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職業幽霊の同居人  作者: 方角ノ辰巳
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第十四話『親友』

今回も読みに来ていただきありがとうございます。今回も楽しんで読んでいただけたら喜ばしい限りです。


 太陽が完全に昇り、起床を知らせるアラーム音が鳴り響く。

 

 「やっべ、体が痛ぇ」

 

 俺はソファで少し変な体勢で寝いた体を伸ばし、携帯を見ようとしると白く綺麗な髪が目に入った。

 

 「メリー、お前何してんだ?」

 

 起き上がるとソファのすぐ足元にメリーは座り込んでいた。少し目が赤く腫れている。

 

 「しょう……」

 

 メリーは俺の顔を見るなり目に涙を浮かべ飛びついてきた。

 

 「お、おい」

 

 俺はこういう時どうしたら良いのか分からず、目で貞子に助けを求めるようにあたりを見渡す。しかし、貞子の姿はない。

 

 「貞子はまだ寝てるのか?」

 

 メリーは泣きじゃくりながら首を横に振る。

 

 「じゃあ、買い物か?」

 

 また横に首を振る。

 

 「貞子先輩は出ていった。先代の介護が必要になったからって」

 

 メリーは泣きながら途切れ途切れに話してくれる。

 

 「お別れの挨拶とか恥ずかしいから勝手だけど出ていきますって、もう会えないけど今までありがとうございましたって」

 

 メリーの言葉を俺は一瞬理解出来なかった。

 

 「そ、そうか……それは……残念だ。少し、この家も広くなりそうだな」

 

 落ち着いている素振りを見せる、動揺していないように見せる。それでも泣きじゃくるメリーを抱きしめる力が少し強くなってしまう。

 

 「しょう……ごめん……」

 「なんでお前が謝るんだよ。あいつは大切な人のところへ行ったんだ、仕方ないだろ?」

 

 なるべく、落ち着いて話す。

 メリーが俺に抱きつく力も強くなる子供にこれほど力があるのかと思わせるほど強く。

 

 「ったく、俺が何も知らねぇと思いやがって……せめて最後までここにいたらいいじゃねぇかよ……」

 

 メリーにすら聞こえないほどの声でボソッと吐き捨てる。


 見慣れた道や店との別れを惜しむように歩き自分の死に場所を探す貞子。

 大した荷物も持たず、貞子は思いの向くままにブラブラと翔の家から離れるように適当に進んでいく。

 

 「私の死に場所はどこにしましょうか」

 

 呑気な口調で呟いてみるも死への恐怖は拭えない、膝に力が入りきらずふわふわとした感覚があった。

 

 「翔さんはきっと怒ってるでしょう。消滅なら死体も出ませんしバレることは無いでしょうけど消滅じゃなかったら新聞の一面は飾れますね」

 

 軽口を叩きながらただ歩く、なるべくできるだけ遠くへ。

 

 「貞子!」

 

 突然後ろから肩を掴まれ声をかけられ、貞子は驚きながら振り返る。

 

 「あ、奈々夏さん……」

 「あんた何考えてるのよ!」

 

 奈々夏の顔は今にも泣きそうだった。

 

 「なんで、ここが?」

 「メリーちゃんから連絡があって走って探し回ったのよ。まだ遠くへ入ってないと思って……思ったより遠かったけどね」

 

 貞子にとってこれは最悪の出会いだった。奈々夏に出会ったせいでさっきまで堪えていたものが一気に溢れだしそうになる。

 必死に涙が流れるのを抑える。

 

 「そんな事より! なんで何も言わず一人になろうとしてるのよ!」

 

  貞子は奈々夏に抱き寄せられる。

 とても暖かく、優しく感じた。しかし、その優しさと暖かさは貞子の弱い部分を表に出してしまう毒でもあった。

 貞子は抱きしめる奈々夏から無理やり離れる。

 

 「ダメなんです。翔さんに私が死ぬところなんて見られなくないんです」

 「翔くんは最後まであんたと一緒に!」

 「そうじゃないんです! 翔さんが望んでなくても、私が嫌なんです。それに、メリーや賢斗さんや勇さん、そして勿論奈々夏さんにだって見られたくありません 」

 

 そんな貞子の諦めと強い決意が混じりあった表情は奈々夏を黙らせるのには十分すぎた。

 

 「そんなの……寂しすぎるわ……」

 

 奈々夏は声を絞り出す。

 

 「一人で勝手に死ぬなんて、ダメよ……そんなの。翔くんだって何も知らないわけじゃないのよ」

 

 奈々夏は堪えきれず頬に一滴だけ涙が伝う。

 

 「翔さんに話したんですか?」

 「いいえ、聞かれたのよ。貞子の体のことを体調が悪そうだからって、その時は誤魔化したけど貞子も知ってる通り翔くんは鋭いでしょ?」

 「だから私は行かないとダメなんです。奈々夏さん、ありがとうございました」

 

 貞子は笑って振り返りまた歩き始める。

 奈々夏は貞子を止めようと手を伸ばそうとするが言葉が見つからない、貞子の背中は少しずつ離れ、少しずつ小さくなっていく。

 

 「自分勝手すぎるのよ……バカ……」

 

 立ち尽くし、一滴、また一滴と溢れ出てくる涙は堪えても溢れて堪える声も嗚咽となって漏れる。自分の無力さに腹が立ち、膝から力が抜けていきその場に座り込んでしまう。

 

 「奈々夏?」

 「賢斗、くん……」

 

 涙を流す奈々夏を見て賢斗は少し驚くが何も言わずそっと抱きしめた。

 

 「なんで、何も聞かないの?」

 「無理に聞くべきじゃないかなって思ってな」

 

 賢斗は至って真面目に答える。

 

 「私、貞子の友達としてちゃんと、出来てたのかな?」

 「さぁ、友達って出来てたとか出来てないとかそんなんじゃないと思うんだ。でも、お前が泣いてまでそんなふうに思えるなら貞子も同じくらいお前のことを思ってるんじゃないのか?」

 

 奈々夏は賢斗の言葉にハッ取らせられ、すぐにポケットから携帯を取り出し電話をかける。

 

 「もしもし、翔くん?」

 『あ、えっと……奈々夏お姉ちゃん?』

 

 電話に出たのは翔ではなくメリーだった。

 

 「メリーちゃん? 翔くんはどうしたの?」

 『翔、さっき用事が出来たって急に飛び出してった。たぶん貞子先輩が出ていったから探しに行ったんだと思う』

 

 奈々夏はメリーの言葉に分かったとだけ返事をして電話を切った。

 奈々夏は貞子の親友であるために翔に全てを話そうとしたがその必要はなかった。

 

 「ハハ、私だって貞子のこと思ってるのに翔くんに全部先越されちゃったよ……」

 「そうか。さすが翔だな」

 

 賢斗がフッと笑うとそれにつられて奈々夏にも少し笑顔が戻った。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回の話は貞子と奈々夏の友情といいますか、大切な人を思って、って感じの話でしたがどうでしたでしょうか。

話は少し変わりますが昨日はホワイトデーです。男性は3倍返ししましたか?女性はちゃんとお返しされましたか?

自分は1人にもらいましたよ。美味し手作りのお菓子でした。

軽く自慢もしたので今回はここまで次回の話も楽しみに待っていただけたら嬉しいです。

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