第16話凱旋とワインと計画
門をくぐると村長を含め、村人が多数俺達を迎えていた。
「タケル殿!!やりましたな!!モンスターが洞窟より出てこなくなりましたぞ!」
「洞窟の中の遺跡を封印したので、モンスターはもうあそこからは湧いてこないはずです。」
「なんつーの?俺が封印した感じ?こう、輪を右、左、右ってまわs」
村長がイッチ―を押しのけ、俺に握手を求め、俺もそれに応える。
「TPOに合った話し方をしないと、ああいう扱い方をされるわけね。みんな覚えておきなさいよ。フフフ」
「…転禍移福。」
「あそこで、割ってはいるイッチ―、超凄くない?空気が読めないってレベルじゃないよね?逆に尊敬するレベルだよねー。」
「与一さん!意識をしっかり!!た、大変だ。笑ってる!?」
メンタルの鬼イッチ―も村長のスルースキルにやられていた。
「若いのに大したもんだ!」
「確かに若い!!よくやったな!」
「スゲーぞおめーら!!」
村人たちも凄く盛り上がり、お祭り状態だ。
「女の子もいるぞ!?」
「さ、三人も!?卑怯だ!カップルのパーティーじゃないか!」
「俺達もあんなに女の子がいたらがんばれるわ。ありえんわ。」
村人たちがお祝いムードの途中から、なんか変な方向になっていったが、とりあえず、村長のスルースキルを真似し、気にしないことにした。
「タケル殿、ささっ、こちらに。」
村長に誘われお店に行くと、祝賀パーティーの用意がされていた。
みんなにコップが渡され、ブドウジュースがなみなみと注がれる。
「めでたい今日という日に乾杯だ!!」
「「かんぱーーーーい!!」」
喉が渇いてた俺達は、ブドウジュースを一気に飲み干した。
「「ん!?!?」」
飲んだことのない喉にカーッとくるブドウジュースにみんな混乱する。
「これ、超おいしいじゃん!ふひひ。おかわーり。」
プラチナがおかわりを要求する。
「沙弥殿は結構いける口ですな。どうぞどうぞ。」
村長がまた、なみなみと注ぐ。
先輩はチーズと生ハムを口に入れながら、淡々と話す。
「これ多分、ワインね。」
「またまたー、セーラさん俺達未成年っすよ?アルコールなんて出されるわけないじゃないっすか。」
顔を赤くしながら、鹿肉のステーキをほおばるイッチ―。
「…同意。モグモグ」
マスタードのようなものをウインナーにつけ、頬張りながら亮子も頷く。
「村長、ワインなわけないですよね?」
俺が代表して、恐る恐る聞いてみる。
「え?ワインじゃが?当り前じゃ。村では12歳から解禁となっておるしな。」
「「おーーい!」」
村都合、知らんがな。ま、貴重な体験だし良いか。
「郷に入っては郷に従えって言葉もあるし、今日くらいはいいかな?みんなもせっかくなので体験しようってか、先輩なんでわかったの?」
「私はワインで出来ているの。フフフ」
どっかで聞いたことあるようなセリフを話しながら、俺にしな垂れかかる先輩。やわらけー。
「あっ!先輩超ずるい!!タケルはみんなの物です!」
プラチナも腕に抱き着いてくる。例の山が俺の腕を包み込む。
「タケルさんモテモテですね。うらやましいですよ。」
エイ君が村の女性に囲まれながら、キャー筋肉すごーいとか聞こえる中で、なにか言ってる。エイ君、お、お前ってやつは。
みんなでワイワイ騒ぎながら時が過ぎていく。
しばらくして、イッチ―が俺に聞いてきた。
「ヤマタケ、これからどーすんだ?」
「とりあえず、もらった家を拠点にして、ギルドを立ち上げて、冒険者と商人とのやり取りを一括化して流通を作る!冒険者が色んな商人に売りに行く手間と、買取が安定しない商人の仲介をするわけだな。そして今回みたいな、村人からの要求、まぁクエストだな。これを冒険者に供給する。まずはこれからだな。」
「おー!考えてんじゃん。すっげー長かったから3割くらいしかわからんかったけど。」
「村人と、冒険者と、私たちでwin-win-winね。ドリルみたい。フフフ」
「私は、魔法の武器を供給するー。今回のことも踏まえて、ちょっと研究しないといけないなぁ。亮子ちゃん手伝って―。」
「…一つ、二つ思い当たることがあるにょほほ。おまかせーーあーーーれーーー」」
亮子が完全におかしくなってきているが、魔法に関しては確かに謎が多い状況だから、これはお願いしたい。
「頼むよプラチナ。亮子ちゃん。でも研究は内密にね。色々と表立つとまずい面があるものだから。」
これが判明すれば、みんなの戦力も、杖の販売によって利益もでる。ただ、大量に作ってしまうと兵器になってしまい、戦争に発展するかもしれない。慎重に動かないといけないな。
それからしばらく宴会は続き、俺達は飲めや歌えで騒ぎに騒いだ。
夜も更け、宴会がお開きになり、新しい家ではなく、宿屋に戻ることにした。
イッチ―が亮子をおんぶし、俺がしなだれかかるプラチナと先輩の肩を抱き、今回が最後になるであろうミルミルの宿屋に戻り、ベッドに倒れこみ、あっという間に眠りについた。




