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最果ての此方、至近の彼方  作者: ひさかたフラッシュ
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第2話②

次の日、俺の異世界紀行三日目はまだ日の上らないうちから始まった。

三日連続の快晴は幸先の良さを表しているようだった。

噴水で顔を洗ってしゃんとする。ビシッと髪を整えて支度を整える。

案内板の地図を撮ってひたすら北、というか上に向かって進み出す。相変わらず空にクルマは飛んでいるけど、歩いている人は今の時間は俺だけだ。

改めてこの町を見るとやっぱり日本より発展しているのではないかと思ってしまう。

全ての建物が最も高いものでも10メートルくらいの高さまで、それ以下はあってもそれ以上がないため、空飛ぶクルマが楽に飛ぶことができてそうだ。その上、建物の規則正しさが人通りのスムーズさに一役かっているようだった。


太陽が頭上を通り過ぎる頃、次第に歩く人も増えていき、いよいよ俺の空腹はピークに達していた。どこかで何か食べないといよいよ餓死してしまいそうだ。飲み水は昨日にゴミ捨て場のようなところで水筒に使えそうな入れ物に入れてきたので問題なかった。

こうなったら飲食店の前で土下座でもしてみるかなんて考えたけど、流石にお店に迷惑になるのでやめておこう。

地図を見て現在地を確認してみると、

「ここがここだから、今はこの辺か」

順当に進んではいるけど、それでもあまり距離的には進んでいるとは言えない。2日間歩けばつきそうな距離だろう。

「苦あれば楽ありとは言うけど、いい加減どこかで食事しないと…」

今にも崩れそうな足に鞭打って一歩一歩踏みしめていく。


それからどれくらい時間がだっただろう。文字が読めないから、一度地図を読み違えると詰んでしまいそうなので、俺はそうならないように、時折見つける案内板の写真をこまめに撮って現在地との比較を行っていた。

ふと、どこからかとてもいい匂いがしてきた。つられるように足取りを進めていくと、そこは一見高級そうなレストランだった。でも、親子連れが気軽に出入りしていることからそうでもないのかもしれない。中を覗くとみんなみんな幸せそうな顔してパンやら肉やら頬張っている。その光景がたまらなく輝いて見えた。

俺の意識はそんなことを思ってから突如として、途切れた。


夢を見た。

「お兄ちゃーん!」

弟の玲司が俺の胸元に飛び込んできた。俺は思わず弟と一緒に後ろに倒れこんだ。

玲司がまだ4.5歳くらいの時だろうか。

あの頃にはもう母の第一主義が始まっていて、少しずつ俺が玲司のことを嫌いになっていった時期だったような気がする。そしてまだ玲司が俺のことを兄貴と言わずお兄ちゃんなんで呼んでいた。

なんて感慨深く浸っていると、場面が変わった。

今度は玲司が小6の時だろうか。やけにしかめ面の場面が増えていった。そうだ、この頃は玲司が中学受験を控えていて、母がいつにも増して周りにあたっていた。

そう、それで俺は弟が可哀想に思えて、同時に母に愛想が尽きて自立しようの決めたんだ。

そっからどうなったんだっけ。


夢はそこで終わっていた。

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