異世界生活6日目
山田太郎は宿屋で目覚めた。普段は枕が代わると寝れないタイプだが、旅の疲れからか朝までぐっすりと眠れた。
「おう。起きたか。飯に行こう。ハリーから聞いたがここの朝食は抜群に旨いらしい」
ルドルフは先に起きてロングソードの手入れをしていた。ゆっけや高志の武器がと同じく大きな宝石がはめ込まれている。
「ずいぶん凄い剣だな」
山田太郎の言葉に大きく反応するルドルフ。
「これか。俺の専用武器に似せた特注品さ。専用武器ってのは、この世界の神様が巫女を通じて与えてくれる本人しか扱えない武器なんだが、家や店10軒くらい建てられる金がいる。専用武器の値段も様々なようだぞ。俺は小物だから800ルビーで買えるがな」
「800ルビー?」
「おう。ゴールド1000枚で1ルビーだ」
「ええー!?」
山田太郎はその値段の高さに驚いた。こりゃ、一生専用武器は無理だと思った。
それより、出来るだけ装備をケチって店を沢山持ちたいと思った。ゾンビ騒動で空き家や空き店舗が増えてるだろうし、金は不動産に使うべきだ。
前々から思っていたが山田太郎は思考回路が冒険者ではなく、商人のようだった。
噂の朝食は朝から400グラムのステーキと野菜たっぷりのスープ、生野菜400グラムのサラダ、食べ放題のパンとライスだった。宿屋の代金はハリー持ちだったが、さぞ高いのだろうと太郎は思った。
「よし、ギルドで依頼を受けに行こうぜ」
山田太郎達はギルドに向かい、ゾンビ討伐の依頼を受けた。すると首から下げる大きな丸い水晶のネックレスを人数ぶん受け取った。これは映像を記録出来る魔法の道具らしく、正確な討伐数が記録出来るらしい。
それから例の買い物を済ませて、山田太郎達は商業都市ヤスイダローに向かった。もちろん依頼主もヤスイダロー商会。ゾンビ1体の討伐で何と金貨5枚だという。街に入ると同時に助けてくれーという声が聞こえた。
「俺達に任せろ! 俺達の後ろに隠れな!」
3人の商人がルドルフの後ろに隠れた。迫り来る無数の足音。振動で水溜まりが揺れている。その揺れが段々大きくなる。すると曲がり角から大量のゾンビが走ってきた。その数300余りの多さに尻込みするルドルフ。
「おいおい…俺達ここで死ぬのか?」
「俺に任せろ! こいつの試運転もしたいしな!」
山田太郎は全速力でゾンビの群れに飛び込んで行った。その両手には2メートル重量4キロのクレイモアが握られている。全財産使って買った太郎の宝物だ。
山田太郎は手にしたばかりのクレイモアを左に振り抜く。ゾンビの群れが左に吹き飛んだ。今度は右に振り抜く。右にゾンビの群れが吹き飛ぶ。無数の肉片が飛び散った。それを何度か繰り返すと背後に回り込むゾンビが現れてくる。そうすると太郎は左足を軸に大きく回転して斬った。まるで扇風機。
山田太郎は憧れの漫画の主人公になった気分がした。帰ったら三部作の映画やアニメを見よう。作者は長期の連載休養中で完結しないのでは。と思われているが太郎は連載再開を心待にしている。
そんな事を考えながら一心不乱にクレイモアを振り続ける。山田太郎の顔と体の全体から大量の汗が吹き出す。それでも山田太郎の息は切れない。学生時代3年連続でマラソン大会不動の1位のだったスタミナが復活したようだ。
山田太郎の唯一の自慢である長距離走。髪の毛は自分で切っている為に見かけはモブキャラだが、その中身はかなりの化物だったのだ。例えるなら小型で軽量の車に600馬力のモンスターエンジンを乗せたようなもの。
戦闘経験豊富なルドルフやハリー、鈴辺りはその事に気がついていたが。その才能が大剣を手にした事で一気に開花したのだ。
ゾンビが全て片付いたので戦場報告をしよう。
愛ゾンビ討伐50体
杏理ゾンビ討伐62体
冴子ゾンビ討伐180体
ルドルフゾンビ討伐380体
ハリーゾンビ討伐520体
山田太郎ゾンビ討伐1228体
こうして山田太郎は一流のゾンビ退治のハリーの倍以上という驚異的な記録を出して街の救世主となった。ゾンビから救った人の数は300人ゆっけが解毒剤でゾンビ化を食い止めた人は150人だった。
明日は街が救われた事を祝って商人が全て無料でお祭りにするらしい。




