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劉皇国戦記  作者: リューク
第五部 遼帝国滅亡
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誕生

帝国暦269年10月

 宋沢と呂延の戦いから5か月、大陸全土は束の間の平和を享受していた。

 かく言う俺もその平和を享受していた一人のはずなのだが、つい先ほど、状況が一変した。

 そう、子供の誕生である。

 

 今は夜中の12時なのだが、同じ部屋で寝ていた玉麗が産気づいたのに気づき、ドタバタと動いている侍女たちの足音で起きてしまったのだ。

 それからすぐに産婆がやって来ると、起きているのをこれ幸いと、追い出されてしまった。

 なんでも「一有力者と言えど、お産は女の仕事、取り上げるまで外でお待ちあれ」とのことだった。


 お陰で俺は秋深まり寒くなりつつある夜中に寝間着姿で廊下に放り出される羽目になった。

 

 「うぅ~寒い、誰か、誰か居らぬか?毛布を一枚持ってきてくれ」


 俺がそう声をかけると、傍仕えの兵が1人毛布を持ってきてくれた。

 これで、少しは暖かくなり、安心して子供が生まれるのを待つことができる。



 そう思えたのは、最初の30分程度だった。

 一向に聞こえない赤子の声に俺は部屋の前を右往左往しながら落ち着かない気持ちでいっぱいだった。

 

 「殿、お子が生まれるとお聞きしてまいったのですが、何をなされているので?」

 

 「ん?関勝か、いやさっきまで右往左往していたのだが、あまりにも落ち着かないので、神に祈ってみているのだ」

 

 俺はそう言いながら跪いて両手を頭より高い位置で合わせて祈っていた。

 そんな俺の様子を見て、律儀にも関勝まで隣で祈り始めたのだ。

 そんな事をしていると、また1人部屋の近くまでやって来た人物がいた。


 「殿、関勝殿何をされているのですか?」

 「おぉ、尹魁殿、殿のお子が無事産まれるのを天に祈願しておるのです。ささ、尹魁殿もどうぞ」

 

 そう言って関勝が隣で祈る事を勧めると、尹魁も断るわけにもいかなくなり、一緒に祈り始めるのだった。

 それから30分ほど3人で祈っていると、黄煉が息を切らせてやってきた。

 

 「殿、遅くなってしまい申し訳・・・これはいったい何をなさっているのですか?」

 

 「おぉ、黄煉殿、殿と関勝殿と一緒にお子の無事な誕生をお祈りしているのです。ささ、黄煉殿もご一緒に」

 

 最初は渋った黄煉も、流石に断り続ける訳にもいかず、最終的には尹魁の隣で祈り始めるのだった。

 そんな尹魁と黄煉のやり取りから10分後、林冲が駆けつけてきた。

 

 「殿、すみませぬ酒を抜くのに時間がかかってしまい遅れまし・・・た?何をなさっておるのです方々は」

 

 「おぉ、林冲殿、なぜか殿のお子が無事産まれる様にと祈る事になりまして、こうやって皆で祈っている次第でございます」

 

 「殿、子供とは祈っていても生まれる時は生まれるものです。あまりそのような事はなさらない方が・・・」

 

 「ん?そうか?ただ何もしてないと落ち着かなくてな。まぁ林冲がそう言うのならそうなんだろう。お祈りも十分届いただろう」

 

 そう言って俺が姿勢を戻すと、他の3人も一斉に姿勢を元に戻した。

 ちなみに、林冲は3男4女の子沢山である。

 浪人していた割には子供が沢山居すぎるので、採用して家族状況を聞いた時には笑いそうになったのを覚えている。

 そんな林冲が言うのだから恐らく大丈夫だろう。


 「林冲殿、ありがとうございました。何分某たちでは子供が居りませんので、説得の仕方がわからなかったのです」

 何か黄煉が林冲にこそこそ言っているが、気にしない様にしよう。


 そんな事を考えていると、部屋からけたたましい位の赤子の鳴き声が響いた。

 その声が聞こえるのとほぼ同時に部屋の扉が開き、侍女が出てきた。

 

 「殿!立派な男の子でございます!お世継ぎです!」

 

 その侍女の一言に俺は咄嗟に関勝に抱き着いて、大声で叫んでいた。

 

 「やったー!生まれたぞ!生まれたんだ!・・・はっ!玉麗は大丈夫か?」

 

 俺の問いに侍女は一瞬呆気にとられた表情をしていたがすぐに元の表情に戻って「はい、母子共に元気です」と言ってくれた。

 

 「そうか、それは良かった。入っても大丈夫か?」

 

 俺がそう言うと、侍女が扉の端に立ち、「どうぞ」とお辞儀をして通してくれた。


俺はそのまますぐに玉麗が寝ているベッドに直行すると、彼女がニッコリ微笑んで迎えてくれた。


「あなた、やりましたよ。お世継ぎです。私頑張りましたよ」


 「あぁ、頑張った。良くやってくれたよ。本当にうれしいよ」


 そう言って俺が泣き出すと、玉麗が力無く笑いながら、諭してきた。

 

 「あなた、次はこの子の名前をお決めください。私と貴方の子供の名前を」

 

 「あぁ、そうだな・・・劉宗(そう)(かん)と言うのはどうだろう?」

 

 「劉宗康ですね。良い名前だと思います。ねぇ宗康」


 そう言って彼女が微笑みかけると、宗康は泣き止んでジッと玉麗を眺めていた。

 

 「この子も気に入ったみたいですね。お父様みたいに立派な男になるのですよ。宗康」

 

 愛おしそうに抱きしめ、名前を呼ぶ玉麗を見ていると、早くこの天下を取り、治められる様にならなければならないと、俺は改めて誓うのだった。


評価、感想、ブックマークよろしくお願いします。

今後もご後援よろしくお願いします。


ちなみに作者は結婚すらしてないのでその辺は、想像で書いてますw

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