2ー14、どうやら訳わからないしおかしいよね
「ねえ、あれ……なにかしら?」
「さあ………」
二人とも上空にある物体が何なのか
わからなかった
何か白い玉がいくつか空に浮かんで
それが何か周りの風に揺れることもなく
すうっと動く
幻の様にぼやけてもいないのにだ
はっきり言って不快な動きだ
どうみても現実的でないのに
至極はっきりしっかりとした姿をみせる
「魔物?なの?」
彼女は見たことがないので
取り敢えずそうかもと言ってみた
「いや、それはないだろう
魔物はあんな丸い白い格好など出来ん!
あいつらは闇の影だ!
黒いならいざ知らず
白いのはあり得ない!」
そう言う片翼の矛も見た事はない
それはそうでここ百年魔物が
人前で活動して来なかったので
恐らくは生きている中で見た人は
一人もいないと言ってもよいだろう
そもそもこの百年はあらゆる魔系生物
いわゆる化け物の類いが消えた世界で
あった為に文献でしか知らないので
あるが……
「あそこにいるあのほっかむりの
老人、あれがそうかしら?
なんかそれっぽくない?」
何か大きなまゆ?の隣にいる
人様に見える者に指を指す
ほっかむりと言うよりただ布を何枚も
かぶって適当に裾を切ったと言った方が
適切で正しく見えるが…
それに顔も手も足も隠れて見えない
「ああ……確かにあれが魔物に違いない
しかし、……不思議とは思わんか?
あれは寧ろ我々に近いものを感じるが」
なぜかそう思う
少しだけ引っ掛かるのだ
どうしてかはわからない
「そうね、…で、あれが目標ってことじゃ
ないんでしょ?
あんなのあんたの領分よ!!
私をさっさとその大結界とやらの所に
連れてってよ!
そのあとやればいいじゃない!
まったくもう、」
どうやらもう興味がなくなったらしい
しかし……
「お前ならもうすでに見つけているだろう?
一人の方が身が軽くなるんじゃないのか?」
そう、ここはもう目と鼻の先
こいつが気付かないわけがない
もっと先にあるものまで
勘づいているのではないか?
とすら思うのだが……
「確かにねぇ、色々あるのは
判るけどね……それと結界と
結びつかないのよねぇ………
それにしても確かにこれは
一大事だわ………こんな事が
起こせるとは夢にも思わなかったわ」
やはりだ、…やはり見通している
もしかしてかつての結界師と言われる
魔道術者に匹敵するかもしれないな
「とにかく少し遠回りしないと
見つかる!真っ直ぐ行けなどと
言わんでくれよ」
ほんとにそう言いそうだと目が
訴えていたので
先に止めておく
その真っ直ぐさが周りの何もかもを
巻き込むのを全く躊躇しないので
今まで酷いことになっていた
だろうに!!
「……まあそうね、急がば回れとも
いうからね そうするわ」
おおっ!少しは大人になったか
「じゃあ連れてってくれるってことで
いいわね!さあ遊んでいる暇なんて
無いんだからね!
さっさと動く!」
「あ、ああ…」
「あ、…あの……私も連れてって下さい
ませんか?」
二人とも振り向く
突然に声が聞こえ何が起こったのか
誰が居るのかわからなかった
そこにいたのは、お姫様メリーナだ
そこに居る誰も何故お姫様がここに居るのか
理解出来ない
どうやったらこうなるのか
何をしてこうなったのか誰も
説明出来ない
「あの……なにか、…すいません
こんなところに来るなんて………
わからなかったもので……
部屋着で来てしまいました
どうしたらよいのでしょうか?
なにか意味があるのでしょうか……」
「それはこちらが聞きたいわ!
貴方にこんな能力があったなんて
初耳よ、…そんなに先生が気になったの?」
魔女が呆れた様な悔しい様な
わけのわからない感情を吐く
それが精一杯の強がりだった
「なんと!その様な能力は今まで
確認できなかったが……
実例も無いはず………
……しかしお姫様をここに置いて
私達だけ動く訳にはいかない」
馬を降りて手を出して誘う
「取り敢えず馬にお乗りください
メリーナ様、…一緒に来て下さい」
お姫様を馬に乗せ自分は歩きで
馬をひきながら移動することにした
魔女は歩きだ
と言おうとしたらもう既に
後ろに乗り込んでいた
降りさせようと思ったが
どうやらお姫様は騎乗に慣れておらず
魔女に支えられてなんとか
落ちない様にされている
ならこの方が良いかと止めた
「お馬には馴れておられないのですか?
授業はあるはずですが……」
「乗らなかったのです………
普段馬車で移動していたもので……
必要ないと思っていたのです……」
確かにお姫様は普段馬車に乗るもので
こんないきなり戦場(?)に飛ばされる
ことはない
これを責めるのはやめておこう
「ねぇ、はやくぅ~行こうよぉ~
ねぇ~」
どうもわざとなまめかしくしているらしい
恥ずかしくはないのか?
お姫様が真っ赤になってるじゃないか!
「………さあいくぞ!」
しかしながらこの馬は冷静が過ぎる
如何なる時も驚きもせず
何事もないかの様に行動する
なんだかそんなの大したことない
とでも言うつもりなのか
歩いて行く
ルートは向こうの森の方まで回ってから
いわゆる反対側に回り込み入る
と言うものである
森の獣なら対抗できるので
なんとかなる
丘を利用しながらぐるっと一旦外側に向かう
歩きながらさっきの物を見ると
数が増えている!
それもうじゃうじゃと空をおおう
ほんとになんなんだろうか?
あんなものが生物であるはずがない
最近出てきた機械とか言うやつも
煙やら振動やらしてるから
違う物であろう
増えているのがなんとも不思議だ
あんなのアメーバの分裂より早い
きっとどこからか出しているのだろうが
それにしてもあの数………
何しているのかさっぱりわからない
「あれって細胞分裂に似てるのかもね
あの一つが細胞なのかも知れないわね」
意外にもそれだけ言って
そっぽを向いたのが一番びっくりした
お前いつもと反応が違い過ぎだろ?
しかしそれは後回しにして
とにかく目的地に着かないといけない
幸い何事もなく反対側に回れた
ここまでくればもう大丈夫だろう
地面の下になにかしらあって
それがこの辺り一体をぐらぐら揺すること
数知れず
活動が活発化している
その中心にお姫様をお連れしていいのか?
とも思ったが、
ここは辺境である
近くの町は危険な気がする
何が起こるかわからない
温厚な人ばかりいるとは限らない
やはり置いていくのはあり得ない
危険な行為であると思える
遺跡は制御さえすれば後は大丈夫だろう
と思っていた
そうあれを見るまでは………
「何か近づいて来ている!」
「ええ、そうね……」
ものすごい力の持ち主が接近している
吐き気がする
幸い敵意が此方に向いていないので
何とかなっている
お姫様は…えっって顔をしている
どうやらこの異常に感覚がマヒして
馬鹿になったようだ
耐性の無い者には仕方ないことであろう
おそらく今は何も感じまい
見た瞬間即倒するだろうが……
どうにもなるものでもないからな……
受け入れるしかない
「あれは……この世界にいたのか……
お話の中だけの生き物だとばかり
思っていたが……なんと……」
「あんなのどうにもならないじゃない!
何でこんなに違うのよ!
あ~も~腹立つ!!!」
あれをみてお姫様が固まっている
みてしまったか………まあ
一度この経験をすれば後はもう
如何なるものも驚くには値しなくなる
しかし最初にあんな巨大だと
かえっておかしくなるかもしれない
大丈夫だろうか?
サイコな魔女とかはもう居るので
そうゆうのは止めて欲しい
「さあいくぞ!お姫様を捕まえて
おいてくれ」
相変わらず馬は平気のへい
一体どんな事なら驚くのかこいつは
見た目は茶の少し太めのがっちり体型
当然優秀であるから連れてきた
でもこいつも別にどこかで修羅場を
くぐってとかはない
産まれてから王都に居たのだ
そんな事はない
ならこの落ち着きようはなんだ!
しゃべってくれればなぁ
「お前は平気なんだなぁ
たくましいねぇ」
馬はちらと見てその撫でた手を
撫で返した
ああまだ平気なんだなぁ
俺の方が先に震えてしまったのか