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劉皇国戦記  作者: リューク
第五部 遼帝国滅亡
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夢の続き

最終話です。これまで応援してくださった皆様に感謝の意を表したいと思います。

ありがとう。

 次の日、予想通り宋沢が出てきた。

 彼は少し前に出てきて、これでもかと言わんばかりの大声で話し始めた。

 

 「我は宋沢なり!古今無双にして一騎当千の強者と自負する者!我を討ち取り、名を挙げる者は誰ぞ居るか!?」

 

 この名乗りに対して関勝が応じた。

 

 「我は関勝!劉宗谷の義弟にして一騎当千と自負する者なり!宋沢!貴様を討って我が名を挙げん!」

 

 そう言うや宋沢と関勝は互いに打ち合った。

 食料不足から普段通りの力の出ない宋沢であったが、関勝の馬鹿力に正面から対抗し、打ち合っていた。

 

 「ぐぅ!力が、入らん。それになんて怪力だ」

 

 「こいつ化け物か!?俺の全力の一撃を受け止め続け、反撃してくるだと?」

 

 両者共に一歩も譲らず、一度退いた。

 そして、それを合図にしたかのように両軍の兵が二人に殺到した。

 両軍入り乱れての乱戦だが、宋沢の周りだけは異様な状態だった。

 兵が突撃するたびに彼の周りから血飛沫と、脳漿がまき散らされるのだ。

 流石に兵達も怯え、宋沢に近づこうとしなくなってきたので、俺から檄を飛ばす事にした。


 「宋沢を討ち取りし者には、金100枚を約束するぞ!」

 

 所謂、報奨金をかけたのだ。

 ちなみに金100枚あれば、2代続けて遊んでも金が余るくらいの量だ。

 流石にこれには兵達も目の色を変え、宋沢へと突っ込んで行った。

 

 だが、彼は一向に倒れる様子もなく、兵達が死んでいく様子しか見えなかった。

 そして、こちらの動きが鈍ったのを見た宋沢は、東に向けて突き進み始めたのだ。

 

 「宋沢殿に続け!我らも東に突撃するぞ!」

 

 馬鍾の大声が聞こえてきた。

 彼らは恐らく宋沢に最後まで着いて行く事を決心した決死隊だろう。

 

 「逃がすな!宋沢を追え!」

 

 こちらからは張児の大声が聞こえてきた。

 決死隊に対しても兵が殺到し、激しい追撃戦が起こった。

 

 それから暫くの間、宋沢と決死隊を我が軍の兵が追いかけ、討ち取り、追いかけを繰り返し、ついに海までたどり着いてしまった。

 

 海に辿り着いた宋沢は、ゆっくりと周囲を見回し、何事か声をかけていた。

 

 「馬鍾?呂方?丁超、関飛?皆、居なくなってしまったか・・・」

 

 宋沢が呟いた後、彼は俺達に向き直って話し始めた。

 

 「ここまで追ってくるとは流石だ!だが!俺の首をお主等にやるにはちともったいない!俺はここで海の藻屑となろう!劉宗谷!」

 

 「お主が民を蔑ろにすれば、追い詰められるのはお主だろう!そして!我が散り際をその目に良く焼き付けておけ!」

 

 「お主の諫言!しかとこの胸に刻み込んだ!」

 

 俺がそう言葉を返すと、宋沢は薄っすらと微笑み、自分の首を剣でかき切ると、そのまま海へと飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、宋沢の死体を埋葬する為に捜索したものの、波に攫われたのか、見つかる事は無かった。

 

 馬鍾以下、彼に付き従った決死隊は悉く討ち死にしたので、共同墓地として石碑を建てさせ、名を刻みつけた。

 

 この石碑が出来た時、ついに天下を統一したという実感が沸いてきた。

 

 「殿、これからは皇帝を名乗られますか?」

 

 そう聞いて来たのは尹魁や黄煉達文官だった。

 俺は彼らの質問に首を振って答え、これまで考えていた統治方法を伝えた。

 

 「まず、王族以外の貴族については全て平民と同じに扱う。そして各都市に一校幼年学校を建設し、子供の教育を行う。そして、その学校で優秀な成績を収めている者の中から希望者を首都である昌の官僚養成学校で更に鍛え、官僚による統治を目指すつもりだ。だが、まだまだ出来上がっていないものだから、暫くは俺を中心として政は行うぞ」

 

 「官僚が育ったあかつきには殿はどうなさるおつもりですか?」

 

 俺の考えを聞いた文官たちが心配そうに聞いて来た。

 

 「そうだな、俺は妻と二人でどこかに隠棲でもしようかな?お前ら、早く俺を楽にしてくれよ」

 

 俺がそう言って笑いかけると、彼らはやる気の入った眼で見つめ返してきた。


 








それから50年の月日が流れた。

大陸を統一した俺は、農業技術の改革と政治的な不平等の解消に努め、官僚を育成する為の教育制度の充実を図った。

 王族の扱いについては、議会王権制という制度を取り、有事の際には王族が率先して国民を率い、戦場に立つことを決めた。

 ただ、平時の際には王族は前に出ず、議会で承認された事を追認するという仕事だけとした。

 

 この制度が機能し始めたのが10年前で、我が国は現在繁栄を謳歌している所だ。

 

 ちなみに高峰だが、実は天下を統一してから知識だけ残って、声が聞こえなくなってしまった。

 恐らく大願成就で天へと昇って行ったのだろう。

 彼の思い描いた世界になったかは分からないが、俺があの世に行った後で彼の後世の歴史家としての批評を聞きたいものだ。

 

 そして俺は、宗康に王位を譲ってから別荘で隠棲している。

俺の別荘には、関勝夫妻と林冲夫妻が居る。

 この二家族とは息子たちで血縁関係を持っている。

 関勝の娘が俺の宗康と結婚して王妃に、林冲の3男に俺の4女が嫁いでいた。

 お互い隠居となってからは、昔の様に兄と弟に戻って酒を酌み交わし、美味い物を食べて過ごしていた。

 

 「なぁ、義兄。この国はずっと続くのかな?」

 

 「関勝、ずっと国が続くなら遼帝国や宋沢はなんだったんだ?」

 

 「なるほど、また馬鹿な質問をしてしまったな」

 

 「いいさ、それに俺はお前と出会ってなければここまでこれなかった。ありがとう」

 

 俺が急にお礼を言った事に関勝は慌てた。

 

 「な、そんな事を言わないでくれよ。俺だって義兄に会えなかったらいつまでたっても下男だったよ」

 

 俺達がそんな事を話していると、後ろから声が聞こえた。

 

 「そんな事をおっしゃられると、儂ら夫婦なんぞどこぞで野垂れ死にですぞ」

 

 声の主は林冲である。

 御年90と言う高齢にも関わらず、元気にあちこち旅をして回っている。

 

 「おぉ、林冲居たのか。確かにそうだな、誰が欠けてもこの国は出来上がらなかった。国境を守備し続けていた王信と張児、林冲と一緒に仕官してきた史明、文官では尹魁に黄煉と数え出したら切りがないな」

 

 「全ては天祐のお陰です。我らは出会うべくして出会ったのですからな」

 

 そう言うと、林冲は高らかに笑った。

 

 そう、全ては天祐であり、その天祐を使って行動した俺達の意思だ。

 一度しかない人生だ、悔いなく残りの人生も歩みたいものだ。

 

 「ところで義兄、これからの夢ってなんだ?」

 

 「ん?俺か?俺の夢はそうだな・・・玄孫をみる事かな?」

 

 そう言って笑いかけると、2人は驚いた表情をしていた。


評価、感想、ブックマークよろしくお願いします。

完結しました!感想や評価ください!

ご祝儀的な意味も含めて頂けると大変嬉しいですw


約3か月という長いのか短いのか良く分からない間ですが、完結までこれたのはひとえに読者の皆様のお陰と存じております。

拙作に対してブックマークをくださった方、評価を入れてくださった方、毎回読んでいただいた方、そのどなたが欠けても今日までは続かなかったと思います。


処女作で拙い部分もあったかと思いますが、最後まで本当にありがとうございます。


なお、次回作についてですが、構想、執筆は実は始めています。

現在同時に3本進めており、この中から1本まずお出しできる形にしてから発表したいと思います。

それまでは、「ゼロの魔術書」を更新頑張ってまいりたいと考えておりますので、御助力賜りますよう宜しくお願いいたします。


では、長々と失礼いたしました。また新しい作品でお会いするまで(・∀・)/SeeYouAgain

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