第4.5話思い出と才能と魔法
宿屋で工房を借りたプラチナ。
昔の記憶がよみがえる。
小さい頃からいつも無口な父親である哲也の刀を打つ手伝い、火入れ、実家で鍛冶のお手伝いをしていた。
まさに職業鍛冶、手伝いであるが、ずーっと手伝いのまま。
祖父が人間国宝の刀匠であり、哲也はいつも比較されっぱなしの毎日で、見えないプレッシャーと戦っており、娘に手間をかけてやることができなかった。
プラチナはプラチナで、祖父と哲也の仕事をずっとそばで見続け、日々学ぶことが日課となっており、教わるのではなく、自分から学んで吸収していくというスタイルがここで確立された。
「沙也。打ってみなさい」
12歳の日、哲也から初めて刀づくりを許された。
「はい!」
笑顔いっぱいで答えるプラチナ。
材料の下準備までは哲也がやってくれており、鍛錬(二人で槌を打つ作業)からであった。相槌を打つの語源である。
「えっさー!」
「おいさー!」
軽快に二人で槌を打つ。プラチナは始終笑顔で槌をふるった。
そして、芯鉄を鍛え、肝心の造りこみが終わった時であった。
「沙也!!やりおるの!!」
横で見ていた祖父である、白金 銀二が娘を褒めたのである。
この銀二はいままで人を褒めたことがない人間であった。
哲也の目から涙がこぼれた。
哲也は悟ったのである。才能は長く続けていれば手に入るものではないということを。
そして、娘がその欲しかった才能をもった人間であり、こんな近くにいながら、自分が娘のことを何も見ていなかったということを。
「パパ、なんで泣いてるの?火が熱かった?」
「沙也!!すまない。俺は沙也のことを全然何も見ていなかった。これからは沙也と共にやっていこう。」
「哲也、刀は一人で打つのではない。二人で打ってこその刀!良いか、儂がこの地位まで登り詰めたのもお前という相棒がいたからじゃ、お前は沙也を儂と同様、高く舞い上がらせるのじゃ。」
「おじいちゃんも、相槌打って、もっと高く舞い上がらせてよー。」
「ハッハッハ!ならん!儂を超えられてもかなわんでの。」
「おじいちゃんのケチー!」
「沙也、やめなさい。」
あの頃の気持ちが思い出される。
今回は一人で刀を作る。できるのだろうかと不安がよぎるが、タケルの刀を受け取った時の笑顔を思い出し、おもむろに作業にとりかかった。
カーーン!カーーン!!
タケルを思い、笑顔で槌を振るプラチナ。そう、いま作ろうとしている刀は愛で出来ているのである。
刀を作り終わり、ボーッとしていると、横置いてある魔法石が目についた。
「魔法石、綺麗やなぁ。アクセサリーとかにしてもいいかなぁ。タケル見てくれるかなぁ。」
「しかし、この赤い魔法石は火っぽいなぁ。赤いトカゲもなんか、火吹いとったし。なんかでたりして。」
魔法石を手に取り、割と大き目な声で呪文を唱えるプラチナ。
「出でよ!炎!!」
シーン。
耳まで真っ赤になりつつも冷静を装うプラチナ。
「呪文が、違うのよ呪文が!呪文のばか!」
誰もいないのに言い訳をしていると、一つ思い出したことがある。
「そういえば、赤いトカゲなんか言うとったなー。なんやったかな、そーや!!火を強くイメージして」
「ファミマ!!」
ブワァァァアアアア!!
掌に置いていた魔法石から上に向けて炎が飛び出した。
「あわわわわわわわわわ!!燃えちゃう!!工房が燃えちゃう!消さないと!そーだ!」
パニクりながらも、横に置いてあった青い魔法石を手にする。
「ウォータープリーズ!」
ブシャァァァァ!!
勢いよく水が噴き出て大事にならずに済んだのであった。
「危なかったー。出火原因がファミマとかちょっとしたセブンの陰謀になっちゃうじゃん。」
一息ついて、今までの流れを考えてみた。
「イメージと、最初の二文字が合ってれば魔法が発動するわけかぁ。おっもしろーい。」
普通ではここで満足して魔法発見キャハキャハしてるとろであるが、プラチナは武器に関する才能については人間国宝も認める人材である。
「杖に入れれば、魔法のスティックになるし、筒の先端を狭くすると指向性が上がりそうね。二種類の魔法石を付ければ思いのまま!もっとほかの魔法石を集めて、6連魔法!砕いて刀や、グローブにもつけれるかな。超やばい!つくっちゃうぞー!!」
こうして、この世界初めての人間による魔法が確立されてのである。




