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異世界バスツアー  作者: ルンルン太郎
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その頃バスツアーの客は

 山田太郎の初仕事が終わった頃、異世界バスツアーの客は大変な事になっていた。


「あーあ! 前衛が死んだよ。使えない盾だなー」


 異世界バスツアーに乗っていた26人は20人になっていた。死んだのは前衛の6人。敵の盾になるように強要され、敵を10人倒すと1人死ぬの割合だった。


「さて、盾も無くなったし帰るか。戦利品皆で分配して持っていってね」


 リーダー格の男が言った。彼の名前は九頭龍大身長185センチで体格がいい。だが、彼は前衛ではない。槍を持ち中間距離から戦っていた。盾と呼ばれる前衛の間から槍を突き刺す。自分の安全だけを考えて動く。それが九頭龍大の戦い方だ。倒した敵は30匹全体の3分の1は倒した計算である。


「さすがですね、リーダー50匹くらいゴブリン倒してましたね」


 九頭龍大に付いて離れない腰巾着の花田重光が言った。いつも大袈裟に誉めて九頭を更に調子に乗らせるのだ。新人教育と言いながら新人を前衛に配置するのも、九頭と花田2人でその流れを作っている。

 女性メンバーは弓を与えて遠距離攻撃と言っても命中精度が平均的に低すぎるので、5メートル程度しか離れていない相手にしか当たらない。ほぼ中距離と言っていい。


「今日もリーダーはカッコよかったです」


 女性メンバーで一番可愛いと自称するリナが九頭にすり寄り、タオルを手渡す。この女も九頭を調子に乗らせるのに一役買っている。リナは弓の腕は5メートル以内でしか当たらない組だが、何故か女性メンバーではリーダー扱いである。30メートル先でも命中するこの中では一番の腕前の女子メンバー冴子は、年齢と名前からおばさんと呼ばれ煙たがられている。まだ25歳なのだが、22歳のリナから見れば、おばさんなのだという。


 他のメンバーは空気を読んでこの流れに乗ってしまっている。何も疑うことなく、疑問に思うことなく。敵を沢山倒したからリーダー、一番可愛いからリーダー、何も考えない。安全圏から敵を攻撃して何が凄いのか、何が偉いのか。ましてや、死んでいった者達を物扱いで盾と呼ぶ。この事すら自分とは関係ないからなのか、非難する事もない。まして、非難するべき事である事にすら気がついていない。明日は我が身という事でさえも。


 ゴブリンの砦を攻め落として大量の宝箱と装備を得た異世界バスツアーの面々は武器屋に寄って不要な物は売り払い、余った金を分配した。ひとり頭だいたい150ゴールドになった。総額3000ゴールド。だが、美味しい所は九頭と花田とリナが持っていく。3人で3000ゴールド。そう、宝石等はこっそりポケットの中に隠し後から売り払う。人を欺くのに3人とも長けているのだ。


 こうして、同じ1日でも山田太郎と九頭達とでは稼ぎが全然違っていた。1ゴールドと6000ゴールド。6000倍だ。

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