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劉皇国戦記  作者: リューク
第四部 山西攻略戦
52/78

敵の出方

 

 宋沢が北をほぼ平定したという報と呂延が宋沢の領土に向かって進撃を始めたという報は、山中を行軍中の俺の元にほぼ同時に届いた。


 その日の行程を終え、幕舎で届いた報せについて全員で協議していた。


 「これで山東の守りも多少手薄になるでしょうが、なぜ今呂延は東に向かったのでしょうか?」

 

 「確かに、東側は今北に目を向けていて積極的に遼帝国へ進軍していない。対して我らは遼帝国の西部を目指して進軍を開始しており、逼迫しているのはこちらと思うのだが・・・もしや我らは軽んじられているのだろうか?」

 

 「確かに史明が言う通り俺たちは軽んじられているのかもしれないな・・・。ただ、もしかしたら相手は俺たちを山東の戦力だけで防げると判断して呂延を東に投入したのかもしれない」

 

 「防げる、ですか・・・。敵は城を盾に戦う事を想定していると考えても兵は集めてせいぜい1万~2万ですし、防ぎきれるとは思えませんが?」

 

 「まぁ山東の各城に分散配置していれば難なく各個撃破できるだろうが、一番大きい山東城に戦力を集中させられると正直こちらとしては辛い。それにあまりやらないだろうが、相手が焦土戦術を使ってきた場合下手をすると我々が危なくなってしまう」


 「流石に自国で焦土戦術はとらないのではないでしょうか?後々の復興がかなり大変ですし、民草の反感をかなりかってしまいます」

 史明は困惑した表情で焦土戦術はとらないのではと言っているが、正直俺は取ってくるのではないかと考えている。

 敵の思考としては、単純にすると、「奪われたくないから抵抗する」→「抵抗しても奪われる可能性が高い」→「ならいっそのこと全て壊してしまえ」という極論に至る可能性が無い訳では無い。特に貴族なんて利己主義的で民草の気持ちを考えない者はそう言う発想に至っても不思議ではない。

 

 「まぁとにかくだ、可能性の一つとして考えておいた方が良い。特にこの山東地方はかなり新しい貴族領が密集している土地だ。極論に至らない様に事前に使者などを送って、本領安堵の通達を出すのが良いだろう」

 俺がそう言うと、今後の基本方針も固まって来たので解散し、その日は休む事にした。


 それから2日間は、特に問題らしい問題も無く進軍していたのだが、敵の動きを探るためと使者として各領地に派遣するつもりで出していた偵察兵が想定外の報告を持って俺の所に戻って来た。

 

 「報告します!敵約2万の大軍を持って出口付近を半円形の陣で固めています!次いで関勝様より言伝もお預かりしています。『我接敵セリ、突撃ノ許可ヲ』との事です」

 

 「報告ご苦労!関勝には絶対に突撃するなと伝えろ!後見えた敵の陣形をより詳しく報告する様にとも伝えろ!」

 

 その後、関勝からより詳細な報告が届いたので最前線の関勝を除いて、他の将を集めて軍議を開いた。

 

 「これが前線の関勝からもたらされた敵の陣形図だ。前方を盾兵が固め、その後方に弓兵、弩兵が控えている。また、盾兵や弓兵等の間から槍が見えているとの報告もある。そして我らの道がこれだ。両脇は傾斜のきつい崖になっていて上る事は不可能と報告が来ている」

 俺がそこまで話すと、全員が一様に難しい顔をしてうなっていた。

 そんな中、史明が地図を見ながら何か思いついたのか、意見を言ってきた。


 「殿、この断崖を後方から迂回して登っては如何でしょうか?幸い我らは敵から見えない位置に居り、どう行動するかわかっていません。そして敵の布陣を見るに、この細い道から出てくる我らを各個撃破する事か我らをここに押し留まらせる事を目的とした陣立てなので、左右への備えがかなり薄いようです。ここを突きましょう」

 

 「確かに、断崖絶壁とは言えそれがいつまでも続いているわけではないだろうからな・・・史明!その任お主に任せる。必要な兵力と日数を言え」

 

 「はっ!では兵数は左右で5千ずつ、日数は約5日頂きたいと思います。こちらが5日目に攻撃を開始できなければ撤退も視野に入れておいてください」

 

 「うむ、頼んだぞ。では、史明の他に行く者は居るか?」

 俺がそう言うと、王洪から派遣されてきた将の一人が手を挙げて来た。

 

 「では、右翼を史明、左翼を貴様が率いて5日後の昼に攻撃を開始せよ。途中で銅鑼と貝の値が聞こえたら即撤退を始めよ。では各人とも準備ができ次第出発だ」

 

 こうして右翼、左翼共に準備ができたのを見届けてから我々も関勝の元へと駆けつけた。

 作戦の概要を伝えると、関勝も納得し、5日間適当に戦って相手の気をこちらに集中させるようにすると言ってきた。

 

 俺ももちろん5日間の間に敵の情報をできる限り調べさせると、現在の山東城の城主は、呂延派の人間で、名前を崔慶と言う男だとわかった。

 ただ、残念ながらわかったのはここまでで、崔慶がどんな人物で、何を得意としているか等はわからなかった。しかし、年齢が30そこそこで城主、しかも世襲ではない城主という事なので、それなりに期待されている実力者だろうと考えて行動する様にした。


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