第8話緑と敗北と仲間と
2Fへ降りてきた俺達。
「あんまり1Fと変わらないみたいだな。」
「タケルは油断が本当に上手ね。エアリーダー卒業はまだ先ね。フフフ」
「…油断大敵。注意散漫。」
う、うかつな発言は控えておこう。心の深いとこに刺さりそうだ。
「何かがくるよ!ちっちゃい緑みたいなの!」
お世話になっておりますプラチナ警報でございます。
「五月かうつみか伊藤、さあどーれだ!」
イッチ―の当たりのない三択クイズが始まってしまった。これは緊張感が足りない。
姿を現したのは、肌が緑色のこん棒をもったゴブリンっぽい生き物だった。
「ギュアァァァ!ギャギャ!」
奥からどんどん出てくる。
「超多くない?これヤバイよ。ごー、ろく、沢山!」
もう少しカウントできただろ、とか思いつつ、どうやって戦おうか考えているところに。
「…魔法、弓、遠距離攻撃。数を減らす。」
「おうよ!!」
「りょーかい!ファイア!!」
ヒュン!ヒュン!ゴゴゴォォ!!
前にいたゴブリン達を蹴散らしていくが、後続がどんどん近づいてくる。
「俺が出る!!援護頼む。」
「後ろは任せなさい!思い切って行きなさい!」
先輩の力強い声援を受け、飛び出す俺。
両手に刀を持ち暴れ狂う。
「うぉおおおおお!!」
倒しても倒しても、キリが無い。
後ろに漏れた敵を、先輩、イッチーが倒してくれるが、片手で、刀を振るう手がどんどん重くなっていく。
血を吸った分だけ重くなるかのように。
「ギギギ!ギギ!」
敵が途切れたかと思ったら、ゴブリンは一斉に下がり、ボウガンのようなもので矢を放とうとしてきた。
「危ない!!ファイア!!」
炎が広がり、ボウガンのようなものを矢ごと燃やしていく。
「…水と炎、同時発射。」
「わ、わかった!ウォーター!ファイア!!」
プラチナの目の前に水蒸気の塊が出来、前方の視界を塞ぐ。
「…戦略的撤退。」
「「わかった!」」
「下がるわよ。速やかにね。」
俺はしんがりを務めつつ、一階へ、出口へと急いだ。
「はぁはぁはぁ」
簡単に負けてしまった。
物量の前では全くと言って戦えなかったし、合図で後列のボウガンに驚かされた。
ゴブリンが兵隊のように動いていたのはさらに驚いた。
「あのゴブリンの群れの中に、リーダーが居るわね。ウチのエアーなリーダーとは違って戦略を分かってるのが。困ったものね。取り敢えず宿に戻って対策をたてましょう。」
「お、おう。」
「…了解。」
「次勝っちゃえばいいわけよ!余裕っしょ!」
プラチナは何か考え事をしてるみたいだ。
宿に到着し、みんなで話し合う。
「んー、どうやって戦って行けばいいんでしょうか。」
「よ、ヨワタケになってるじゃん!どうしたんだYO!」
「刀を手放して形無しって所ね。相手のリーダーを探して倒し、指揮系統を混乱させないといけないわね。」
「…敵多数。発見困難。」
やはり、なかなか突破口を見付けれないみたいよね。どうしよう。と困っていたところに
突然、プラチナが座禅を組み始めた。
「へ?プラチナちゃーん。一休さんごっこ?そもさん系?せっぱ系」
「ポクポクポク……チーン!超整いました!!!」
絶対座禅組む前に、答え持ってましたよね、白金さん…
「結果!はっぴょーーーーう!!!」
イッチーが浜ちゃんのノリで答えを聞き出すのを、みんな生暖かい顔でみまもる。
「コレを矢の先につけて、敵の真ん中に落とします。」
「ほうほう、それでそれで?」
「え、えっと。以上!!」
「プラチナちゃんのコレっていうのが、自信アリの商品なわけね。」
「お嬢さんお目が高い!コレは魔法石の周りに火薬を配置し、粘土で固め、紙で包んだ名付けて、ドンパッチです!」
コレはつかえそう。魔法式迫撃砲といったところだね。中心、または後方にいるであろうリーダーを直接叩けそうじゃないですか。
「素敵です。白金さん。」
「タケルくんに褒められちゃった。えへへ」
白金さんの顔が少しずつ赤くなっていく。
「…与一くんにお願いします。」
あ、あれ?亮子ちゃんもなんかいつもと違う…
「まかせとけ!一撃必中のすごいとこ見せちゃうぜ。」
「亮子、すごいとこが見えちゃいそうで良かったわね。フフフ。」
解決策がわかったところで、明日からも頑張るために鹿肉のステーキで力をつける僕達なのであった。
倒したゴブリンから銅貨でそれなりの生活はできるけど、もう一つのドロップの緑の魔法石が気になるなぁ。てか、あの乱戦でしっかり拾っている諸葛さんは凄い。
ゴブリンは魔法を唱えていなかったし、緑、緑かー。
「みんな、緑で思いつくものをなんか考えといてあたらしい、魔法が出来るかもしれないのでよろしくお願いします。」
「緑ね、多少思いつくものはあるわ。任せておきなさい。ヨワタケ君。フフフ」
「五月みどり一択なんだよなー。さつきーー!とか叫ぶんかな?ギャハハ」
「…辛島美登里…」
「ポクポク…ポクポク…出てこないわー。」
負けた事を忘れ、賑やかに夜が過ぎていく。しばらくし、皆それぞれ部屋に入っていった。
仲間のありがたさを感じながら、柔らかい枕の中に埋もれながら意識がなくなっていった。




