もしも女子大生が異世界に行ったら
大学のサークル活動でフルマラソンをしている明香と静香は二人は親友で何をするのにも一緒だ。日課は毎朝往復20キロを走り、夕方にまた往復20キロを走る。休日は往復40キロに挑戦するそんな日々だ。
「なあ、異世界バスツアーって知ってるか?」
「ああ、とても稼げるって話だな」
男達が異世界バスツアーの噂をしている。
「でも、チラシを持ってなきゃ行けないんだろ?」
「そうなんだよ、お前持ってね? スマホゲーに課金したくてよー」
「いくらぐらい?」
「ん、50万くらい。偉そうな課金野郎を抜かしたくてな」
男達の噂話に興味深いく耳を傾けていたのは静香だ。
「ねえ、明日香、異世界バスツアーのチラシを持ってるって私が言ったら信じる?」
「え…」
静香の話に明日香は驚いている。
「なになに静香、課金したいゲームでもあるの?」
「無いけど、明日香行きたいのかなって。噂では異世界で過ごした1週間はこちらの1日なんだって。いや、そういうアイテムがあるらしいのよ」
「まさかー! でもそんなアイテムがあればトレーニングしまくりよねー! 異世界でデカ盛りの店とかあるの?」
「明日香は大食いだもんね。デカ盛りがあるかはわからないけど、食料は安いらしいよ。向こうのお金を日本円換金してくれる所もあるらしいし」
明日香と静香の噂話に花が咲いていた。すると先ほど異世界の噂話をしていた男子生徒が話に加わってきた。
「あの、俺スマホゲーで借金しちまったんだ。その異世界バスツアーのチラシをくれないか?」
人見知りの静香が困惑する。明日香と異世界に行けたら楽しそうだけど、この人を助けるためにあげるべきなのだろうかと悩んでいた。
「んー、あんた達一緒に異世界に行く? 男なんだからしっかりと私たちを守ってよね。ところでツアー参加費の3万円持ってるの?」
男子生徒は困った顔でこう答えた。
「それは出来れば貸してほしいかなって。ほら、異世界はめっちゃ稼げるらしいしさ、報酬ですぐに返すから!」
明日香と静香は同じバイト先で貯金はあった。ファミレスなので店員割引で食べられて楽しく働いている。
「仕方ないなー! いいよ。今日の深夜3時に大学の前のバス停に集合ね。あんた名前は?」
「俺は井上将暉、隣の人見知りのは村田静男」
こうして、男子生徒と女子生徒の縁は繋がった。旅は道連れ世は情けである。そして、深夜に集合すると、静香が手に持っているチラシが眩く輝き、異世界バスが突然バス停に現れた。
「うわ、マジで来たよ。さあ、ガンガン働いて借金返すんだよ! 私達は気楽に釣りでもしてさ、炭火で焼いて食べたいね。って事でほら、3万貸すから。私達は普通の参加費3000円払って散歩してみる?」
「明日香のそういう気楽な性格嫌いじゃないけど、何の準備もなく散歩は無理よ。剣や盾は最低100ゴールドでこっちのお金で100万円。それをレンタルしてくれるバスツアーが絶対お得なの」
「そっかぁ。じゃあ、運転手さんツアー参加4名ね釣りはいらねえ取っときな!」
「お客様ちょうど頂いてお釣りはないのですが」
無表情のバスの運転手の苦笑いを見て山田太郎と、ゆっけと、鈴が後ろできゃっきゃ言って盛り上がっている。
異世界に地味に詳しい静香のお陰で武器と防具と便利アイテムを借りてスムーズな異世界旅行が出来る事になったが、太郎達と一緒のぼっち組に入れたら、より面白い気がした。
静香は思慮深く、明日香は勘に優れている。直感的にぼっち組の方がいいと感じたのだった。
山田太郎達はゾンビ討伐から帰った後で人が増えてきたと後ろで喜んでいる。また満員になる時が来るんだろうか。ツアー組8人、ぼっち組4人それが今の異世界バスの乗客だった。




