49 美味しい果実 ①
この頃忙しかったカグツチだが数日何も起きずに平和で日常を過ごしていた。
「平和だね〜、これが続けばいいんだけどな〜」
「本当ですね」
「でもこんなに何も起きないとなにか起きそうな気がするよ」
「カグツチ様がそうおっしゃる時は何か起きる事が多いですのでお口に出さに方がよろしいかと思います」
「はは、それは言い過ぎだよ」
この時はまだ予兆は全くなく誰も考える事は無かった。
「せっかく平和で時間があるのにもったいないね、どこかへ旅行にでも行こうかな」
カグツチには守るものは託されていないので基本的には巣から場所を離れても問題は無い。
「あ!そうだ、この前アリグナに美味しいものを貰う約束があったんだった。それを貰いに行こうかな」
「その様なお約束あったのですか?」
あの時の会話は頭の中で話していたのでヒスイは知らない。
「あぁ、前に会った時にね」
「そういう事でしたか、いつから出発致しますか?」
「別にまだ日は高くないから今から行くよ」
「承知しました」
そう言ってヒスイは精霊紋へと入って行き、カグツチは翼を大きく広げて飛び立った。
「ヒスイ、アリグナはどっちの方向?」
「西でございます」
「わかった、ありがとう」
カグツチは西へ雲の上を通り向かった。
西へ向かってから四時間ついにアリグナの巣の山へと着いた。
「ここかな?聞いていた特徴と合ってるし」
「はい、間違えないかと思います」
その山の頂上には大きな穴が空いている。
「じゃあ、入るか」
その穴はぐるぐると山の中に螺旋階段があるかのように穴が空いていた。
「長いな」
飛んでは入れないため歩いて進むしかなく進む速さは早くない。
そう言って二十分かけて歩いて底まで着いた。
そこにいたのは丸まって寝ているアリグナの姿があった。
「あれ?ヒスイ、僕達行くってアリグナに言ったよね」
「はい、正確には大精霊にですけど」
「その姿もないけど」
喋っていると精霊紋からアリグナの大精霊が出てきて言った。
「おはようございます、カグツチ様。地の大精霊"グラ"と申します。寝てしまい申し訳ありません。この環境の中ですので朝も夜もわからなくなり常に睡眠モードなのです」
「ああ、そういうことなのね。じゃあアリグナ起こしてもらってもいい?」
アリグナの大精霊は首を横に振った。
「アリグナ様は寝ている時に起こされる事を大変お嫌いで一度起こした事がございますが激怒されまして。それから起こさないと心に決めました」
「あ〜、まだ怒るんだ。仕方がない、僕が起こすよ」
そう言って慣れた様に魔法を詠唱した。
"ファイア"
ちっちゃな火の玉を背中に当てた。
「うわ!なに?!あぁ、カグツチか、その起こし方びっくりするからやめってってあれだけ言ったでしょ〜」
前半はいつもの口調では無いが後半には戻ってきた。
「いや、ごめんごめん。でも普通に起こすと怒る性格そろそろ直さないとグラが迷惑してるよ」
「ぐっ、、、直すよ。。いつか(ボソッ」
小さな声もここでは大きく聞こえるので聞こえているカグツチだがいつものことなので聞こえない事にした。
「で?なんだっけ?」
「前に言ってた美味しい果実欲しいなと思ってね」
「あぁ、あれか。山に生えてるから一緒に行こうか」
本日もありがとうございます!




