表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劉皇国戦記  作者: リューク
第四部 山西攻略戦
60/78

凄惨な結果

久しぶりの連日更新、すみません。

 「敵陣後方から火災と思われる煙を確認しました!」

 

 「敵陣に向けて突撃をかけろ!敵は浮足立つぞ!」


 伝令からの報告に俺は飛び上がって喜びたいのを必死に我慢して全軍に命令を下した。

 ようやく、関勝が後方に回り込むことができたのだ。

 これで勝てる!


 後方を奇襲される形になった敵は当たり前の様に浮足立った。

 それまで前ばかりを見ていれば良かったはずが、後方に敵が出現し挟撃されるのだ。

 これで浮足立たない兵が居るとすればそいつ等は機械仕掛けの人形に過ぎない。


 「今ここで敵を殲滅しろ!一人でも多く倒して抵抗できない様にするんだ!」


 「「おぉー!」」


 俺の命令を聞いた兵達の雄叫びと地鳴りのような足音が山に響いた。

 先程まで疲れて倒れそうになっていた兵もあと少しで敵を倒せるとわかると、ほんの少しだが動けるようになったようだ。


 「柵を壊せ!敵を1人でも多く殺ってやれ!」


 「攻めろ!攻めたてろ!」


 各部隊の隊長からも同じような檄が兵達に飛んでいた。

 敵は後方で起こった異変に木を取られている隙に柵の一部を完全に破壊され、乗り込んできた我が軍の兵と直に相対する事になった。


 「穴に向かって突っ込め!」


 「穴を広げるな!敵を抑え込め!あ、に、逃げるな馬鹿者!」


 敵は退路が危うい事と柵が壊された事で一気に士気が崩壊したのか、蜘蛛の子を散らす様に逃げ惑い始めた。

 それを敵の指揮官は必死になって纏めようとしているが、どうやっても崩壊を防げる状況ではない。


 「関勝これに在り!骨のある奴!名のある奴は俺の相手をしろ!」


 遠くから柵の外にある本陣の俺の所まで関勝の名乗りが聞こえて来た。

 これによって敵はより一層恐怖心を煽られたのか、戦線を維持しようとしていた指揮官らしき兵達も我先にと逃げ始めたのだ。


 「追え!追うんだ!敵を1人として逃がすな!」


 ここから先は敵にとっての地獄だった。

 敵が陣を構えた場所は、崖と谷に挟まれた場所だった。

 そこを前後に挟んで挟撃をすると、敵は逃げ場がなくなる。

 逃げ場のない兵はどうするかと言うと行動は、大きく分けて4つだった。

 1つ、必死になって最後まで戦う。

 2つ、逃げ場を探して右往左往して走り回る。

 3つ、降伏しようとして武器を投げ出し敵に投降しようとする。

 4つ、全てを諦め谷へと身を投げる。

 この4つだが、1つ目と3つ目の兵は殆どが死んでしまった。

 ある者は味方に潰され、ある者は死ぬまで戦って討ち死に、またある者は我が軍の兵士の怒りの矛先に貫かれた。


 結果、この隘路の戦いは恐らく遼帝国始まって以来の凄惨な虐殺現場と化してしまった。

 被害報告などから算出した暫定的な結果をまとめたが、正直言って報告書だけでも気分が悪くなり吐きそうになってしまったくらいだ。

 どの様な結果になったかと言うと、敵おおよそ2万のうち約1万6千名が死亡、2千名が捕虜となった。ただし、捕虜の中には虫の息の者も含まれるので、正確な数字を出せば死者は1万7千人程になる。

 対して我が軍の被害は、3万の兵で出発して突撃を繰り返していた時に死傷者が5千名ほど出ていた。

 最後の殲滅戦では、死者が5千名、負傷者4千名で先の被害と合わせると、死者・再起不能者7千名、負傷者7千名、合計1万4千名という結果になった。


 数字だけ見比べると圧勝と言って良いが、この被害はかなりの痛手になる。

 恐らく山東の統治に支障をきたすレベルと考えて良い。

 本当ならこちらは威圧して降伏させる程度が今後の統治を考えると丁度良かったのだが、敵の反撃も激しく、すごすごと帰るわけにもいかなかったので、こんな結果になってしまったのだ。


 「はぁ、勝つには勝ったが、これは手痛いな。尹魁と黄煉の顔が青くなるのが目に浮かぶよ」


 「確かに今回の戦ではかなりの兵が死傷しました。今後はどう進めますか?山西はこれで恐らく十年ほどは大人しくしていると思いますが」


 史明が言う通り山西の民は多く見積もっても3~4万人だ。

 そのうちの約2万近い人間が死んだのだ。

 今後我々に手出しできる状況を作ろうと思えば十年は軽くかかる。

 だが、このままにしておく訳にはいかないのだ。

 これでは怨嗟を撒いただけで、後々の統治の邪魔にしかならない。

 どうにかして彼らを懐柔して我々との敵対ではなく友好を結んでもらえる様にしないといけない。


 「確かに史明の言う通りだが、俺は山西の民長に会ってくるつもりだ。彼らに我々への怨嗟を語り継がないでもらう為にもしなければならないことだ」

 

 「ですが、負傷兵や捕虜を抱えたままでは難しいと思いますが・・・」


 「確かにその通りだ。なので、史明にはまず負傷兵を連れて下山してもらう。村長には俺と関勝の2人で会ってくる。ついでに捕虜返還の交渉も済ませてくるよ」


 「なるほど・・・確かにその方が良いかもしれませんね。では私は2千の兵と負傷兵7千を連れて下山します」


 「うむ、よろしく頼んだ」


 こうして、今後の方針が決定し、俺と関勝は2人で山西の村長に会いに行くのだった。


評価、感想、ブックマークよろしくお願いします。

今後もご後援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ