第九話『好きなら関係ない』
今回も投稿が遅れてしまいましてすいませんでした。
ですが、今回も楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。
「うぅ……」
貞子に背中を押されなんとか賢斗の家の前まで来たものの奈々夏はインターホンに指を置いたり離したり、ぐるぐる歩き回ってさ再びインターホンに指を置くという動作をかれこれ十分ほど続けている。
「よ、よし!」
奈々夏はようやく意を決し、インターホンを押す。
「はーい?」
賢斗が玄関からひょこっと顔を出すと、奈々夏が突然来たことに少し驚いていた。
「奈々夏、どうしたんだ? 連絡もなしに来られたらビックリするだろ」
「賢斗くん、ごめんね……」
何となく雰囲気で察したのか、賢斗は奈々夏の手を取り部屋の中へ入れ、暖かい飲み物を出した。
「お前、かなり長い間外にいたんじゃねぇか?」
「え? わ、分かっちゃった?」
「そりゃまぁ…」と冷えて赤くなった奈々夏の手に目をやる。
「それで? 今日はどうした?」
「えっとね、大事な話があって来たの……」
うつむき加減で言う奈々夏の様子を見て賢斗が予測した話は勿論のこと別れ話だ。
俺がいつの間にか傷つけてしまったのか、と賢斗は悔しさに奥歯を強く噛み締める。
「賢斗くん、あのね……私ね……」
「奈々夏、それ以上言わなくていい」
賢斗は奈々夏の言葉を遮る。
「大事な話って別れ話、だろ?」
「えっ? 賢斗くん? 何言って……」
「お前の口から言うのも辛いだろうし言わなくていいよ」
奈々夏から目をそらしながら賢斗は続ける。
「俺が知らず知らずのうちにお前を傷つけてたんだよな……ごめん」
「ちょっと賢斗くん!違が……」
奈々夏の言葉を完全無視して賢人は勘違いを続ける。
戸惑っていた奈々夏もこのままではマズイと思い賢斗の顔を両手でぐっと奈々夏の方に向け真剣な眼差しでひゅっと息を吸い込む。
「私の話をちゃんと聞いてッ!」
奈々夏の大声が部屋に響く、確実に外に聞こえているがそんなことはお構い無しだ。
「賢斗くん、早とちりしすぎだよ。私は賢斗くんと別れなくないよ」
奈々夏の言葉に賢斗は目を丸くする。
「でも……賢斗くんに嫌われなくなくて、ずっと言えなかったことがあるの」
「見ててね」と言って、貞子に見せた時のように口を開ける。
その裂けた口を見て賢斗は丸くしていた目をさらに大きく見開く。
「お前、それ……」
驚きのあまり言葉を失う。
賢斗の反応に奈々夏は手を賢斗から離し口を隠した。目には少し涙が溜まっている。
「ごめんね、気持ち悪いよね。私、貞子と同じ幽霊で口裂け女なんだ」
賢斗から距離を取り口を隠したまま話す。
「ずっと言わなきゃって思ってたの、でも怖くて……賢斗くんが私から離れるんじゃないかって」
目にはどんどん涙が溜まっていき、堪えているのか顔が少し赤くなっている。
「奈々夏……」
賢斗は言葉が見つからなかった。その代わりに優しく奈々夏が口を隠す手をどけて、頬に触れる。
裂けた口に指が触れる。
「本物……なんだな?」
「う、うん」
賢斗は頬に触れていた手を後頭部にまわし、そのまま奈々夏を抱き寄せる。
「け、賢斗くん?」
「まぁ、関係ないな」
奈々夏を抱きしめる腕に力がはいる。
「賢斗くんは気持ち悪くないの?」
「驚きはしたよ。でも、そんな風には思わない。まさか俺がこんなことでお前のことを嫌いになるとでも思ったのか?」
「だって……今まで人に見せたこともなかったし、すごく不安で……」
奈々夏の目からさっきまで溜まっていた涙が賢斗の胸に顔を埋め、不安から開放された安心感と喜びでポロポロと流れ出す。
「ったく、俺的にはもっと信用してほしい限りだよ。お前が何でも関係なく愛してるよ、奈々夏」
「うん……!うん……!」
安心しきったのか奈々夏は賢斗の胸の中で眠ってしまった。
賢斗は奈々夏を起こさないように体勢を戻して寝息を立てる奈々夏の頭をそっと撫でる。
「あ、口戻ってる。はぁ〜、裂けてても裂けてな無くてもやっぱり可愛いなぁ〜」
賢斗と奈々夏のバカップル度合いというより、賢斗のバカ彼氏度合の方がヤバいようだ。
ゆるゆるの笑顔で眠る奈々夏をのぞき込むその姿はさっきまでの優しいイケメン彼氏の面影はなくただの変態だ。
「奈々夏ぁ〜」
最後まで読んでいただきありがとうございます。今回は奈々夏の賢斗への告白でしたがどうでしたでしょうか?
賢斗が変態だというのが分かった話でしたが今後のこの2人も楽しみしていただけたらなと思います。
それでは今回はここらでお開きとさせて頂きます。
次回を楽しみ待っていて頂けたら励みになります。