第1話
初めまして御子柴です。この作品は異世界転移モノですが、まだなんにも起こってません(汗)
8月の終わりまでには世界観をしっかり提示していって、一段落つけたいです。
頑張って設定や諸々考えて書いているので一人でも多くの人に読んでいただきたいです。(主人公はチートしませんし、ハーレムも築く予定はないことは先にいつまで起きます。)
拙い文章ですが、よろしくお願いします
(余裕があったら推敲していきます)
目の前には延々と続く広大な野原。どこからか吹き付けてくる心地の良い空気の匂い。鳥がさえずる木の下で和泉宗一は目を覚ました。
はじめ、夢だと思っていた。そう思わざるを得ないほど、視界に入る光景は現実、もとい日常とは乖離していた。
どれほど時間が過ぎただろうか。夢にしてはあまりにも鮮明だ。ああ、きっと夢だ。今一度目を閉じれば現実が戻ってくるはずだ。
目を閉じてしばし気持ちの良い空気に包まれ夢の中に落ちていった。
「なんでだ。たしかに今眠ったはずなんだけど…」
なんで目の前に映るのは家の天井じゃないんだろう。相変わらず眼前には広大な平原が広がっていた。
いやいや、こんなアニメみたいなことあるのか?ドッキリか?俺にドッキリをしてなんになるのだろう。
「あのー!ドッキリなんですかー?」
声は帰ってくることもなく空に消えた。
完全に手詰まり。orzのポーズを無意識的にしてしまう。
ずっと座っているのもなんなので腰をあげると、身体中がベキベキと音をたてた。大きく伸びをして辺りを見渡したが、
「本当に人っ子ひとりいないな」
座ろうが立とうが見える景色に大差はない。ただあるのは見渡す限りの緑色。
兎にも角にも歩かないことには始まらないと思ったので、俺は見知らぬ地の第一歩を踏み出した。
「何にも景色変わらないなー」
何時間歩いただろうか。既に太陽が頭上を通り過ぎていて、少なくとも2〜3時間ほどはたった気がする。未だ持って眼前に広がるはみどりみどりみどり。次第に喉の渇きを覚える。風景が変わるのは雲の様子と時折通る小動物たちだけだった。
「そうだ、スマホ使えばいいんじゃん!」
今更気づいた。バカか俺は。早速文明の利器を取り出して電源をつける。幸い、電池は切れていなかったが、
「圏外ってどうゆうことだ?」
画面左上に出たその二文字はここは少なくも日本ではないことを示していた。
薄々感じてはいた。日本にはこんな馬鹿でかい平原があるはずがないのだから。
「日本でないとすると、ここはいったいどこなんだろう」
焦りはないが、このまま永遠と歩き回っているといつか餓死してしまう。気候は穏やかだから俺のTシャツと薄手のシャツという春先の軽装備でも心地よいのだけど。ウンウン唸って歩きながら考えていると一瞬、視界の隅に何か動くものを見た。喉の渇きが生んだ幻覚だろうか。いや、違う。確かに人だ。しかも二人だ。俺は気づいたら駆け出していた。
人だ。俺は喜びに満ちていた。
必死に両手と両足を懸命に振って、目の前の二人組に追いつこうとした。体から汗が吹き出て服が水浸しになっていて、足はいきなり走り出したせいで攣りそうになっているが、それ以上の感情が俺の全てを覆い潰していた。
「ハアッ、ハアッ」
ゼーハー、ゼーハーと息の切れる音が耳にうるさいが、大きく声をあげて、目の前の二人に叫ぶ。
「ハアッ、あのー、ハアッ、ハアッ、そこの二人ーっ!」
二人が振り向いた。遠目で見ると、一人はガタイの良く、それでいてスラッと縦に伸びた好青年で、深緑色のオールバックの髪型が体格によく合っていて、もう一人はフード付きのローブ姿でよくは見えないが、身長の具合からして、子供だろう。
やっと追いついた。二人はじっとこの辺な男を見ている。俺は呼吸を整え、
「いやいや、今日は晴天。お日柄もよく、絶好のピクニック日和でございますが、あなた方お二人さん、一体どこへ向かってますの?よければ俺もお供にとぉっっ!」
いつもの癖で柄にもないお調子者のような口調で話しかけると瞬間、首に冷たいものがあたった。硬直。目線を下にやってみると、漫画やアニメでしか見たことがないような刃が突きつけられていた。俺は、すぐさま一歩後退し、両手を挙げ、剣を突きつけた相手を見た。
その男は遠目で見るより、ずっと、ずっと威圧感があった。そして、明らかに警戒した目。ローブの子供はいつのまにか男の後ろに隠れていた。
そして俺は不覚にも、この男と質素だが俺でもわかる丁寧な装飾が施された剣を見て、綺麗だと感じてしまった。
男が口を開く。
「–−–––––––––ッ!!」
「へぁ?」
思わず変な声が出た。男が少し刃にかける力を強くする。変な声が出てしまう程、俺は男の言った言葉が分からなかったのだ。少なくとも英語ではない。アジア系の言葉でもない。ノルウェーやフランスなどの欧米の言葉かと思えば、確実に発音や抑揚が違う。頭を回転させて数秒、脳の全能力を稼働させたどり着いた結論が一つ。我ながら馬鹿げているとは思う。だけど、俺は自分の生い立ちから色々な国の言葉には他の人より耳慣れしている事を自負してはいるが、それでも、分からない言葉。つまり、俺の世界ではない言葉だろうと仮定すると……
「ここは異世界かなんかなんだろうかな?」
異世界、それはラノベで昨今最も耳にする単語の一つだと言ってもいいと思う。異世界に召喚、もしくは転生した主人公はなんか凄い力を手にしてハーレムを作り上げるという。
もし、仮にだけど。仮にそうだとして、俺は、そんなパワーを貰ったような記憶はない。無自覚系だとしても、何故か今のままだと絶対に魔法なんて使えるとは思えなかった。
未だに剣先は首元を離れないが、俺は敵意がないことを示すため、笑みをとばした。自分でもぎこちないと思う。
後ろにいた少女が何か男に告げ口をすると、男はようやく剣を下ろしてくれた。
命の危機から脱した俺は滑稽にもジェスチャーで意思を伝えてみた。
オレヲツレテイッテクダサイ
身振り手振り、それはもう必死だった。なんとかなく察したのか男は親指を背中にたてた。付いて来いと言った様子だった。
思わず涙が出そうになった。俺は最初は物騒だったが、親切だとわかった男と子供が歩き出すと、それにひたすら付いていった。
喉の渇きや疲れは何処かに消えていた。