第10話猪と鹿と蝶
闇夜に光る三つの光。俺の一つの刀から生まれた斬撃だ。一瞬にして三連撃。燕返しの二連撃を超えた必殺技が今!!
ガバッ!!
「ゆ、夢オチか…」
夢オチほど虚しいことは無い。まぁ、一気に起きれたのはいい事だけど、新技だけに虚無感が半端ない。
「どーしたんだよヤマタケ!すっげー勢いで起きたぞ?空から落ちる夢でも見たか?」
「飛び起きるって本当にあるんですね。ちょっと面白かったです。」
仲間のリアクションに少し救われた気がする。
「新技を身につけた夢を見たんだ。凄く残念な感じ。」
「新技今から試したらいいじゃないか。技名も付けようぜ。ちなみに練習台はこのえーちゃんな。」
「盾も三つありますしね。丁度いいかも知れないです。」
木刀を持って広場に来てみた。エイ君は肩当と、盾のフル装備だ。
「んじゃ行くぞ!!…ハッ!ハッ!セイッ!」
カン!カン!カーン!
上段、上段、抜き胴である。
「遅いな。二連撃の方でいいんじゃないか?ってか、剣の流れをもっとスムーズに流れるシーケンスにした方がいいぞ。」
確かに、一々振り上げモーションを挟んでいたら、無駄な流れになるなー。
「行くぜ!!ハ!セイ!ハ!!」
カカカーン!!
「おー!良くなった!二発目の抜き胴が、すげー速い!!えーちゃんもビビったんじゃない?」
「は、はい、気が付いたら二発目で後ろに回られてて、後ろから肩に衝撃が!凄いです!」
「技名は三連撃だけに、猪鹿蝶だな!二発目が猪な感じだけど、まじカッケー!俺の必殺技の命名の才能!」
「実戦でためしてぇ!」
「た、タケルさん?さっきから性格が!」
「タケルのやつは、剣を持つと性格がすっげー変わるのよ。そのうち慣れるさ、さぁ、新技も完成したし行こーぜ!リベンジに!」
「「おー!」」
イッチーに仕切られて、宿に戻り、みんなと洞窟に向かった。
サクサク地下二階に向かい、例のヤツらを探した。いた、緑の大軍だ。
俺達は冷静に動き出した。イッチーが秘密兵器を取り出して、ファイアと唱えながら集団の中央から後方当たりに打ち込んだ。しばらくして爆発が起きる。
ドゴーーン!!
中央あたりのゴブリンが吹っ飛んでいく。
「シャア!!」
エイ君が盾でぶち当たりに行く。前線のゴブリンが、動揺している所に、ナイスタイミングだぜ!
俺と先輩も同時に駆けていく。
「オラっ!!オラーー!!」
ゴブリン達を蹂躙していく。慌てて弓矢隊が、構え始めた。
「ウィンド!!」
ゴゴゴゴウ!!
強風により矢がこちらに飛んでこない。ナイスタイミングだぜプラチナ!!
イッチーの矢、エイ君の前衛、先輩のバックスタブ、亮子ちゃんの拳、プラチナの魔法でほぼ全滅まで追い込んだ。
後ろの方から俺たちと同じくらいの大きさの赤いゴブリンが突如現れてきた。
「グゥォオオオオオオオ!!」
「アイツが指揮官か。」
「ヤマタケェェ!!お前の出番だ!ぶちかませ!」
ったく、まぁ、ここで決めなきゃリーダーじゃないぜ!
「大和屋 タケル、推して参る!!」
手始めに右手の上段から切り込む!!と、同時に左手を中段からも切り込む!!
「シッ!!」
カーン!ザシュ!!
「グゥォオオオオオオオ!!!!」
右はしっかり棍棒で受け止められたが、左は受け止められず、血飛沫を上げる。こいつ少しはできるが、それほどでもないみたいだ。時間をかけるのも、面倒なのでスグに決めに行くことにした。左の刀を収める。両手でしっかりと刀を握り、例の新技を仕掛ける!
「行くぜ!!ハッ!セイッ!ハッ!!猪鹿蝶!!」
肩、腹、背中からほぼ同時に血が吹き出し、前のめりに倒れる。煙と同時にサークレットのようなものと大量な銀貨と魔法石が落ちた。
「カッコイイです。タケルさん!!」
「タケル!!素敵よ!!最後の台詞以外!!フフフ」
「さっすが、タケル君や!超カッコイイ!!」
「…電光石火、絢爛豪華」
「決まったな、ヤマタケ!!帰ったら月見で一杯だな!」
褒められるって達成感が2倍にも3倍にもなるな。
「さて、前人未到の地下三階に行くぜ!みんな!!」
「「おー!!」」
意気揚々と降りた俺たちを待っていたものは!




