもやするので仲良くできません」なんて言えるわけがない。
「ホントに?ありがとう!うれしい!!蓮ちゃんの言った通り花さん優しい!わたしの事は姫奈でいいから!!同じ歳だもんね」
「あ、う、うん、姫奈」
なんか勢いに圧倒されてしまう。蓮さんは「アホだわ、姫奈」とかなたさんに愚痴ってる。
「この業界の話とか恋の悩みとか何でも話してね!!あと…相談にのるから蓮ちゃんが浮気したら教えて!」
「え?」
「姫奈!花に変なことさせんじゃねえよ!」
「蓮ちゃんうるさい!!心配なんだもん!!」
私の手をぎゅっと手を握ったまま蓮さんと言い争う。
「ちょっと、話がそれたけど、仲良くしてね、花!」
コホンと咳払いをして私を見つめたと思うと、かわいらしい笑顔を向けられる。
なんて人懐っこい人なんだろ。蓮さんはこういう、人懐っこい人が好きなんだろうか。
こういう、かわいらしいのに。嫌味っぽくない、そういう人。




