夢と女優と最大の推し2
「RAINBOWの皆さんです!!」
「こんばんは!」
本番がはじまれば、みなアイドルモードON。私もみんなにフォローされながらも会話に混ざる。
前よりは緊張しなくなったかな、テレビ出るのは。
まあ、いまだに私の加入に反対の人たちは多いけど、いつか頑張って私も4人のように認めてもらえたらいいな、って思えるくらいにはなってるから私は成長したと思う。
「ではみなさんにはまた後でに歌っていただきますので、そこの席でお待ちください!それじゃ、次の曲行きましょう」
今から歌う人のイントロが流れると私たちは組んであるセットの長椅子へと腰掛けた。
「花ちゃん、緊張は?」
「いつもよりはましです」
「そ、よかった」
かなたさんと笑いあう。そんな時不意に衣装を引っ張られたような気がした。
何?確か多分横にいたのは……
顔を向けてみれば、可愛いらしい顔の女性の姿。……この人、さっき、挨拶行った!!女優の山名 姫奈さん。確か同じ歳で可愛い女優さんいるとかって友達が言ってたような。
自分のドラマの主題歌を謳ったらそれがヒットしたとかで、今日の番組に出演してるらしい。
RAINBOWでは、かなたさん、蓮さんがドラマで共演してたはず。
CMは見たことあるけど、ドラマはこの人のは見たことないな……
「な、なんですか?」
本番の最中に話すのもなんか、だめな気がするけど一応小声で話しかけてみる。
すると、ぱっと、笑顔になる。あ、さすが女優さん……かーわいい、この人。
「あとで、お時間いただけます??」
「え?」
本番に差しさわりのない声で言い、にっこりと笑ったまま私を見つめている山名さん。
え?何?呼び出し?!こんなかわいい子に私、何かされたり……って、そんなわけない。漫画の見すぎだな。
「今日はお時間ないですか?」
眉が下がる。……私が男なら惚れているかもしれない。少し悲しげな顔も可愛くってさすが女優さん。
「あ、いえ、時間はあります……」
「ほんとに?なら収録終わりに楽屋に行きますね」
「あ、はい」
柔らかい表情に自分もつられて微笑んでしまう。ホントに可愛い人だな……
その後私たちの前に山名さんの出番で歌を聴く。
柔らかい歌声は心地がいい。
「耳にいいなあ、山名さんの曲」
結構アップテンポの曲なのに、聞きやすい、耳に残る。こんな風に歌えるともっと楽しそうだな……
「そんなリラックスして、次歌う番だけどへーきなの??」
凜太郎くんの言葉に、わざとらしくにらみながらそちらを向く。
「リラックスも大事!これ以上緊張させないで、ばか」
小声で文句を言った後、凜太郎くんの足を叩く。
「しっかり聞きなさいよ、末っ子ズ」
「はーい」
かなたさんに、注意され、歌に聞き入る。いや、聞き入ったつもりだった。
だめ、緊張してきた、凜太郎くんのせいで。山名さんの歌がもう耳に入らない。
緊張で心臓の音だけが響く。
「ありがとうございました!さて、続いてはRAINBOWです!!スタンバイお願いします!!」
キャーキャーとファンの声。「よろしくお願いします」と司会の方、ファンに手を振りステージへ。
「花?」
「や、やばい、なんか緊張する。新曲歌うっていう緊張が!!」
私は小さい声でみんなに告げる。慣れた筈だったのに。




