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職業幽霊の同居人  作者: 方角ノ辰巳
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最終話『永遠の呪い』

今回も読みに来ていただきありがとうございます。今回で最終話なので楽しんでいただけたら幸いです。


 賢斗や奈々夏、勇や麗依奈さんに動画を送った次の日に携帯を見てみると皆から返信が来ていた。

 

 『奈々夏と動画みたが驚いたぞ! すぐに会いに行くから待ってろよ! って言いたいところなんだがすぐにそっちに戻れそうにないんだ……帰れる日程を送るから待っておいてくれ By賢斗&奈々夏』

 

 賢斗と奈々夏はここからかなり離れた大学に通っていて今は寮暮らし、こっちに帰ってくるのも年に数回ある程度でかなり忙しいらしい。

 

 『色々詳しい話を聞かないといけないようだな。次の大会が終わったら長期間大会には出ないし、日本に長く滞在するからその時に合わせてくれると助かる。貞子によろしく伝えておいてくれ By勇』

 

 勇は今アメリカのトッププロゲーマーチームの一員となっていた。

 実は半年ほど前にある大人気大規模オンラインサバイバルゲームをやっていた時、勇一人でそのチームの四名を完膚なきまでに叩きのめしたらしい。そして、そのチームに勧誘され今はアメリカで暮らしている。

 大学はアメリカの大学に編入してそれなりに楽しんでいるらしい。

 

 『動画みましたよ。まずは貞子さんにおかえりなさいと伝えてください。私は仕事で会える日を見つけるのは難しいですが皆さんで集まるならまた私の家を使ってください、途中参加は必ずさせてもらいます By麗依奈』

 

 最近はByをつけるのが流行っているのか全員がByをメールの最後につけている。

 

 「翔さん、随分嬉しそうですね」

 「みんなお前が帰ってきたことを喜んでるよ」

 

 俺がそう言うと、私があまり覚えていないのが申し訳ないですと笑いながら答えた。

 

 「それにしてもみんなと会うのは俺も久しぶりだな。賢斗も勇もずっと帰ってこなかったから」

 

 最後に集まったのは三月頃、それから多少は連絡を取り合っていたが互いに忙しくて会えていなかった。

 なんとなく貞子の方をチラッと見ると横に座ってテレビを見ている貞子の横顔が目に入る。

 貞子のいなかった日々、ずっと長くて重たい日々だと思っていたが今思えばそんなのは一瞬で今の時間が長く感じるのは望んだ日々だからだろうか。

 

 「な、なんですか?」

 「いや、こうやって横並びでテレビ見るのも久しぶりだなぁって思ってな」

 「だからってそんなに見ないでください。なんか……変な感じです……」

 

 少し顔が赤くなっている。

 相変わらず普段は肝が据わっているのに予想外のことが起こるとダメだな。


 それから一ヶ月がたった。

 メールの返信があってからかなりの日数がたったのだが色々とお互いに予定が忙しくいまだに日程がまとまらなかった。

 

 「どうせならみんなで同時に会いたいしなぁ」

 「皆さん忙しんですね……」

 「うーん、私も凛もの部活も最近少し忙しくなってきたからね……」

 

 三人で予定表を見ながら唸っていると写真付きのメールが勇から送られてきた。

 メールを開けるとトロフィーを掲げながら大柄のアメリカ人に胴上げされている。

 

 「これ見てみろよ」

 「なんですか? なにかの大会で勝ったんですか?」

 「ああ、勇は今プロゲーマーなんだ」

 

 メールの本文には大会が終わって優勝したこととそろそろ日本に帰るとのことだった。

 さらにメールが届く。

 

 『ようやく空きが出来た、そろそろそっちに帰るから待っていてくれ』

 

 賢斗からだった、本当にこいつらは仕組んでいるんじゃないのかってくらいタイミングがいいな。

 

 「近々、全員が集まれそうだ」

 

 それからメールで日程や集まる場所などを話し合ってようやく会うことが出来る。

 

 「麗依奈さんの家で良かったのでしょうか?」

 「ああ、麗依奈さんがぜひうちでしてくれって言ってくれたしお言葉に甘えることにしよう」

 

 メリーは一足先に麗依奈さんの家に行って準備の手伝いをしている。

 

 「はぁ〜なんだかとても緊張します……」

 

 夜道でしっかりはわからないが確かに貞子の表情はいつもより硬いような気がした。

 

 「なんの心配もいらないよ」

 「そうなんですが……やっぱり変な緊張感と言いますか……」

 

 そんなド緊張中の貞子、いつの間にか麗依奈さんの家の前についていた。

 

 「さぁ、本日の主役の入場だ」

 「翔さん、からかわないでください……!」

 

 貞子は扉の前に立ち俺が扉を開けるといっせいにクラッカーの音が鳴り響く。

 

 「貞子! おかえりなさい!」

 

 全員がいっせいに貞子の帰りを喜びすぐさまクラッカーを投げ捨て貞子の周りを取り囲んだ。

 

 「貞子! ほんとに帰ってきたのね」

 「おお! マジで本物の貞子だ!」

 

 誰しもが口々に話しかけるせいで貞子はあたふたしている。そんな貞子を眺めているのも面白いがそれじゃ進まない。

 

 「おいおい、お前ら! とりあえず中に入ってから話すぞ。貞子が見るからにあたふたしてる」

 

 俺の声で話しながらもリビングに入っていくと麗依奈さんがすぐに一人づつに酒とジュースを注いでくれた。

 

 「それじゃあまず! 貞子の帰還を祝って乾杯!」

 

 いつも通り賢斗に乾杯の挨拶をさせそこからは好きに話し、好きに者を食べた。

 

 「だから! なんで賢斗は俺の酒をとるんだよ!」

 「イェーイ! しょうの唐揚げもーらい!」

 「あっ! 勇! お前!」

 

 また普段通りのやりとりだ。

 

 「集まったらこんな感じなんですか?」 

 「まぁね、久しぶりに見てどう?」

 「なんと言いますか……懐かしくてとても楽しいです」

 

 貞子の笑顔は本当に嬉しそうだった。


 それから話した基本的な話はどうやって貞子が戻ってきたのかとかだったが日をまたいで喋り続けた。

 それも貞子自身が詳しくわかってないからなんとも言えないが本当に昔に戻ったようだった。

 真夜中にふと目が覚めた、机の上や台所はそれなりに片付けられている。メリーと凛の姿がないのは部屋で寝ているんだろう。

 

 「ん? 貞子?」

 

 貞子が庭の椅子に座っている。


 俺は缶チューハイを二本持って貞子の机をはさんで横に座る。貞子は一瞬驚いた顔をしたがすぐにまた月に顔を戻した。

 

 「寝れないのか?」

 「そう、ですね」

 

 俺はコップにチューハイを一本注ぎ貞子の近くに置く。貞子はありがとうございます、と言って一口チューハイを飲んだ。

 

 「綺麗な満月でなんだか、あの日のことを思い出してしまいました」

 「そういや、あの日もこんな満月だったな」

 

 貞子はまたチューハイに口をつける。

 

 「私がいなくなってから色々変わりましたか?」

 「ああ、変わったよ。メリーはお前の代わりになろうと必死で料理覚えたりしてたな」

 「そんなことがあったんですか」

 

 笑う貞子。そこから、貞子がいない間に起きたことを色々話して缶チューハイ1本をゆっくりと飲み干した。

 

 「満月かぁ………あ……!」

 

 貞子は何かを思い出したような声を出す。

 

 「ん? どうした?」

 「いえ……その……」

 

 顔が赤い。

 意を決したのかバッと俺の方を見て口を開く。

 

 「私がいなくなったあの日、なんて言ったんですか? 最後なんて言ったか聞き取れませんでしたし……」

 

 俺が何を言ったのかはだいたい予想がついてるのだろう。だから顔が赤くなっているんだ。

 

 「さぁな……そんな前の事忘れちまったよ」

 「え!? う、嘘ですよね?!」

 

 貞子が少し動揺するが俺はあんな恥ずかしいこと何度も言いたくはない。

 

 「それに、言わなくても大体分かってるんじゃないのか? 顔が赤いぞ?」

 「え……いや……そ、それは……」

 

 あからさまに顔が真っ赤になってゆく。

 

 「予想でもいいから言ってみろよ」

 「うぇ……それは、翔さんが私のこと、す、好きだって……」

 「ふーん」

 

 顔から火が出そうなほど真っ赤になっている貞子を見るとおかしくて仕方なかった。

 

 「そ、それで……なんて言ったんですか?」

 「だから、覚えてないって」

 「んなっ!」

 

 それから顔を真っ赤にして怒ってくる貞子を見て大爆笑した。なんて言ったかはいつかまた、そのうち、時が来れば言うことにしよう。

 一時的に仕方なくなった同居人、今となってはずっと一緒にいれることを望むほどの存在になった。

 そんな貞子は八つ当たりなのかコップにこのっている缶チューハイを一気に飲み干してブツブツ言っている。

 

 「貞子、これからもよろしくな」

 

 唐突の俺の言葉に目を丸くしてからまた顔が赤くなり、下を向いてしまう。

 

 「はい……よろしく、お願いします!」

 

 そうして俺達の同居生活が再びちゃんと始まったような気がした。

 

 「呪いのブルーレイ、ある意味本当に呪いだな」

 「翔さん? 何か言いました?」

 「いや、何も言ってねぇよ」

本当に最後まで読んでいただきありがとうございます。最終話でしたがどうでしたでしょうか?今まで楽しんでいただけましたか?本当に今までありがとうございましたという感謝しかありません。

いつかまた、別の話を書いて投稿した時にまた読んでもらえたら嬉しいです。

それでは今まで本当にありがとうございました。

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