89 卵
いや、忘れてたとか、そんな事はないんです。
その、、、すいませんでした!!
ある日の朝カグツチはふと考えていた。
"僕達神龍は子孫を残すことが出来るのか"と。この問題を生態的に考えると答えは"否"だ。
なぜなら神龍の体には生殖機能が備わっていないからだ。しかし、そこに神の力が加われば話は変わってくる。カグツチを生み出したのは神であるおじいちゃんだ、カグツチの子を作る事は簡単だ。
「あぁ、一回だけでいいから。俺の子供見たいなぁ」
そんな軽い独り言だった。そんなに話を繋げるつもりもなかった。しかしヒスイはこの話題に凄く尻尾を振った。
「カ、カグツチ様!こ、こ、子を誰との子をなすのですか?!」
カグツチは驚いたそしてヒスイの顔を見て後悔もした。顔を赤らめ、お腹をさすっているのだ。
「えっ、いや、そんなつもりは、、、」
珍しくカグツチが、神龍が狼狽えている。こうなってしまえばもう引き返すことは出来ないとカグツチは悟った。そしてヒスイはくねくねしながら自分の世界に浸っている。
「、、、、ちょっと聞いてくる、、、、」
そんな話はヒスイには聞こえていない。そしてカグツチは念話でおじいちゃんに聞いたのだ。
「あっ、もしもし。おじいちゃん?」
「ん?なんじゃカグツチや」
「僕の子って作れる?」
そんなシュールな事を聞かれると想像もしていなかったおじいちゃんは飲んでいた紅茶を盛大に吹き出した。
「ブッッッッッ。どうしたんじゃ、いきなり」
「いや、そう言う話になって、、、」
カグツチはおじいちゃんに説明した。
「なるほどの、まぁ答え的には可能じゃよ」
「あ、そうなんだ。ちょっとこっちの時間で一年したら生まれる卵くれない?」
「いいぞ、、、ほれ」
「ありがとう」
念話が終わり、カグツチの目の前には直径一メートル程の大きな卵が現れていた。
「ヒスイ、そろそろ戻っておいでよ。卵だよ」
ヒスイは卵と言う言葉で我に返りカグツチに詰め寄った。
「だ、だ、だ、誰との子ですか!!」
カグツチは押されながらも答えた。
「い、いや、ちょっとそういう系の神様から貰ってきた、でも僕の卵だよ(多分)」
「そ、そうですか、、、、」
ヒスイはガッカリもしながらお腹をさすっていた。
「ま、まぁ産まれたら仲良くしてやってよ。一年後に生まれてくるから」
「はい、、、、」
一年経つ前に悲劇が起こることも知らずに。
いや、ほんとにすいませんでした。




