異世界に空手家とダンサーが行ったら強いんじゃないだろうか!
今日も異世界バスに新たな乗客が乗り込んできた。ひとりはスリムな体型でまるで女性のようだ。しかし、女性と決定的な違いはその筋肉量。ピッタリした服の上からわかるくらいの胸の筋肉と足の筋肉。足が非常に長く182センチはあった。彼はプロのダンサーを目指す美原俊。
もうひとりは美原俊よりも身長は低い178センチだが、腕まくりした腕はまるで丸太のように太い。空手か柔道をやっているのか胴着で乗車してきた。
「おっす! 先輩の方々初めまして! 花田次郎です! 空手やってます! 今年で3段になりました。この空手の技術を使い異世界でモンスターと真剣勝負をしたいと思い参加しました。以上宜しくです。おす!」
空手の花田次郎の挨拶で大きな拍手が起こった。山田太郎の拍手が一番大きく、手のひらを真っ赤にしていた。
「あ、自分はダンサーの学校に通ってます。今年からプロになるんですが、今年はまだダンスだけでは食えないし、ダンスの練習に集中する為にもバイトよりも稼げると噂の異世界バスツアーに参加しました。宜しく!」
宜しくとバスの乗客が一斉に答えて、バスの乗客達は強そうな人が来たと大騒ぎ。
「それではバスツアーに参加するには5万円支払って下さい」
「え、3万円では?」
「2万円は初回の紹介料です」
鷺沼が有望新人に声を掛けた。
「あ、ならいいです。3000円のコースにします」
「ん、なら俺もそっちにしよう。何かお前は気に食わん」
ダンサーと空手男は鷺沼と険悪な雰囲気になって3000円のソロ参加となった。
「ソロは後ろの席だよ」
山田太郎の時のように鈴が二人を呼んだ。
「ソロってやっぱり大変ですか。自分達武器とか持ってないけど大丈夫ですか?」
花田次郎は一番話しやすそうな後ろの席でルンルンしている太郎に話しかけた。
「武器の事は心配しなくていいよ。空手とダンサーって同じ武器でいいと思うんだ。靴から刃が飛び出したり引っ込んだりする靴って強そうじゃない? 後さ、肘にも同じの付けてさ、回転斬りとか凄くない? 空手の君は鉄で出来た拳も良さそう。大きな鉄の固まりでさ、中に握るグリップ付ければ鉄拳じゃない? 実はさ、昨日、鍛冶屋のオーナーになってさ。特注で急ぎで作らせるよ。代金は分割払いでゆっくり払ってくれて構わない。とりあえず、その日の稼ぎの10%ずつでいいよ」
「マジですか! いいですね。なら鍛冶屋に注文宜しくです」
「任せて。武器が出来るまで俺の持つ店でバイトしててよ。レストランの建築工事とかしててさ、力仕事をして貰うと助かる」
山田太郎はゾンビ騒動で商業都市ヤスイダローで英雄となり、かなりの有名人となっていた。その祭りで色々な商人と話し、鍛冶屋の権利を買い取り、その祭りの場所で鍛冶職人も見つけ出した。
青果店の権利もその時に手に入れ職についていない綺麗なお姉さんも店長にした。
精肉店と焼き肉の店も隣同士で権利を手に入れたので、精肉店で加工した肉をそのまま焼き肉屋さんで売れる流れとなっている。
素晴らしい腕前と評判の料理人も祭りで発見したので高級な料理を出すレストランも作ろうと計画中だ。異世界の料理だけでなく、現代の料理もシェフに学んでもらって両方出せる店をオープンさせようと思っていた。
山田太郎は抜け目なく立ち回り、無駄なく的確に立ち回った。だが、上手くやり過ぎて全財産を事業につぎ込み、権利をローンで手に入れ膨大な借金を作っていた。新しいクレイモアを買う事などもちろん出来る訳もなく、また当分の間、鉄線バットとフライパンの盾生活だ。




