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職業幽霊の同居人  作者: 方角ノ辰巳
2/21

第二話『もしもし、私……』

少し早いスパンでの投稿出来たかなと思っています。読んでいただいて楽しんでいただければ幸いです。

職業幽霊の同居人第二話、ブレイクタイムがてらにどうぞ。

 望まない同棲生活が始まって三週間がたった。


 この三週間で俺は気に入らないことが出来た。それは貞子が家事と料理を完璧にこなすからだ、家事ができるのはありがたいしいいんだが、俺より料理が美味いのが気に入らない。


 それに、毎月二万円の食費をまだ半分も使わずに困ること無く食材を買ってくる。しかし、霊力が戻る気配が一切ない。


 「翔さん、何でそんな怖い顔をしているんですか?」

 「なんか、お前の方が俺より料理上手くてなんかむかつく」

 「アハハ、誉め言葉として受け取っておきます」


 昼間俺が学校へ行っている間は部屋の電気を消しているらしく、電気代も上がっていない。


 「お前、三週間も経ったのに霊力が全然戻ってないな」

 「うぐっ! そ、そうです、ね」


 明らかに目を泳がせる。

 

 三週間一緒に暮らして貞子の性格はそれなりに理解した、こいつは嘘をつくのが下手で痛い所を突かれるとものすごく動揺する。つまりこいつは今何か隠したな。


 「お前なんか隠したな?」

 「え、あ……うっ……お店の特売品を買うために霊力で存在感を無くしてお一人様限定を二、三回買いました……」


 俺は少しため息をついた。内容が内容なだけに怒るに怒れない、実際貞子が来てから生活がとても楽になった。


 「ったく、そんなんで霊力は回復するのかよ。あと、一つ疑問があるんだが?」

 「なんですか?」

 「お前外はそのカッコで出歩いてるか?」

 「そうですね」

 

 こいつ下着とかどうしてんだろ。それより、この先服がその白いワンピースにしては丈の長い服だけってわけにも行かないな。

 

 「明日服買いに行くぞ」

 「え?」

 「だから、明日は土曜だから一緒に服買いに行くんだって」

 「でも、大丈夫ですよ?」

 「それだけじゃ不便だし、毎日同じ服ばっかり着るわけにもいかないだろ」

 

 俺はそう言って立ち上がり風呂へ向かった。

 

 「ほんと、何だかんだ優しいですね」

 「ん? なんか言ったか?」

 「何も言ってませんよー」



 嬉しそうに微笑む貞子を見て、変な奴だなと思いながら風呂に入った。


 「翔さーん」

 

 扉の向こう側から貞子の声が聞こえてきた。

 

 「んー? なんだー?」

 「携帯鳴ってますよ?」


 確かに貞子の言うとうり俺の携帯の着信音が聞こえる。


 「誰から?」

 「非通知になってます」

 「あー、切っといてくれ」

 「分かりましたー」


 貞子がとたとたと小走りで携帯を切りに行く足音を聞きながら俺は小さく息を吐き、風呂に肩まで入った。


 「ふぅ〜。貞子ぉー風呂空いたぞー」


 俺はいつも通りバスタオルで頭をガシガシ拭きながらリビングに入る。


 「って寝てるじゃん。おーい、貞子ー起きて風呂入れー」


 肩を揺らすが完全に眠っていて起きる気配がない。俺は仕方なく貞子を抱き抱えベッドまで運んだ。


 「俺もそろそろ寝るか」


 俺は布団を敷き、部屋の電気を消してゆっくりと瞼を閉じた、その時マナーモードにしていた携帯が揺れた。


 非通知からの電話、俺は怪しく思い電話を切る。しかし、数十秒後にまたかかってくる、それが二、三回続いた。流石にイラッときて電話に出てやった。


 『もしもし私メリーさん……』

 「俺の知り合いにメリーとか居ないんで」

 『え……!?』



 通話を切り、携帯の電源自体を切った。そこから俺はすやすやと眠った、それにしてもメリーって誰だろう、かなり幼い声だったけど。


 次の日、俺たちは約束通り貞子の服を買うために大きなショッピングモールへ出かけた。


 今は十一月中旬で貞子の服装は肌寒そうだ。寒くないと言い張ってるが見てるこっちが寒くなる。


 「とりあえずこれ着ろ。見てるこっちが寒くなるから」

 「え? あ、ありがとうございます」

 

 着ていた上着を肩にかけてやると少し顔を赤くしながら袖を通した。


 数十分後ようやくショッピングモールに着いた。ショッピングモールの中に入ると貞子の目がキラキラしていた。

 

 「翔さん! 翔さん! すごく大きなお店ですね!」

 「お前ショッピングモール来るのは初めてなのか?」

 「ショッピングモールって言うんですか? 始めて来ました! 買い物はだいたい近くの商店街でしたから。それにしても凄いですねぇ〜」

 

 感嘆の声を漏らしながらキョロキョロとせわしなく頭を動かしている。

 

 「それじゃあ、服売り場に行くぞ」

 「はい、そうしましょう。それにしてもこんなに広いと迷子になっちゃいそうですね」

 「ハハ、迷子になっても探さねぇからな」

 「えぇ、酷いですねぇ」


 服屋では貞子に上下の服を三着ずつと靴下、それと上着を1着は絶対に買うよう言った。


 貞子が選んだのはシャツ三枚にオフショルダーで白のセーター、スカートとホットパンツとジーンズ、それと黒のジャケット。


 服を買って満足そうに笑顔を浮かべる、荷物はもちろん俺が持っている。


 「いいんですか? ほんとに全部買って貰っちゃって……一応お金はあるんですよ?」

 「ん? いいよ。この金はお前のおかげで浮いた光熱費と食費も入ってるから。それに最近バイト代上げてもらったしな」

 「そうですか、本当にありがとうございます」


 ぺこりを頭を下げる貞子に俺は二万円渡した。


 貞子は不思議そうに首を傾げ俺の顔を見る。


 「えっとぉ……これはだなぁ」


 俺は言いにくく目をそらしてしまいながら言う。


 「どうしてるかは知らないけど、その、買わないとまずいだろ? 下着、とか……」

 「なっ! ま、毎日ちゃんと洗ってますよ!?」

 「別にそこは疑ってねぇよ」

 

 俺の言葉に顔を真っ赤にしながら、ワーキャー何かを言ったあとに黙り込みどことは言えないが手で隠すような姿勢をとって上目遣いで俺を睨む。


 「エッチ……」


 そう呟いて二万円を握り貞子は下着売り場の中へ入っていく。

 「えぇ……俺が悪いのかよ……」


 力なく呟きながら俺はベンチに座り込む。


 「うぅ、下着って色々あるんですね……」

 「お悩みですか? お客様」

 「え?」


 貞子に突然話しかけてきたのは金髪でオシャレなお姉さんだった。

 「表にいるのは彼氏さんですか?」

 「え?! ちちち違いますよ!」

 「あはは、そうですか。でもお客様可愛いですから、少しセクシーな感じの下着でもいいと思いますよ?」

 「そ、そうですか?」

 「はいぃ〜。まずはバストサイズを計らせて頂いてもよろしいですか?」



 そう言って店員のお姉さんはメジャーを取り出してきた。

 

 「あ、お願いします?」

 「はいぃ〜それでは失礼します」

 

 お姉さんは腕を貞子に回しバストサイズを測り始める。その間貞子は妙にドキドキしていた。

 

 「えっと……トップとアンダーの差から……AAカップですね!」

 「あ……はい……」

 

 わかっていても辛いものだなと貞子はここでしみじみと感じてしまった。

 

 「それではこちらの下着なんてどうでしょうか? 大変お似合いになると思いますが?」

 

 渡してきたのは少しシースルーの上下の下着だった。


 「コレだったら彼氏さんもイチコロです!」

 「だだだから彼氏じゃ無いです! そ、それにこんな下着……は、恥ずかしいです!」


 そう言って店員に突き返し、普通の下着を上下のセットを四つ買って急いで店を出た。


 「お、随分早かったな、ってなんでそんなに顔が赤いんだ?」 

 「うう、何でもないです……」

 

 うつむき加減に小さな紙袋を抱きしめる。深くは聞かないでおこう。


 「これ、お釣りです」

 「お、おう……」


 貞子の顔はまだ少し赤い。


 「一階にあるフードコートのジェラートでも食べるか」

 「……はい」


 俺が話しかけるとさらに顔を赤くして俯く。


 貞子をテーブルに座らせ、買ってきたジェラートを渡す。


 「イチゴでよかったよな?」

 「はい、ありがとうございます」


 小さなプラスチックのスプーンでジェラートを救い口に運ぶ。


 これは、メチャクチャ美味い。さすがあのバカップルお墨付きの店だ。


 「あの、翔さんは何を頼んだんですか?」

 「俺か? 俺はラムレーズンだけど、一口食うか?」

 「いいんですか」

 「ああ。ほら、あーん」

 「え?」


 貞子は顔を赤くしてキョロキョロと周りを見だす。


 「どうした?」

 「いえ、そういうのは人前では……」

 「そんなこと気にすんなよ。はい、あーん」

 「う、うぅ……あーん……」

 「どうだ?」

 「美味しいです。美味しんですけど……すごく、すごく恥ずかしいです……」


 何をそんなに恥ずかしがるのか分からないがジェラートを食べ終え、店を適当に回り、夕食を済ませ、帰ることにした。

 「今日はありがとうございました」

 「いいよ、俺も楽しかったし」

 他愛もない話をしていたらいつの間にか家に着いていた。

 

 俺は家についてふと携帯の電源を切ったままなのを思い出した。携帯の電源をつけると着信履歴に非通知の電話番号が何百件も来ていた。流石にこれは怖かった。

 メリー、ってそういえばそんな幽霊の話あったな。


 「なぁ、さだ……」


 貞子の同業者かと思い、聞こうとした時に携帯の着信音が鳴り響いた。


 電話に出ると予測通りの言葉と少し意外な言葉が来た。


 『あ、やっと出てくれた……もしもし私メリーさん』


 ちっさくやっと出てくれたって言ったのは放っておこう。あと声が少し嬉しそうで、幼い女の子の声だった。


 『今、西河公園の前にいるの』


 それだけ言うとガチャりと電話が切れた。

 西河公園ってここから結構行った事だよな。

 

 「翔さん? どうしました?」

 「ん? メリーって娘から電話がきて今いる場所を教えてきたんだけど」

 「ああ、それ多分私の同業者ですね」


 やっぱりな。さてと、無視するか乗ってみるか。

 そう考えていると再び着信音がなった。

 

 『もしもし私メリーさん、今

交差点を右に曲がったよ』

 「え? 右?」

 

 俺の言葉を聞く前に電話が切れた。

 

 「メリー、道間違えたと思う」

 「マジですか?」

 「うん、マジ」


 二人で唖然としていると着信音が再び鳴る。


 『もしもし私メリーさん、今交差点にいるの……』


 声が少し動揺している。

 そしてまたかかってきた。

 

 『もしもし私メリーさん、今……西河公園にいる……』


 声が少し涙声になっている。


 『もしもし私メリーさん、今交差点を左に曲がったよ』


 ようやく、正解の方に曲がった。


 『もしもし私メリーさん、今……住宅街……?』


 これは、完璧に迷子になってるな。


 「なぁ、貞子。メリーここ来れないかも」

 「珍しい事もありますね」


 貞子は呑気に本を読んでいる。

 同業者ならもう少し心配してやってもいいだろ。

 

 『もしもし、私……ぐず…メリーさん……ひっく…今……今……ぐず……』

 

 完璧に泣いてるな、この娘。


 『ここどこ……?』


 俺は思わずコケそうになった。

 おいおい、しっかりしてくれよ。


 「交差点までは戻れるか?」

 『え?あ、分かんない……』

 「はぁ……ちょっとそこで待ってろ」

 『う、うん…』

 

 俺は上着を着て、外へ出た。


 「迎えにいくんですか?」

 「ああ、なんかめっちゃ迷ってるし」

 「怖くないんですか?」

 「お前みてたら怖いとか思わなくなった。じゃあ行ってくるわ」

 「はい、行ってらっしゃい」


 俺はとりあえず走って交差点まで行った。そして西河公園の方向から左向きに進み、俺の家につかないように住宅街を回った。

 数分うろうろしていると、道の端の方でちょこんと座っている俗に言うゴスロリのような服に黒のマフラーの付けた銀髪の女の子がいた。


 「えっと……君がメリーさんかな」

 「うっ……ふぇ……」


  口元がほころび、目から涙が溢れ出てきた。

 「うぅ、貞子先輩を返せぇ……!貞子先輩を誑たぶらかしてぇ……!」


 泣きながらも殴りかかってくるも、ぺちぺちと皮膚が少し痛い程度だった。

 

 「お、おい。返せってなんだよ? それに先輩って……あいつがいつまでも居座るだけで……」

 

 俺は突然のことに戸惑いを隠せなかった。

 

 「あーあ、やっぱりこんなことだろうと思いましたよ」

 

 後ろの方から声が聞こえて振り返ってみれば貞子が買ったばかりのジャケットを着て立っていた。

 

 「やっぱりってどういう事だよ?」

 「えっと……話すと少し長くなりそうなので家に一旦戻りましょう」


 メリーを引き連れて俺達は家に帰った。とりあえず体が冷えきっていたメリーを風呂へ入れた。

 

 「メリーは仕事の後輩で基本私が面倒見てました」

 「面倒見てたってお前との接点を感じないんだが?」

 

 貞子は少し気まずそうな表情をして、声を抑えて話す。

 

 「私たちの職には必ず師匠がいるんですがメリーの師匠は少しテキトーな人で霊力の使い方を教えた時点で仕事をメリーと変わって蒸発してしまったんです」

 「それでお前が面倒見てたのか?」

 「はい、まだメリーは小さいですから……」


 メリーが自分で言うには八歳らしい、一応師匠から、銀行のカードと番号を教えて貰ったものの使い方も分からず貞子の世話になっていたということだろう。

 

 「お風呂上がった……」


 子供用の服などあるはずもなくとりあえず俺のTシャツを着させたが何だかとってもいかがわしい。

 

 「なんでメリーがここにいるんですか? 仕事もそれなりに上手くいってましたよね?」

 「貞子先輩が悪い人に捕まったって聞きたから……」

 

 しゅんとした表情をする。


 「おい、悪い人ってのは俺の事か?」

 「どうなんでしょう? でも、私たちの仕事は成果をちゃんと報告しないとお金は出ませんし、そんな噂が流れてもおかしくは無いですね」

 「あと、住んでたアパートから一人で住んでるの見つかって追出された」

 

 一瞬驚いたがそれもそのはずだ。子供が一人で住んでいるなんて大家としてはたまったものじゃないだろう。

 これからどうして行くのか、メリーの表情はどんどん暗くなり、目に涙が貯まる。

 

 「えーっと……もし、メリーが良いならここに住むか?」

 「え……?」


 涙で潤った瞳は驚きと戸惑いで満ちている。


 「む、私の時は嫌がったのになんでメリーの時は翔さんから誘ってるんですか?」

 「ここで追い出すのも最低だろ?」

 「過剰な優しさは良くないことを考えてるってししょうが言ってた……」

 

 目をあちこちに向けながら俺の顔色を伺うように言ってくる。

 

 「そりゃ、今日会ったばかりの奴は信用出来ないだろうししなくていい。お前が信じるのは貞子で俺は家においてやるだけって考えてくれれば良い。俺を信じてくれるのはずっと後でいいから、ここに住みな」


 メリーは困った様にチラチラと交互に俺と貞子の顔を見る。


 「良いんじゃないですか? メリー、この人は見た目はちょっと怖いけどとても優しい人なんですよ?」

 「ホントに……住んでいいの……?」


 心配そうに俺の顔を見る。

 

 「ああ、住んでいいよ」

 「メリー、この人は顔は怖いけどとっても優しい人なんですよ」


 貞子はとても優しい声音で頭を撫でながら言う。

 それよりもこいつは何回俺の事を見た目が怖いといえば気が済むんだ。


 「うぅ……ぐず……」


 メリーの瞳から涙がこぼれる。堪えようとしてもとめどなくこぼれてくる。

 ついに堪えきれず、声を上げて泣き出す。ずっと寂しかったと不安だったと次々と心の声を漏らす。


 こうして俺にもう一人愉快な同居人が出来た。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

自分ものなデートしてみたいなぁなんて思いながら書いていましたが、今回出てきた新キャラのメリーさん。

前作を読んでいただいた方は思ったかも知れません、「また銀髪かよ」とすみません好きなんです。無駄話をしてしまいましだが、次の話も読んでいただけたら嬉しいです。

ありがとございました。

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