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隠し扉


「さて、と」


 目的の場所に来てみたものの、何をしよう、と決めていたわけじゃない。夢の中でいつも感じていた切ないような胸の痛み。


……一体、あの夢は、この痛みは何なんだろう?


実際に蔵に来てみれば、何か手がかりが掴めるかもしれないと思ったのだ。


「とりあえず、中を見てみるかな」


私は蔵の中へ一歩踏み出した。


 日が傾いた夕暮れ時。明かり取りの窓から斜めに差し込む緋色の光が蔵の中を照らしているけども、それでも薄暗い。はっきり言って少し不気味だ。私は懐中電灯のスイッチを入れると、端から蔵を見ていくことにした。


 木の樽。わらでできた靴。机のような物。小さな石臼。木でできた機械のような物。隣には似たような物がいくつか並んでいる。ほとんどが、見ても用途がよくわからない物ばかりだ。しかし、端から反対側の壁まで行った時、大きな木の箱を見つけた。人が入れそうな程、大きい。


「棺桶……なわけ、ないよね」


 びくびくしながらも、蓋を開ける。中がわからないままの方がよっぽど怖い。蓋を開けて懐中電灯を向けると、中は空だった。しかしよく見ると、箱の底に観音開きの扉がついている。


箱の底に扉? 何だろう? 


不思議に思いながら両腕を伸ばし、把手をつかむ。箱の高い縁から身を乗り出しているので、足が床ら離れそうだ。


「んっ!」と力を込めるも、びくともしない。つま先立ちになって、お腹と太ももで縁を強くはさんでから、もう一度引っ張る。その瞬間、バキッと嫌な音がして扉が開き、引っ張った勢いで私の体はそのまま箱の中へ落ちていく。正確には、扉が開いたらそこにあった、真っ暗な穴の中へ。


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