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劉皇国戦記  作者: リューク
第五部 遼帝国滅亡
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中央平原の戦い②

 中央原野での戦いは俺達の軍の一方的な戦いになりつつあった。

 敵は狼狽し、視野が狭くなり、何度も無謀な突撃を行ってきたが、その度に狼廉が横合いから突撃をし、弩兵と槍兵が敵を近づけない様に攻撃していた。

 お陰で会戦当初同数だった兵数は、会戦から一時間で敵は1万近く減らしていた。

 ただ、減ったのは前回の宋沢戦で深手を負った兵達で、傷の浅い者や新兵は未だに健在だった。

 

 「まだ壊走しないのか?」

 

 俺は苛立ちながら物見の兵に問いかけると、彼は目を凝らして敵軍の様子を報告してきた。

 

 「はっ!どうやら敵の指揮官らしき人物が兵達を必死に鼓舞している様でして大きな崩れはありません」

 

 流石は呂延の副官と言ったところだろう、ここまでして崩れない軍は滅多に見かけない。

 俺が攻めあぐねていると、後方を見ている兵が大声で報告してきた。

 

 「り、り、呂延だ!呂延がこちらに向かって駆けてきます!」

 

 「何!関勝と林冲はどうした!?」

 

 「関勝様と林冲様は・・・存命です!討ち取られておりません!ただ徒歩でこちらに向かっている様です!」

 

 報告が正しいとすれば恐らく呂延は2人の馬を狙ったのだろう。

 あの2人を相手に馬を狙って逃走とは、呂延は恐らく化け物の類だろう。

 

 「い、如何いたしますか?」

 

 「呂延はここで止まってもらう!絶対に死守しろ!」

 

 俺の命令を聞くや、後方から2千の兵が呂延目指して殺到した。

 そう、確かに殺到したのだが、なんと呂延はその2千の兵の中を平気で突っ込み突き進んでいくのだ。

 

 「な、なんだあの出鱈目な強さは!2千の兵だぞ!それを相手に駆け抜けると言うのか!」

 

 呂延は俺の見える範囲では傷を負った感じがせず、その速さは兵を物ともしていないのか、全く衰える様子を見せなかった。

 

 「敵の軍はどうなっている!?」

 

 「敵軍、未だ粘っております!」

 

 あ、あと少しで敵の士気を崩壊させる事ができたのに、あと少しで敵を撃破できたのに!

 

 「畜生!全軍に伝令!呂延を放置して関勝、林冲と合流する為後退する!」

 

 このまま関勝達が居ない状態であの化け物と戦ったら恐らく全滅する。

 そうなっては元も子もないので、まずは後退し出直す事にした。

 

 「報告します。敵軍、呂延と合流した後、退却していきます」

 

 「そうか、追撃は無いか・・・まだ警戒は解くな、相手が完全に撤退したらまた報告してくれ」

 

 「はっ!」

 

 これで一息つける。

 追い詰めていたのが一転して変わるか・・・。

 戦略が戦術に負けるなんてことは信じたくなかったが、奴は戦略級の化け物って事だな。

 

 それから暫く後退した後、関勝、林冲と合流する事ができた。


 「二人ともどうした?平伏して」

 

 二人は合流して俺の幕舎に着くや入り口付近で土下座をしてきた。

 

 「呂延を止められずおめおめと帰ってまいりました事、申し訳なく思っております」

 

 「この咎、何なりとお申し付けください」

 

 「別に良い、俺もあれを近くで見たがあれは化け物だ。それに勝ち負けは兵家の常と言う。今回の負けを次の勝ちに活かせ」

 

 俺がそう言うと、2人は平伏したまま、返事してきた。

 

 さて、明日からあれにどう対応しよう。

 本気で化け物退治をするつもりでかからないとこっちの首が危ない。

 

 そう思って俺は1人考えるのだった。



 

 次の日、敵軍は、今度は呂延が突出しない陣形を組んできた。

 当たり前と言えば当たり前なのだが、同じ轍は二度踏まないと言う事だろう。

 

 「どうしますか?呂延が出てこないのでは引き離しようがありませんが?」

 

 「致し方ない、呂延は関勝と林冲で同時に仕掛けて止めてくれ。あいつさえ止まっていれば軍の質、数、兵装ではこちらに分がある。どうにかやってみせるさ」


 「「御意」」

 

 指示を出し終わると、会戦が始まった。

 敵軍は方陣を取り、こちらは鶴翼の陣を敷いて相対した。

 ここからはちまちまと敵を削る作業になる。

 

 「さて、呂延がどこに出てくるかですな」

 

 そう林冲が呟くと、それを聞いた関勝が提案した。

 

 「両翼の中間地点に居てはどうでしょう?そうすれば中央を攻めてきても、両翼のどちらかに出ても駆けつける事ができます」

 

 「なるほど、確かにそれならどこに出てこられても対応できるな」

 

 「では私が右翼を林冲殿は左翼をお願いします」


 「相、分かった」

 

 それからしばらくの間戦線は膠着した。

 敵将である呂延がどこから出現するか分からない為、乱戦出来ない俺達に対して、粘る事でこちらの兵糧切れを狙う遼帝国軍の戦術によって決定打の無いまま進んでいた。

 

 開戦から数刻が経ち、昼を過ぎた頃に遼帝国軍に動きがあった。

 

 「帝国側から一騎猛然と中央に向かって突進してくる者が居ります!」

 

 「呂延か!二人に連絡を送れ!すぐに戻る様に伝えろ!」

 

 「はっ!」

 

 俺が命令するのと同時に物見の兵は手旗信号で関勝達に信号を送り始めた。

 信号を送ったのと同時に物見がまた叫んだ。

 

 「敵軍全軍が動き始めました!方陣を崩して中央に雪崩れ込んで来ます!」

 


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