第24話決戦前夜と不安と安らぎ
村に戻り晩御飯をみんなで食べていると、門番がギルドに入って来た。
「タケル殿はおりませんか?あっ、タケル殿!!何やら緊急書類が届きました。」
俺の前に書面を置きいそいそと、門番は出ていった。急いで出ていったのは、村の平和を守る使命感からの行動だ。
「なんだろ?」
俺は書面を開いてみた。
~明日12:00にイリアの遺跡で一騎打ちを行う。付き添いは5人まで~
と、書いてあるらしい。勉強しないと行けないな。ミルミルさんと個人レッスンしかないっ!!
「明日か!ヤマタケ!付き添いはどーすんだ?」
「プラチナちゃんに、亮子ちゃんに、イッチーと私で4人ね。フフフ」
「ちょ、ちょっと、僕も連れてってくださいよっ!」
「…突っ込み良し…」
「ベストメンバー!超イケイケでしょ!」
みんなのやる気も満タンだ。確かに無敵感は半端ないが、一騎打ちでみんなの力は使えないのだ。
「んじゃ、今日は早めに休んで明日に備えよう!」
「「了解!!」」
各々の部屋に別れ、早めに寝ることにしたが…
「…寝れない。俺がもし負けたらどうする。俺のせいで村の全てが略奪されたら、俺は、俺は…」
そう、強がっていたが結構なプレッシャーで、俺は寝つくことが出来なかった。
フラフラと、夜風に当たるため庭に出て上を見ると、夜空にこの世界でも月が出ていた。視線を下ろしていくと、そこに月夜に照らされて美しく輝く女性がいた。
「タケル。眠れないのね。こっちにおいでなさい。」
セーラ先輩だ。俺は誘われるがままに隣に座った。
優しい手が俺の髪を撫でる。
「あなたが全てを背負うことはないのよ。」
「だって!!おれが負けたら色んなものが無くなって、悲しむ人が大勢出てしまう!」
「あなたが居なくても同じ事は起きてたわ。その時はどうなってたのかしら。多分簡単に村は奪われてたでしょう。あなたがいた事で、この村は救われるの。」
「俺が負けたら…」
突然、先輩が俺の頭を抱き寄せ、胸に埋める。
「ごめんなさいね。私がリーダー、リーダー言ってたから、追い込んでしまったわね。あなたはもう一人じゃないのよ。あなたの背中はみんなが守ってるのよ?仲間を信じなさい。」
リーダーなんだからしっかりしないと!って、空回りしてたみたいだ。目頭が熱くなる。両親が居ない俺はこんなふうに諭されたことは無かった。体全身が優しさに包まれていく。俺は顔を上げた。
「タケルの涙、綺麗ね。」
先輩の顔が近づいて来る。
俺の額に先輩の唇が触れた。
「これはおまじない。がんばりなさい、泣き虫タケル。フフフ」
いつもの先輩が最後に出てきた。なんかスッキリした。
「また、行き詰まったら泣き言聞いてもらってもいいですか?」
「もちろんよ、タケル。いつでもナデナデしてあげるわ。キスはたまによ?フフフ」
やっぱり先輩は、いつも俺のことを気にしてくれる最高の先輩だ。
「先輩、おやすみなさい。」
「おやすみタケル。」
俺はベッドに潜り込み、先輩の残り香を感じながら眠りに落ちていった。




