MVとド緊張の初演技4
「花ちゃん可愛いね。さすが。俺なんて21にもなって制服着るの恥ずかしくて」
かなたさんは言い終わると同時に、はあ、とメガネの真ん中を指でくいと上げながら眉を下げる。
「似合ってます!!めちゃくちゃ!!」
「ほんとー?そりゃうれしいな」
なんか勉強できるのにスポーツもできる優等生みたい。
「蓮はどう??」
「蓮さん?」
言われて蓮さんを見る。
蓮さんは凜太郎くん、コウキくんとケラケラ笑っている。
いる、こんなちょっと悪そうに見えるけど人気のある、かっいい先輩!!蓮さんの滲み出る先輩感に思わずじっと見つめてしまう。
「花ちゃん、蓮くん、見すぎじゃない??」
コウキくんに言われてハッとする。
「なーに、見惚れてんの?」
つかつかとこちらに寄ってきたと思ったら机に手をついて私の顔を覗きこむ。
「いえ、滲み出る先輩感が……かっこいいですね」
「なんだそれ!」
笑う蓮さんはほんといつもの口が悪くかっこいい顔イメージからはかけ離れていてる。
なんだろ、意地悪なのに優しい人!みたいな。かわいらしい印象になる。
「はーなー!オレももうちょっとほめてくれてもいーんだけどー??」
凜太郎くんが蓮さんとは反対側の机に手を置き眉を寄せて私を見る。
「褒めてって、ほめたじゃん?!」
「足りないんだけど?!」
「はああ?!」
「んじゃ、おれも褒めて―??」
「じゃあ、俺も褒めてもらおうかな」
みんなに囲まれる。こ、こんな学園生活だったら絶対この4人のファンにきらわ……って、ファンにすでに嫌われてたわ。うん。
今日テレビ見てなくて忘れてた。
「5人とも、そろそろ撮影、始めますよ」
神永さんが、まったくといった様子で近寄ってくる。
「へーい」
「んじゃやりますか。」
4人は机から離れ、今回MVを取ってくれる監督の元へ。
「どうしました?花さん」
じっと離れていく4人を見ていた私の前で何度か手を振り神永さんが話しかける。
「いや、なんかほんとにRAINBOWのみんなかっこよかったんですね」
「いまさら」
ふと、神永さんは小さく笑う。
「あなたのメンバーですよ」
「そうでした!」
「さあ、お芝居頑張ってくださいね」
「う……」
椅子から立ち上がった瞬間に言われ、じとっと神永さんを睨む。
「……緊張せっかく取れてたのに。」
「がんばってくださいね」
このっ。ひょうひょうと言いやがってっ!!
やりますよ、やるよ!!
撮影手手順はざっくり聞いてる。
まずみんなで踊るシーンの撮影。そして個別シーン撮影。そして2人同士の撮影。
撮るのはプロモーションビデオではなくミュージックビデオ。
かなたさんがこの2つの違いを教えてくれた。
ミュージックビデオというのは音源にマッチした映像を撮影したもの。
プロモーションビデオは販売促進用の映像。……らしい。結局聞いてもピンと来なくて、とりあえず頑張って撮ろう、とかなたさん笑われた。
「花!こい、ダンスシーンの説明だって」
「はい!」
蓮さんに呼ばれ私もみんなのもとへ。
ダンスシーンは練習のかいがあって滞りなく進む。何テイク撮り終えみんなでカメラ前へ。
「制服、なかなかいいね?」
「あれ、俺意外といけてる!まだ制服いける!!」
モニターを見ながら言い合う。
「花、御前結構しっかり踊れるようになったじゃねえか」
「ほんとですか?!」
蓮さんがモニターから目をそらし、私を見つめると「よくやった!」とぐしゃと頭を撫でてくれる。
「みなさんに教えてもらいましたからね!コーチがいいんですよ!」
「あ、それは否定しねえ」
「否定してください!いや、まあ、ほんとだから否定しなくてもいいと思いますけども!」
「花ってマジアホ!」
ああ、おもしれえと笑い続ける蓮さんにつられてなんだか私まで笑ってしまう。
「蓮さん、笑いすぎです!」
「バーカ!」
笑い続けたままからかうように優しく言う。……こ、これは……ほんとにかっこいいのではないでしょうか。ファンの皆様、ごめんなさい、私、蓮さんのこんな顔を間近で見ちゃいました。
「なんだよ?」
「蓮さんってかっこいいんですね」
「は?……まあ。俺一応アイドルだし?俺よりかっこいい奴はいね……」
「オレもかっこいいよ!」
「んじゃ、俺もかな」
「おれ、かわいいので一番でいいよ?」
蓮さんの言葉を遮るように凜太郎くんたちが話し出す。
「けど、蓮が、俺よりかっこいい奴はいない、みたいなこと言うとは思わなかった」
「かなた、言うのやめて、恥ずかしい」
聞かれてたことに蓮さんは額を抑え俯く。え、照れてんの?これ。
「蓮くんが照れてんのレアだよ。花ちゃん」
「あ、目に焼き付け解く!!」
「んじゃ、オレもー!」
「やめろ!!」
「諦めろ、蓮」
テレビで見てて思ってた。「RAINBOW」は仲がいいと。最初は一人で追いつくために頑張ろうって思ってたけど、こうしてみんなが私と笑ってくれる。この4人の中に居られる事、今はちょっと好きです。
けどね。
「個別シーン撮影入ります!」
演技とかは……無理だよ?!




