第27話改革と任命と前夜祭
「ピチチチチチチ」
ことにの囀る声が窓から聞こえる。
「ふわぁぉあ。っ!!頭いた…」
朝を迎えた途端、頭痛がする。昨日のみすぎたせいだ。この国ではお酒は二十歳からとか言う面倒臭い法律はないんだ。みんな少年時代から必死に生きるために働いている。大人と子供の境目がないんだろうなぁ。とか、気だるい中考えながらロビーに降りた。
いつも通りみんながいたが、先輩以外机に突っ伏していた。二日酔い集団だな。
「おはよー。」
「「…おはよぅ…」」
「タケル。おはよう。あなたも二日酔いなの?みんなお酒に飲まれちゃたわね。フフフ」
一人だけで優雅に紅茶を飲んでる先輩であった。昨晩一番飲んでたのになんでだ!
「せ、先輩は何でなんとも無いんですか?」
「私はワインで出来てるから。フフフ」
「超川〇なお美!!」
だん吉なお美のボケは置いといて、混乱してるであろう隣村をどうするかみんなで話し合うことにした。
「ヤマタケ、隣村どーするよ?」
「…ギルド設立後、共同管理?」
「税率もここと同様にして、貿易契約とかも結びたいわね。おさかな食べたいわ。」
「お魚超食べたい!」
「タケルさんそう言えば、書面に長々と書いてなかったです?」
「エイ君よく気づいた!あの書面には但し書きを付けててね、諸事情により村長が不在となった場合は、我が村の傘下に入るものとする。ってね。」
「「おーーー。」」
俺達は、早速書面を持って隣村に行くことにした。
馬車に揺られて2時間、隣村に到着した。
守衛が声をかけてくる。
「こ、この間の!?また門を壊すつもりか!?」
「あー、威勢のいいおっさんかー。一騎打ちで俺が勝ったのは知ってるよな。中に入れてくれよ。」
「は、はいっ!!」
割とすんなりと中に入れてくれた。
村の中に入ると、村人が集まってきた。
「村長を倒したって、本当か!?」
「無茶苦茶強くて、狡猾なあの最悪の村長を!?」
「あの子が?子供だぞ?」
みんな予想通り混乱してるよ。
「その事で話に来ました!ここに一騎打ち前に前村長と交わした書面があります。私が勝った結果、当村の傘下に入ってもらいます!ギルドを設立し、村の管理はギルドで行うことにします。税率等詳細については、今から配る書面にまとめてます。以前と比較してみんなが暮らしやすい環境になると思います!一緒に豊かな生活を手に入れましょう!」
「この数字は本当か!?」
「おい!まじかよ!!」
「これなら子供たちもしっかり食べていけるわ!」
「ダブついてた魚の問題も解決だ!」
「アンタらに俺は付いて行くぞ!」
「俺もだ!!」
「「おおおおぉぉぉおおお!」」
好感触で思ったより、揉めずに進めそうだ。
「冒険者の人達はルールをお知らせしますので村長の屋敷まで来てください。悪くない話になると思います。よろしく。」
俺達は人混みを押し退けて村長の屋敷に向かった。
実際に屋敷を目にした俺たちは、その豪華絢爛な屋敷に言葉を失いかけた。
「ご、ゴージャス。」
「…税金御殿…」
「コレはみんなに還元しないといけないわね。」
「チョットくらい貰っても良いよね?超綺麗な剣とか杖!」
「まぁ、必要経費は頂いとくか。」
取り敢えず、商人を呼んで要らないゴージャスな家具とか売っぱらう事にし、村の色々な施設に投資することで還元することにしてみた。まずは民忠をあげないとね。
そして、しばらくすると冒険者達がやってきた。
みんなにギルドのメリットを説明し、ギルドの有用性を理解してもらい、冒険者たちの登録を開始した。
ここまでは、トントン拍子だが、一つ問題点があった。
この村の代表者とギルドマスターを誰にするかというとこである。
「んー、代表者とギルドマスターを、どーしよー。」
「そいつは結構大事な問題だな、ヤマタケ。」
「代表者は前の村長で、ギルドマスターは天下一武道会で、どーかしら。フフフ」
「それ、超いーじゃん。戦力の把握もできちゃうね。」
「よしっ!!賞金もかけてやりますか!」
登録した冒険者たちにギルド掲示板を使用し、参加者をどどーんと、応募してみた。掲示板に群がる冒険者達、活気がでてきて非常にGoodです。
俺達は村長の話をすべく以前会った、前村長に会いに行くことにした。
「この間の血気盛んな若者!」
「どもども、無事一騎打ち勝つことができました。そこでお話があるんですが、またこの村の村長をお願いしてもいいですか?さすがに俺達に二つの村を見るまでの余裕はないものですから。」
「私でいいのでしたら、喜んで村の為に心血を注ぎましょう!前の様に笑顔や活気を取り戻したいと、思っておりましたので。」
「それでは、よろしくお願いします。税率等はこの書面にまとめてますので、疑問とか案とかあったらドシドシ相談してくださいね。」
「わざわざ、細かいところまでありがとうございます。まずは商人達をあつめてネットワークの構築から始めます!」
「あと、明日武道会を開催しようとしてます。前夜祭をしようと思いますので、村人への声かけと飲食の準備をお願いしていいですか?音楽とかもあるといいな。武道会当日の屋台も出してもらえれば、繁盛すると思います。前夜祭のお金の方は俺に任せといてください。」
「その話も商人達と話して早速用意します。」
村の為に気持ちがいいくらいナイスな村長の出来上がりだ。政治家とかみならうべきだよなぁ。
手土産に特産品の魚の干物とチーズをもらい、ギルド(仮)に戻った。
総勢30名と、結構な数の冒険者がエントリーしていた。先輩、亮子ちゃんとプラチナは対戦表を作成してもらい、俺達野郎チームは舞台を整えるべく村の中央にある広場に会場を設置し始めた。
村人たちも興味津々に俺達の作業を見守っている。5時間くらいかけて11m四方のリングを3つ作成した。これで、準備は万端!!
「ヤマタケ、ばっちりだな。」
「僕もワクワクしてきました。ここで強さをみんなが争うんですねぇ。」
「タケル―!こっちも終わったわよ。結構大変だったから、これはご褒美が必要ね。フフフ」
「超、手がつかれたよ。腱鞘炎寸前!!ご褒美が必要!!」
「…疲労困憊、意気消沈。褒美要求!!」
なんか、女の子チームの末尾がご褒美要求なんですが。
「よしっ!!こうなったら前夜祭だ!!村人も集めてやるぞぉぉぉお!!」
「「おーーーー!!」」
事前に村長からのアナウンスがしっかり行き届いていた模様で、村人たちがゾロゾロ集まってくる。
食事と酒が運び込まれ、会場が一斉に活気を帯びてきた。
村長がみんなに語りかける。
「我々は今まで窮屈な生活をしてきました。だが、それは今日までです!!ここにいる英雄タケル殿が、我々に自由という膨大な熱量を与えてくれました!!我々はその熱を絶やすことなくやっていきましょう!!みんなで活気というなの熱を燃やしていきましょう!!英雄タケル一同と我らが村シルドーに乾杯!!」
「「「 乾杯!!! 」」」
ちょっと照れくさい、楽しい宴の始まりだ。刀を置き、代わりにジョッキを片手に持ち、久々に味わう魚を頬張った。
僕の視界には、前には見られなかった村人たちの笑顔が写り、目頭が熱くなるのを止めることはできなかった。ばれないよう、涙を隠しながら僕は席を外した。僕と同じように席を外し、涙を流す村長と目が合った。
「タケル殿は、この村に来たのが2回目なのに、私以上に村のことを考えてくれておられる。」
「村人のことをこんなに思うあなたを、村長にして本当に良かった。」
後ろからよく知っている手が、僕の頭を優しくなでる
「また泣いてるのね、タケル。あら、村長さんも。いい村になりそうね。フフフ」
恒例になりつつある、先輩の胸に顔を埋め、うらやましそうにみる村長を尻目に、夜は更けていった。




