第6話狩りはウサギと鹿と共に
チュンチュン。
「もう朝かぁ。よく寝たなぁ。イッチ―朝だよー。」
眠気眼をこすりながら、イッチーを優しく起こして1階に行くと。
みんなが待っていた。
「おはよう。遅いわね。女性は待たせるもんじゃないわよ。フフフ」
「おっはよーん!武器は色々つくっといたよー!」
「…遅起きは16文キック…」
プラチナだけっとっても眠そうだ。みんなのために頑張り屋さんだなぁ。
「どんな武器をつくったんだい?」
「先輩のためにダガー、イッチーは弓ね。弦は自分で調整してね。私と諸葛さんは杖にしましたぁ。」
「「おーー!」」
仕事早いってレベルじゃないぞこれ!
「いろんな種類の魔法石が欲しくなるところなんだけど、今日は良いのとれるといいなぁ。」
鍛冶屋を超越した喜びを感じているみたい。
「朝ご飯を食べたら行くぞ!」
昨日作ってもらった刀の性で俺のテンションもやべぇぜ。
「あのー、ちょっとお願いがあるんだけども。」
宿屋のちっちゃい子きたぁ!って、そういや名前聞いてないや。
「その前に名前きいてなかったよね。」
「ミルクロード・ミルナです。ミルクかミルミルってよんでね。キャピ♪」
掛かり気味で来たなこりゃ。見た目は十代、年齢不詳の女の子の自己紹介を受け、それぞれ自己紹介が終わったところで、本題を話し始めた。
「マルフォンとツインホーンの肉が欲しいの。宿屋のおすすめメニューの素材なんだけど、最近なかなか回ってこなくて。」
全く想像のつかない名前なので、特徴を聞いてみるとウサギと鹿のようなものみたいだ。
「まかせとけよ嬢ちゃん。俺の弓で肉もハートもゲットしてやるぜ。」
「心臓もおいしいみたいなので、お願いしますね。」
軽くいなされてしょげているイッチ―を横目にみんな出かけようとしたところ。
「そんな軽装備でいくの!?ほぼ布だよね?防具屋さんによっていきなよ。お話しとくから。」
そういえば、みんなとってもラフな服装で…
「ありがとう!行ってみます。」
ミルミルに案内してもらった防具屋に。外にレザーのかっちょ良い服とか置いてあってわくわくが止まらないぜ。何を買おうかな。
「「おじゃましまーす。」」
「おっ!おめぇ達がミルクちゃんのいってた冒険者だな?俺はカブト・ダインだ。いっちょ見立ててやるぜ。値段もお友達価格でやってやるよ!」
髭に坊主の笑顔が眩しいムキムキのおじさんが現れた。どうする?
「よろしくお願いします。カクカクシカジカのパーティー編成なんです。」
「なるほど、金髪のお兄ちゃんは弓の邪魔にならないようにレザーライトアーマー、黒髪のあんちゃんは前衛だからハードレザーアーマーだな。髪の長いスタイルのいい姉ちゃんはレザーライトアーマーの各部鋼入り。胸のでかい姉ちゃんは皮の胸当てと肩当て、入るかな。ちっちゃい女の子はレザーグローブ鉄板入り、レザーシールド、革の胸当てだな。銅貨3枚にしといてやる。」
れ、レザー押し半端ねぇ!!レザーの申しおっさんかよ!
「でも、やすすぎじゃないですか?」
「ミルクちゃんを助けてくれて、あと、冒険者ってことは囲い込みしておけばガンガン買ってくれるだろ?こっちも多少の打算ありよ。」
「お言葉に甘えて買います!!今後ともお願いします。」
「礼儀正しいやつだな。気に入った!ほかにもいるもんあったら手配とかもしてやるから、なんでもいいに来いよ。」
良縁ってやつだな。良い行いは良い結果として帰ってくるか。これからも良いことするぞ!
さて、お着換えお着換えっと。
「ちょっと胸が苦しいんですけどぉ。」
「レザーも悪くないわね。新しい世界が開けたわ。」
「…胸部間隙有り…屈辱の極み」
プラチナは胸押さえというか、抑圧されて押し出されそうな感じがすごくいいです。先輩はレザーがまた似合う。亮子はなんつーか、ドンマイ。
「腕グルんぐるん回るし、弓の邪魔になんねぇ!これスゲー出来良いぞ!しかも矢筒もつけてくれた!カブトのおっさんサイコーだな。」
「おっさんだとぉ。ゴルァ!って、いいとこ見てるな。お前口だけじゃなさそうだ。だが、次からはカブトさんと呼べ。おらっ!シャキッと稼いで来い!」
「は、はい…カブトさん。」
俺たちは村をでてミルミルの要望に応えるべく、ハンティングを始めることとした。
「あそこの多分マルフォンじゃない?ぜーったいそうだって!」
「相変わらず、索敵能力半端ないな、プラチナ」
前方にウサギっぽい生き物が確かにいた。と思った瞬間にウサギの後ろに立ちダガーを突き刺している先輩がいた。って、え?ええ!?
「スニーキングっていうのかしら、日本舞踊も役に立つものね。淑女のたしn」
「先輩すっごーい!私のダガーどうでしたどうでしたどうでした?」
「えっ、あっ、えぇ、スッと入って全く手ごたえが感じれなかったわ。恐ろしい切れ味ね。」
決め台詞の途中で食い気味に来られたことで、慌てる姿を見せる先輩。ギャップにやられるぜ。
「ギャップにやられるぜー!」
え、声にでちゃった?っと思ったらイッチ―か、焦らせやがって。
先輩、淑女というか忍者だな。女性だからくのいちか。って俺の出番ねぇ。
マルフォンをプラチナがことごとく索敵し先輩とイッチ―が殺戮していった。俺の出番ねぇ。
20羽くらい仕留めたところで、さすがに持てなくなってきた。
どうしようかと悩んでいたところ。
「…ドコでもキャリー」
亮子がなんか喋りながら、円盤を二個とりだして、木をつなげ簡易キャリーバッグの骨組みを完成させた。
「これなら簡単に運べる!GJだぜ。流石はわが軍師殿。」
「…備えあれば嬉しいな。」
憂いなし。だけど、照れ隠しだろうな。キュートだぜ。
ホクホク顔で帰る途中に、プラチナが急に立ち止まった。
「あれ、し、鹿だけど大きすぎだし、二つ角がやばすぎる感じ。どうしよどうしよ。超どうしよ。」
てんぱってるプラチナの前方を見ると、確かにでかい。全長2メートル級のごっつい鹿がいる!
「こりゃーあれだな、鹿だけにシカt」
「俺がやる。」
尻込みするイッチ―を置いといて、刀を実践で使いたい俺が進み出てみた。
「居合するから半径2m以内は近づかないでくれ。この物干し竿は長物なんでな。」
1人で少し歩き進み、居合の状態に入った。
「…サークルモード」
俺に気付いたツインホーンがもの凄い勢いで突っ込んでくる。
ドドドドドドドドドッ
「っ閃!!」
キン!
俺の横を駆け抜けながら首下から真横に斬れていく元ツインホーン。
「またつまらぬものを斬ってしまったとか、言いそうねタケル。綺麗だったわよ。フフフ」
「すっごーい!!私の刀の切れ味超えてるじゃん!」
「…主人公補正」
「お、おま、お前。なんでカタカナ使うんだよ!」
イッチ―の的確な突っ込みは置いといて、ミッションコンプリートだな。
もう一個持ってきてた簡易キャリーバッグに乗せ、こっちは男二人で村に押して帰った。
迎えに出てきたミルミルの驚いて嬉しそうな顔は、俺達の疲れをふっ飛ばし、十分な達成感を与えてくれた。
その晩、肉汁たっぷりのツインホーンのステーキと、ホロホロに柔らかいマルフォンのシチューが俺達の胃袋を満たし、満足感の中眠りについた。
翌朝の騒動までは…




