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職業幽霊の同居人  作者: 方角ノ辰巳
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第十八話『メリーの願い』

今回も読みに来ていただきありがとうございます。それでは楽しんでください。



 じいちゃんの家で過ごすお盆休み、本当はバイトで一気に稼いでおきたいタイミングだったんだがそんなことがどうでもよく感じるほど楽しいお盆休みだった。


 楽しい時間は早く流れ、気がつけばお盆はもう終わろうとしている。そろそろ俺とメリーは家に帰らなければならない。

 

 「翔はななしさんのことどうするの?」

 「どうするって言われても住む家がないならこの家に住んでくれても構わないが」

 「そうじゃなくて! ななしさんは貞子さんなんだよ?! 翔も本当はわかってるよね?」

 

 メリーの言葉に俺は黙ってしまう。ななしの仕草や話し方や笑い方何から何まで貞子と同じ、それでも俺は頑なにななしを貞子と認めなかった。

 なんの意地なのか俺にも分からない、何をそんなに恐れているのか。黙ったままの俺を見つめるメリーの視線が俺にはとても痛くて辛い。

 

 「ただ今戻りましたー」

 

 いつも通りおばあちゃんの手伝いを終わらせたななしが帰ってきた。手には大きなスイカが抱えられている。

 

 「みんなで食べましょう!」

 

 ななしはスイカを切り分けて縁側に三人で並んで座って食べる。このスイカはおばあちゃんが作ったらしく甘くてとても美味しいスイカだった。

 

 「もうすぐお盆も終わりますね、翔さんとメリーはいつ帰るんですか?」

 「明後日くらいかな」

 「ではそろそろ準備を始めていかないといけませんね。私も手伝いますよ?」

 

 メリーは俺の方をちらっと見る、何か言いたげな表情だったが何も言わずスイカに顔を戻しかぶりついた。


 俺は小さなため息をつく。

 

 「ななし、俺達が帰る時に一緒に来ないか? メリーもお前がいてくれたら嬉しいだろうし」

 

 ななしは目を丸くしていたがプッと吹き出してから大笑いをした。

 

 「一緒に来ないか? って私を翔さんの家に居候させてくれるんですか? 冗談キツすぎますよ」

 「ななしさん! 冗談じゃなくてほんとに私たちと一緒に暮らさない?」

 

 メリーの声でななしから笑いが消えた。メリーの目を見つめながらななしは優しく微笑む。

 

 「私はここがとても好きなんですよ。不便ではありますが私にとってここは故郷みたいなものなんです」

 

 ななしの言葉にメリーは悲痛な表情を浮かべ、泣きだしそうなほど目は潤んでいる。

 

 「ですが、お二人と出会ってある夢を見る機会が増えたんです。それは多分私の失くした記憶だと思うんです」

 

 ななしは俺とメリーの方を見てニカッと笑う。

 

 「だから、お二人といれば無くなった記憶が戻るかも知れませんね」

 「そ、それって」

 

 メリーは笑顔を浮かべながら涙を流している。

 

 「はい、私も連れていってください」

 

 その言葉を聞いた瞬間、メリーはななしに飛び付きななしの胸で盛大に泣いた。


 二日後


 帰りの電車、行きは二人だったが今は三人。ななしは荷物などなく電車のの切符を握りしめている。

 

 「電車って早いんですね!」

 

 ななしは初めて電車に乗った子供のように目をキラキラと輝かせながら外を眺めている。始発に乗ったため窓の外はまだ若干切りがかかっているが、それがまたいい景色だ。


 何時間にも及ぶ電車移動、各駅停車から新幹線に乗り換えいつの間にか日がだいぶ昇ってきていた。

 日が昇ってきたというのにななしとメリーは座り心地抜群の新幹線の椅子に負け爆睡している。

 メリーとななしが寝て静かになったところで帰り際に買った本を開き目を通す。サスペンスもので読んでいくうちにどんどん世界観に引き込まれていく。

 

 「ん、んなぁ……んん……翔さん、起きてたんですか?」

 

 ななしが起き、眠そうな目を擦りながら話しかけてくる。俺は読んでいた本を閉じて一言返事をする。

 

 「そういえば、なんで私を一緒に来ないか? なんて誘ったんですか?」

 「え? そ、それはだな……メリーと俺が昔一緒にいた人にお前がすごく似てるんだ。それでどうせあの家で一人なら俺たちといた方がって思ったんだ」

 

 帰ってきた言葉が意外だったのかななしは少し反応に困ったような表情をしている。

 

 「私に似てるってそんなにですか?」

 「ああ、だがこの話は終わりだ」

 

 これ以上話せばいつかボロが出てななしに延々と言われ続けるはめになりそうだからな。

 

 「そうですか……残念です」

 

 そうこう話しているとそろそろ到着し、そこから再び各駅電車で家の近くの駅まで行く。

 

 「うう……翔……寝足りない」

 

 今さっき起こされたメリーは完全に寝起きモードで今にも二度寝しそうな勢いだ。

 案の定、各駅電車で再び爆睡。

 

 「なんだか……いっぱいビル? がありますね。あれがビルっていうんですよね?」

 

 感嘆の声を漏らす。


 駅につき外に出ると久しぶりに帰ってきたと強く実感した、見慣れたはずの景色がなんのなく新鮮に感じる。

 

 「綺麗な街ですね! 私もっと高いところからこの街を見たいです!」

 「じゃあ、展望台に行こうよ! あそこならこの街が一望できるはずだから」

 

 ななしの意見に賛成しメリーも提案をしてきた。

 

 「高いところから? だったらもっといい所がある。見たかったら俺についてきな」

 

 メリーとななしは顔を見合わせてから俺のあとについてくる。向かう場所はこの街唯一の山のある場所が俺のお気に入りスポットなんだ。

 

 「しょうぅ〜どこまでいくの?」

 

 メリーは面倒くさそうに付いてくるがその反面にななしは嬉しそうにスイスイついてくる。

 

 「ここだ」

 「ここですか?」

 

 ある場所だけ木が生えていなくてちょうど街の方を向いていて今はちょうど夕暮れ、とても異例な夕日が見えている。

 

 「すごい……とても綺麗……です」

 「翔、これは凄いよ」

 

 メリーとななしはいきをするのをわすれているのかのよう無言でただ沈みゆく太陽を眺めていた。

 

 「この街……どこかで見たことがあるような……」

 

 そうつぶやいた瞬間にななしの脳に大量の映像が流れる、頭に激痛が走りその場でうずくまるような状態になった。

 

 「どうしたななし?!」

 「ななしさん? ななしさん?!」

 

 そしてななしは痛みに苦しんでいるかと思えば糸が切れた人形のようにぱたりと倒れ込んだ。

 

 「おい! ななし! ななし!」

 

 流れる映像。それは自分の失くした過去なのかなんなのか全くわからない。ただただ凄まじい情報量だった。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今回の話もでななしと暮らすことにしたんですがこれからどんなことがあの3人でもしくはそのに賢斗たちに起きるのか楽しみにしといてほしいですね。

それでは今回はこれくらいで次回も楽しみに待っていただけたらなと思います。

ありがとうございました。

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