無駄骨
山西編も残すとこ後1話です。
交渉を終わらせた俺は、山東への帰路についていた。
今回の交渉でどうにか山西の民を味方に引き入れる事ができそうだ。
彼らを我が国と他の強国との緩衝地帯にして、今は出来る限りぶつからない様にしなければならない。
ただ、目下の悩みは山東の民だ。
少々強引な方法で今は抑えられているが、今回の我が軍の被害を見て反抗勢力がいつ動き出すかわからない状態になってしまったと考えて良い。
となると、後はどういう風にして反抗勢力を逮捕もしくは追い出すかだが、今の所良い案が浮かばず困り果てている。
「はぁ、どうしたものかな・・・」
「山東の民の件ですか?」
俺の隣に控えていた関勝が心配そうに聞いて来た。
「山東の民は俺に対してあまり良い感情を抱いていない。そして反抗勢力もでき始めていると報告もあった。ただ、できる事なら穏便に事を済ませたいのだが、その方法が思いつかないのだよ」
俺の愚痴に関勝は黙って聞くだけに徹していた。
こういう時に下手に俺に声をかけると邪魔になる事を彼はわかってくれているので助かる。
「今考えている方法が2つあるが、どちらもあまり実用的な方法じゃないし、統治者としてこれで良いのかと思ってしまう部分もあるんだよ」
「その方法とは?」
「うん、1つは敵に偽の情報を流して先制攻撃をさせる方法だ。こうすれば相手を逮捕乃至追放する事は容易にできる。だが偽情報で被害に遭う家があまりに不憫な事になってしまう」
「なるほど、もう1つの方法とは?」
「もう1つは気長に民受けの良い政策を行い続ける。という何の解決策にもならない方法だ。これだと被害は公的機関に集中するので民への被害は少なくなるが、長い間我々が統治しにくい状況になるだろう」
要するに放置すると言う非現実的な方法と言える。
しかし、現状では彼らの感情的な反感があるので、時間を置くという方法は効果的でもあるのだ。
「どちらにしても、山東に着いてから本格的に考えるしかないよ」
そう俺が肩をすくめながら言うと、関勝は複雑な表情をしながらも黙って頷いてくれた。
そんなこんなで、色々と山東の統治方法を考えながら軍を率いて帰ってくると、予想もしない光景が俺の目の前に広がっていた。
「え?これは一体どういう事だろう?関勝どうしてこうなったかわかるか?」
「残念ながら私にも皆目見当がつきません。何があったのでしょう?」
俺と関勝が呆気に取られている理由、それは城内の市民が総出で出迎え、歓迎しているのだ。
もちろん所々に不満のありそうな民の姿を見かけるが、明らかに出発前と状況が変わっているのである。
そんな民の様子に訝しみながらも笑顔で、手を振りながら強制凱旋パレードを行った俺たちが城へ到着したのは、夕方を過ぎた頃だった。昼過ぎに城門に到着したことを考えると、約4時間近く凱旋パレードで城内を練り歩いていた事になる。
流石にくたくたに疲れた俺と関勝は、その日は自室ですぐに休んで事情を聞くのを先延ばしにしたのだった。
翌朝、遠征と昨日の疲れが残っているものの、政務を取りやめる訳にもいかず、執務室に入ると、山東地方の統治者として任命した崔慶が出迎えてくれた。
「劉宗谷様、山西攻略おめでとうございます」
「あぁ、ありがとう。ところで、城内の民が出迎えてくれたのだが、あれはなんでだ?」
「あれは、劉宗谷様が山西を攻略されたからです。山東の民は昔から山西の民に侵略と略奪をされながら過ごしていました。近年では山東の国力が大きくなったので侵略は無くなりましたが、相変わらず略奪は続いていたのです。それを打ち破られたのです。民が歓迎したくなるのも当然というものですよ」
なるほど、侵略者として見ていた俺が今まで自分たちから略奪を繰り返していた山西を壊滅させて形的には従わせる事になった事で、反感が裏返って歓迎になったんだな。
「そうか、それなら良いのだが、相変わらず表情の暗い民も居たから気を付けるに越したことはないな。とりあえず、統治権はお前に託すから山東の開発を進めてくれ」
「はっ!身命を賭して必ずや成し遂げます」
「後、軍事権は史明に託してここに残すつもりだ。有事の際には史明とよく相談し、史明の判断に従う様にな」
「かしこまりました。ところで、山西の民が数名ついてきていると伺っていますが、あれは何でしょう?」
「あぁ、あれは山西の民の中でも農業を覚えたいと言っている者たちだ。まぁ所謂留学生と言う奴でな、こちらから農業技術者を派遣するから山西に近い土地を開拓できるように手配してやってくれ。利水などでもめない様に支流を作って彼らにも水がいきわたる様にする事と・・・」
それから俺は崔慶に山西の民の木こり化計画を説明し、農業従事者増やす計画をしている事を伝えた。
幸いな事にこの山東では、山西近くに廃れた農村がいくつか点在しており、それらを整理、再統合する事で広大な農地を確保する事ができた。
「ここから出る農作物には税をかけても宜しいのですか?」
「一応使用料として木材もしくは、収穫物の一部を税として納める事になっている。まぁ1割~2割くらいならとっても大丈夫なんじゃないか?流石に他の土地と同じ4割では山西がまた背く事になるからな」
暫定的な税率を決め、崔慶に収穫物と同じくらいの量の木材を算出させている間に俺は自軍の兵士を再編成して引き上げて行くのだった。
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