第23話ピクニックとサンドイッチとお気楽対策
朝イチからイリアの遺跡にみんなで行くことにした。
一人で埋伏ポイントを探すより、多方向から見たほうがいいと考えたからだ。
一騎打ちで勝つのは容易と思ったが、他の要因が入った際に勝率がガクンと落ちるのは言うまでもなく、この負けは俺だけではなく、村全体に影響を及ぼすものであるため、責任感ハンパない。
「お昼用にサンドイッチつくったよー!」
「ローストビーフ的なものを挟んでみたわよ。チーズがないのが残念ね。」
ナイスランチ!!女子力高くて助かりまっす。
「…檸檬有れば作成可。」
チーズもあれば店に出せるな。こいつはカフェ展開も可能な予感!この世界にカフェなる存在はないので、もう勝算しかありませんよ。しかも琲珈ダメコ的なチェーン展開して、クロノアール的なスイーツも用意して、モーニング文化を定着させ、朝から小倉トーストをほおばる村人と、若干度を超えた妄想をしつつ、イリアの遺跡に向け出発した。
途中で、スライム、狼、ゴブリン的なモンスターに遭遇したものの、村長代理の相手ではありませんわな。華麗なるイッチ―の矢や先輩の容赦ないバックスタブでサクサクと歩みを進め、3時間くらいで遺跡に到着した。
遺跡というか、闘技場ですなコレ。コロッセオ的などでかいサークル状の建物がそこにあった。
周りを無数の石柱が囲み、これは隠れ放題ですよ。
「かくれんぼで、鬼があきらめるレベルだなコレ。さすがに周りはぶっ飛ばせそうにないし。」
イッチ―が率直な意見を喋ってくれた。
「タケル、どうするつもりかしら。これはさすがに不味いわ。闘技場の中心は隠れようがないけど、石柱に隠れてる敵を発見できそうにないわね。」
先輩の白旗が簡単に上がった。まいったな、その通りですよ。
「でも、多分戦いが行われるところから、隠れれる石柱の距離って超離れてるから、矢でしかじゃまできないじゃん。」
「…風魔法で矢を無効化。」
「「それだ!!」」
「しかも、向こうは風魔法の存在を知らないですし、タケルさん貰いましたね!正義と勝利は我々にあり!」
いやぁ、みんな連れてきてよかったわ。あっという間に解決策がポンポンと。ブレインストーミングは偉大ですわ。
無事対策が取れたら急にお腹がすいてきたので、ランチにすることにした。
「バサッ!ドスッ!」
プラチナがどでかい敷物を広げ、センターにバスケットを置く。今の音はかなりの量が入っている予感。
バスケットを開くと、そこには色とりどりのサンドイッチが!!
「右から、ローストビーフ、タマゴ、チキン、フルーツだよー。」
レタスなどの野菜もふんだんに挟まれており、かなりのボリュームだ。小倉サンドがないのが悔やまれる。
お手洗い用の水魔法石で、手を綺麗にして会食スタートである。
「「いっただっきまーーーす!」」
みんな我先にと、サンドイッチ目掛けて手を伸ばし、口に運ぶ。
「んまい!!超んまい!!ローストビーフはサンドイッチ界の至宝や!!」
「このタマゴサンド本当においしいです。僕こんなの食べたことないです!」
「チキンも照り焼きにしてあって、とってもおいしいわ。脂の虜ね。フフフ」
「…美味。白金感謝」
みんなご満悦の様子。プラチナも嬉しそうだ。
「えへへ。料理は修行中なんだけど、喜んでくれて超嬉しい。紅茶も入れるよー。ウォーター!ファイアー!」
魔法石と一体になっている、大き目のプレス式ティーメーカーのようなものを取り出し、魔法を唱えたプラチナ。あっという間にできましたよ紅茶。
「プラチナ、もしかして、ガラスも作れるようになったの?」
「まっさかー。これは発注して作ってもらった物を改造したんだよー。超凄いでしょ。」
うん。凄い。ほんと凄い。エジソン超えてるよ。
物凄いスピードでみんな食べ進め、デザートをほおばりながら、これからどうするかを話しあった。
「タケルはこれからどうするつもりなの?」
「とりあえず、村長代理として村の安全と繁栄のお手伝いをしたら、宝玉を集めるために、情報収集だね。町々を回りつつ、ダンジョンを探し封印していかないと。」
「たしかに、ミルミルちゃんの安全は確保しとかないといけねーしな。俺達の恩人だから。」
「…戦力強化も重要」
「新村長を選出して、運営方針を伝えとかないとね。まずは、目先の障害を取り除きますか。んじゃ、帰るよみんな。」
俺の掛け声で、一斉に帰宅することにした。晩御飯は何にするかワイワイ話しながら。
この時、俺は気付いていなかった。対策とは思慮に思慮を重ねた結果、導き出されるものだということに。




