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職業幽霊の同居人  作者: 方角ノ辰巳
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第十六話『流れる時は早い』

読みに来ていただきありがとうございます。

今回の話も楽しんで最後まで読んでいただけたら嬉しいです。


 貞子が消えて三日がたった奈々夏とメリーもようやく落ち着いてきた。俺が家に帰った時からずっと泣きじゃくって大変だった。

 今思えば俺は貞子にとって酷な約束をしてしまったんだと気づいた。霊力の無くなるやつに対して霊力の力を信じるなんて笑うしかない。

 

 「メリーの様子はどうだ」

 「落ち着いたよ。奈々夏はどうだ?」

 「受け入れはしたがやっぱりな……」

 「そうか……」

 

 珍しく賢斗と帰る、奈々夏は今は一人でいたいらしい。メリーも少しだけ学校を休んでいたが今日から再び登校している。

 

 「お前は、大丈夫なのか?」

 「ああ、俺は大丈夫だよ。お前は俺の心配より奈々夏を心配してやりな、俺は本当に大丈夫だから」

 

 無理に笑う。

 ただ顔が引きつってるだけなのが自分でも良くわかる。それでも俺は笑わないと、みんなに心配はかけれない。貞子だって笑ってる方が嬉しいだろう。

 

 「こっから帰り道は逆だな。じゃあな、また明日」

 「翔……ああ、また明日」

 

 賢斗の事だ、俺が無理をしていることくらいお見通しだろう。それでも何も言わずにいてくれるあいつの優しさが俺は嬉しかった。

 

 「ただいま」

 「おかえり」

 

 家に入るとメリーが台所に立っていた。

 台所は少し散らかっていてメリーの指には絆創膏が何枚か巻かれていた。メリーは自分の手には少し大きな包丁を手にしてはにかむように笑っていた。

 

 「翔が帰ってくる前に作ろうとしたんだけど難しくて……」

 「メリー……」

 

 貞子が俺が帰ってくる頃に晩御飯を用意してくれていたのを俺を元気づけるために真似しようとしたんだろう。

 

 「ありがとう、メリー。俺も手伝うよ」

 「う、うん」

 

 メリーは俺の料理を作る姿を見ながら、俺が頼んだことをしてくれた。

 

 「翔、私に料理教えて?」

 「料理か? ああ、いいよ。でも俺だけじゃ教えてやれる時間も少ないから奈々夏にもお願いしてみな」

 「うん」

 

 それからメリーは少しづつではあるが料理の腕は上達していき一ヶ月後には俺と当番制にして晩御飯を作れるくらいにはなった。

 

 「やっほ翔くん」

 「奈々夏、久しぶりだな」

 「そうだね」

 

 バイト帰りに偶然買い出し途中の奈々夏にであった。奈々夏とは貞子がいなくなって以来ずっとあっていなかった。

 

 「メリー張り切ってたよ」

 「なにがだ?」

 「翔くんに貞子先輩みたいにご飯作ってあげて元気にするって」

 

 そんなことを奈々夏に話していたのか。

 

 「メリーはほんとに健気だね」

 「ああ、あいつは俺の大切な……」

 

 俺はここで言葉が止まってしまった。

 

 「大切な?」

 「いもうと?」

 「妹兼娘じゃない?」

 

 奈々夏の言葉で俺は久しぶりに声を上げて笑った気がする。やっといつもの生活に戻ってきたがやっぱり部屋が物足りなく感じてしまう。

 

 「やっぱり会いてぇなぁ……」

 

 奈々夏と別れた帰り道、ポツリと呟いてしまう。


 それから二年の月日がたった。


 「メリーちゃん!凛ちゃん!卒業おめでとーう!」

 

 賢斗の声とグラスが当たる音が麗依奈さんの家に響く、近所迷惑になっていないか心配だったがそんなこと今日は気にしない。

 

 「俺たちは大学二年、メリーと凛は中学一年。麗依奈さんは社会人か」

 「なぁーにしんみりしてんだよぉー」

 「そーだそーだ。翔も飲めぇー」

 

 俺がつぶやくと勇と賢斗は早速酒を飲んだらしくウザ絡みを俺に始めてきた。

 そんな俺たちを見て笑うメリーと凛、呆れるように笑う奈々夏、見守るように優しい笑顔の麗依奈さん。


 二年間、長いようで短い歳月だった。

 

 「お前らうっせーんだよ! あ、賢斗お前俺の酒飲むな!」

 「いいーじゃん。俺のやるよ」

 

 それからあんまり記憶が無い、気がついたらみんな寝てるが俺は真夜中にふと目が覚めた。

 

 「今何時だ……」

 

 時計を見れば深夜二時をすぎていた。

 俺は二つのグラスに氷と缶チューハイを入れる。麗依奈の家の小さな庭には椅子が二つとテーブルが一つあり、一つのグラスを空いている椅子よりに置いた。

 

 「貞子、メリーも春休みが終われば中学生だってよ」

 

 今夜の月の明るさはあの日を思い出させるほどの満月だった。

 

 「お前はいつになったら帰ってくるんだろうな」

 

 思い出に浸りながらいるはずもない貞子に話しかけるようにグラスの酒がなくなるまで話し続けた。


 それから時というのは流れるのが早い。

 

 「メリー、俺のじいちゃんの墓参りに行くんだけど来るか?」

 「うん、行く」

 

 新生活が始まりようやく落ち着いた夏休み俺は久しぶりにじいちゃんの墓参りに行くことにした。

 新幹線をおり各駅停車に乗り換えてコンビニすらなさそうな田舎まで来た。かなり遠いから墓参りにもほとんど行かないが今回はなんとなく気が向いたから来てみた。

 

 「ふぅ……結構この階段も疲れるな」

 「うん、そうだね」

 

 二年前より少し身長も伸びて少し子供っぽさも抜けたメリーを見て俺はふと疑問に思った。こいつの彼氏とか俺に挨拶に来るのか?


 そんなどうでもいいことを思いながらようやくじいちゃんの墓についた。じいちゃんの墓はかなり汚れている。

 

 「これは洗うの大変だな」

 「うん、頑張る」

 

 そこから一時間ほどかけて緑色になっていた墓石は元の色を取り戻すまでに綺麗になった。

 俺とメリーは花を飾り手を合わせる。

 

 「さぁ、行くか」

 「行くかってどこに?」

 「じいちゃんちだよ」

 

 俺のじいちゃんの家は定期的に掃除してもらうよう業者に頼んでいるらしく今でも住めなくはない。

 ここから歩いて三十分程の場所に昔ながらの日本の作りの家が立ち並んでいる。

 

 「あらあら、御船さんのお孫さんかい?」

 「あ、はい」

 

 知らないおばあちゃんに声をかけられた。

 

 「そうかい。数日ここにいるのかい?」

 「はいそのつもりです」

 「娘さんとお墓参りなんて偉いねぇ。後で野菜持って言ってあげる」

 

 そう言っておばあちゃんは家の中へ入っていった。

 

 「娘さんだって」

 「まぁ近からず遠からずだろ」

 

 ここら辺の家は昔ながらというか庭が広い。


 久しぶりのじいちゃんに入ると縁側に白いワンピースを着た少女が一人座っている。

 腰くらいまである黒く綺麗な髪、そしてその顔はどこか見た事のある顔。と言うよりかは俺のよく知る顔と同じだ。

 

 「貞子……?」

最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回はかなり時間の流れが早く、翔たちは気がつけば大学二年生、メリーは卒業とそしてまた新たに展開が進みそうです。

最近どんどん暖かくなってきましたね、自分も長袖で外を出歩くと少し汗ばんでしまったりして、もう少し涼しかったらお花見とかやりたいな、なんて思ってるんですが今年は桜綺麗ですかね?

それでは今回はこれくらいで。

次回も楽しみに待っていただけたらなと思います。

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