3, どうも妖精さんについていくようです
「取り敢えずこれをお持ち下さい
私からはこれだけして頂ければ
後の要求は致しません」
何かのリングを右手から外す 銀のリングだ
何処にでもある安いリングに見える
とりわけ綺麗でもない
でもホログラムには違いないので正直そんな事はどうでもいい
「触れるのか?前の子も触った感触なんてなかったけど…」
「大丈夫です お持ちになればわかります」
大丈夫だろうと判断している
おそるおそる手を出して左手の平に乗っている
それに触れる
感触はない それを待っていたかのように妖精の右手がオレの手をサンドする
「ああこれが貴方なんですね…… これで完全に
理解しました これで私は貴方の為だけに
動くことができます」
手が光り出した 淡い光りでとても温かなそんな光りがゆらゆらとついていた
もしかして他の誰も気付かないのではないのか?とふと思った
「もしかして騙したのか?」
何かやられた気分がある こうゆうのを誘導と言うのではないのか?
「すみません、物で釣りました まともには
触って頂けないと思ったのです
でも間違いでもありません
手首にはまっている筈です」
光りが収まった左手には確かにリングが装着されている
大きさがちゃんと納まるように変化している
でもホログラムには変わりないが
なので装着感は一切無い
「これ着けたらオレで無くなるなんて事はないよな?」
リングと手をじろじろ見ながら聞く
「いえ、そういった物ではありません
貴方が勝者なのはもう覆しようがない
でしょう 先代はそうゆう意味でも
失敗したのです」 更に続く
「実は貴方が触りもせず歩き回ったので
魔物に付けられております、… もうそれほど
時間がないのです
大変凝縮ですが手を上げて召喚!とお呼び
頂けませんか?それで実体化できますので」
何かのせられた気がバンバンするが、魔物が来ると言うのなら従うしかない 魔物は狂暴で強い、オレなんか一捻りにもならないしよいだけ玩具でもすぐ壊される
絶対に出会ってはいけない存在なのだ
それが近くにいる?この辺に居たら大問題だ
しかしそうなのだろう あれを欲しがるかもな
左手を高く掲げ言う 小さな声で「召喚」(慣れてないんだよ!)
目の前に魔方陣が出現し 地上より高い空中に書かれている 光を発し其処からゆっくりと空に飛び上がった
「召喚して頂いてありがとうございました
これで戦えます!」
遠くから音がする 町の方から馬が駆けて来ている
今の場所は森から出てすぐの街道でその先は少し盛り上がっているのでそこから先はみえないが
ここから一時間ほど歩けば町に着く その町には
大抵騎士か魔法使いの人が居て町を守っているのだ
その騎士がこっちに向かっている
オレの手に付けられているリングは未だホログラムのままだ
どうやらこれは実体化しないらしい
ちょっと期待していたんだ
こうゆう物着けたことないから………
「実体化しました、どうぞお使い下さいませ」
リングが実体化した
オオっ やった!!
オレにはこんなこと位の望みしかない
こんな事でいいのか?と思いつつこれしかないとも思う
浮浪者なんてこんなもんだオレになにを望んでいるんだ?
オレは死にたくないし 贅沢三昧してみたい
俺は少しホッとして嬉しかった
何故ならあの騎士はオレに向かって来ているからだ
妖精さんとはまた違う 普通の存在した人が来てくれるのが何とも言えずうれしいのだ オレなんかに振り向いてくれている
それだけの事が今までの生活にはなかったのだ
それがあの守り神の存在である騎士なのである
どれ程救われる気分であるか……妖精の事よりその方が圧倒的に大きなことであった 正直これで人生が変わるとまで思っていたのである
確かに守り人になればその町での存在は絶対になる
それ故人格者が継ぐ事がほとんどでそうではない者が就けば
その町の未来が閉ざされる あの先の町はかなり人気のある町である 其処にいる騎士がどんな人物なのかは知るまでもない
人望のある騎士であるに違いない
「おお~い」あのリングのはまっている手で合図を贈る
それしか誇れる物がないのだ
さっき貰った物だけどオレにはこのぼろぼろの着物より
あのリングのある手を見てもらいたかった
それだけの価値がオレにはあると知って欲しかった
特にあの騎士には認めて欲しかったのである
それを妖精が黙ってみている
なにも言わないし笑いもしない 無表情の顔は何を思い描くのかわからない ただじっとしていた
「おお~い!おお~い!」 何回も手を振る
もうかなり近くに来ている 向こうは真っ直ぐ此方に向かってやって来る 間違いなくここを目指しているんだ、やった!
そう信じた
「…げろ……す…にに…ろ~」声が聞こえこっちに向かって手を振りかざし何か伝えようとしている
「来ましたね」妖精が小さな声で言う
オレにはまだそんな風には見えない また人のいるまともな所に帰れるという気持ちでみている
魔物はいわゆる魔族、魔界の悪魔その辺りの総称でその能力は個々に差があるとは言え最低でも国が動くほどの危険度がある
個人で戦える奴はいないと聞く
おとぎ話の中にはいるので中にはいるのかも知れないが今の世界にいるという話を聞かないからいないんだろう
騎士でも無理なのである
オレにもわかるようにわざわざあの丘の上から姿が現れた
絶対にそんなことはない あんなやつが居る筈がない
あり得ないおかしい だってここ百年出たこと無いんだぞ
ねじり中に回り込んだ角長くて細い尾大きく開いた黒翼
異様に長くて細い手足、話の絵そのままだ
「気を付けて下さい遠距離攻撃も
有りますからね」
前に出て構えをとる いくら人でないとしても無理なんじゃないのか? ホントにやる気なのか?
こんな華奢な身体であれとやるつもりなのか?
「おお~い!」騎士が到着した 馬を乱暴に止めて降りてきた
銀の甲冑を着込んでいる本物だ
「君達は何してるんだ!早く逃げなきゃ駄目だろ!」
それを妖精が制止する
「いえ 今からでは後ろを取られます、
迎え撃った方が対応出来ます!」
「何を言ってるんだ勝てる訳無いだろう!すぐに逃げるんだ!」
「勝てます!」
言い切った………自信があるんだ
それが事実ならとんでもない事なんだぞ!
最強だって言うのとおんなじなんだぞ!!!
わかってんのか?
今度はオレに聞いてきた
「アレは何だ?君が呼んだのか?」
「ええ…、まあ」
「君は召喚師なのか?それとも機械技士か?錬金術師?
とにかく期待しているよ、倒してくれ!」
はっ? えっ なにを言ってるの?
いやいやいや、… いやいやいや
「行きます!」
妖精が飛び上がる あっという間に木より高く上がり
何かを打ち出す光線の光が獲物に着弾
爆発音が鳴り響く光りは早く出したのと当たるのが
同じように見えた
騎士様が覆い被さり守ってくれた
まったく酷い衝撃波だ立っていたら危なかった
なんて事しやがるんだ これで殲滅出来なかったら
叱ってやる
「アラもう終わってしまったんだ、残念」
後ろから声が聴こえる
「寝首がかけないじゃないか」
とても嫌な予感がするのだが………
騎士が飛び起きて腰の剣を構えるかなり幅広の剣で
飾りではないのが一目で解る
言うなれば無骨である
あの剣を腰に帯剣して何の気なしに振る舞える
のは相当難儀な筈でそれを行えるというのは
相当の技量と体力があるに違いない
「き、貴様!隠れて居たのか!!」
まがまがしい顔に目と口、いや穴が三つ開いている
中身が見える訳は無くその様に見えるぐらい暗いのだ
こんなのこの世の者ではない
確かに出会ってはいけない存在だと認識した
「まあでも君達ではおもしろく無いんだよね
あっちの方がいいなぁ
少し一緒に観戦してもいいよ
ねぇそうしない?それともやる?」
「くっ、」 騎士が悔しそうに洩らす
「大丈夫すぐおわるから………待とうよ」
取り敢えずオレはそれには賛成する
オレも立ち上がり騎士の手を止める
ふるえていた